腎臓内科|むくみ・電解質異常・高血圧・慢性腎臓病(CKD)の診療
腎臓は、尿をつくって老廃物を排泄するだけの臓器ではありません。体内の水分量、ナトリウム・カリウムなどの電解質、血液の酸性・アルカリ性のバランス、血圧、造血、骨・ミネラル代謝などを調節し、全身のバランスを保っています。
老廃物の排泄
- 尿として体外へ排出
水分・電解質の調節
- ナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなど
血圧の調節
- 塩分・水分バランスとホルモン(RAAS)
酸塩基平衡の維持
- 血液のpHを一定に保つ
造血
- エリスロポエチンを分泌
骨・ミネラル代謝
- ビタミンDの活性化
そのため腎臓内科では、腎臓そのものの病気だけでなく、「腎臓から全身を診る」「全身から腎臓を診る」という視点が大切になります。腎臓病は初期には症状が乏しいため、健診で尿蛋白・血尿・腎機能異常を指摘された場合は、症状がなくても一度詳しく調べることをおすすめします。当院では一般内科の視点も含めて総合的に診療しています。
このような症状・検査異常はご相談ください
- 健診で尿蛋白・尿潜血(血尿)を指摘された
- クレアチニンが高い、eGFRが低いと言われた/腎機能が徐々に悪化している
- むくみ(浮腫)がある
- 血圧が高い、薬を飲んでも下がりにくい/若い頃から血圧が高い
- 血液検査でカリウム・ナトリウムなどの電解質異常、重炭酸(HCO₃⁻)の異常を指摘された
- 高血圧と腎機能低下を同時に指摘された
- 糖尿病や高血圧があり、腎臓への影響が心配
- 腎臓に負担をかける薬を使用している
- CKD(慢性腎臓病)と言われた
腎臓内科で診療する主な病態
2. 電解質異常(ナトリウム)低Na・高Na血症
3. 高カリウム・低カリウム血症不整脈のリスクに注意
4. 酸塩基平衡異常腎臓・肺・代謝を一体で考える
5. 高血圧二次性高血圧・CKD合併高血圧
6. 慢性腎臓病(CKD)進行予防と心血管リスク管理
7. 尿蛋白・血尿健診異常の精密評価
1. 浮腫(むくみ)
浮腫は、体の組織に余分な水分がたまることで生じます。「むくみ=腎臓が悪い」と考えられがちですが、原因は腎臓だけではありません。
腎臓が原因
- ネフローゼ症候群(大量の蛋白尿でアルブミンが低下)
- 急性・慢性糸球体腎炎
- CKDの進行、急性腎障害、体液過剰
心臓が原因
- 心不全・右心不全
- 肺高血圧症など
- 静脈圧上昇で下肢のむくみ・体重増加
肝臓が原因
- 肝硬変
- 低アルブミン血症
その他
- 深部静脈血栓症、下肢静脈不全、リンパ浮腫
- 甲状腺機能低下症、薬剤性
- 長時間の立位・座位、妊娠など
診断:発症時期、片足か両足か、朝夕での変化、体重増加、息切れ、尿量の減少などを確認し、尿検査・尿蛋白・血液検査(Cr、eGFR、電解質、アルブミン)・BNP/NT-proBNP・肝機能・甲状腺機能・腹部/心エコーなどを必要に応じて組み合わせて原因を絞り込みます。
治療は原因によって大きく異なります。腎臓や心不全による体液過剰では食塩の調整や利尿薬を用いますが、静脈不全や薬剤性のむくみでは利尿薬が適切とは限りません。むくみそのものではなく、原因を特定して治療することが重要です。詳しくはむくみ(浮腫)についてのページもご覧ください。
2. 電解質異常(ナトリウム)
腎臓はナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなどを調節しており、腎機能が低下すると電解質異常が起こりやすくなります。一方で、電解質異常は薬剤・ホルモン異常・脱水・消化管からの喪失などでも起こります。
| 主な原因 | |
|---|---|
| 低ナトリウム血症 | 水分の過剰摂取・貯留、心不全、肝硬変、CKD、SIADH、副腎不全、甲状腺機能低下症、利尿薬、嘔吐・下痢など |
| 高ナトリウム血症 | 脱水、発熱、下痢、過剰な尿量、尿崩症、水分摂取不足など(多くは体内の水分不足) |
低ナトリウム血症では血清浸透圧と体液量を評価しながら原因を絞り込みます。「塩分を補えばよい」というものではなく、急激に発症した重症例では神経症状が出ることがあり慎重な補正が必要です。高ナトリウム血症も、慢性の場合に急速に補正すると脳浮腫を起こす可能性があるため、原因と発症時期を確認しながら補正します。
3. 高カリウム血症・低カリウム血症
カリウムは心筋・神経・筋肉の働きに重要で、特に高カリウム血症は重症になると不整脈や心停止につながるため注意が必要です。
| 主な原因 | |
|---|---|
| 高カリウム血症 | CKD・腎不全、ACE阻害薬・ARB、MRA、NSAIDs、カリウム製剤、代謝性アシドーシス、低アルドステロン症、細胞障害、採血時の溶血(偽性) |
| 低カリウム血症 | 利尿薬、嘔吐・下痢、摂取不足、原発性アルドステロン症、低マグネシウム血症、腎性カリウム喪失、インスリン作用、β刺激薬 |
高カリウム血症ではまず採血時の溶血による偽性でないかを確認し、実際に高値であれば腎機能・薬剤・酸塩基平衡・糖尿病などを評価します。重症の場合は心電図を確認しながら緊急治療が必要です。低カリウム血症では、血圧・酸塩基平衡・尿中カリウムを組み合わせて原因を調べます。
4. 酸塩基平衡異常
腎臓は酸を尿へ排泄し、重炭酸を再吸収して血液のpHを一定に保っています。腎機能が低下すると代謝性アシドーシスが生じることがあります。酸塩基平衡は腎臓だけでなく、肺・消化管・内分泌代謝疾患も関係します。
| 種類 | 主な原因 |
|---|---|
| 代謝性アシドーシス | CKD、腎尿細管性アシドーシス、乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、下痢、薬剤、中毒 |
| 代謝性アルカローシス | 嘔吐、利尿薬、体液量減少、原発性アルドステロン症、ミネラルコルチコイド過剰 |
| 呼吸性アシドーシス/アルカローシス | COPD、睡眠時無呼吸、肺疾患、過換気、中枢神経疾患など(腎臓以外の病気) |
血液ガスや血清重炭酸、アニオンギャップを評価して原因を整理します。腎臓だけを見るのではなく、腎臓・肺・代謝を一体として考えることが重要です。CKDに伴う代謝性アシドーシスでは、KDIGO 2024でも、臨床的に重要なアシドーシスを予防する目的で食事療法やアルカリ化療法を考慮することが示されています。
5. 高血圧
高血圧が長く続くと腎臓の血管が傷つき腎機能が低下する一方、腎臓病がナトリウム・水分の排泄低下やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の活性化を通じて高血圧を起こすこともあります。
二次性高血圧を考える場合
高血圧の多くは本態性ですが、次のような場合には二次性高血圧を考えます。
- 若年で発症した/急激に血圧が上昇した/これまで正常だった血圧が急に高くなった
- 3剤以上の降圧薬でも血圧が高い(治療抵抗性)
- 低カリウム血症を伴う/腎機能が急速に悪化した
- 腎動脈狭窄が疑われる
- 発作性の動悸・発汗・頭痛を伴う
- 睡眠時無呼吸がある
主な原因は、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群、甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群、薬剤性高血圧などです。診察室血圧だけでなく家庭血圧を確認し、必要に応じて血液・尿検査、腎機能、電解質、アルドステロン・レニン、腎/副腎の画像検査、腎動脈評価、睡眠時無呼吸の評価などを組み合わせます。
CKDを合併した高血圧の治療
目的は血圧の数値を下げること自体ではなく、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎機能低下などの将来のリスクを下げることです。生活習慣として減塩・適正体重・適度な運動・節酒・禁煙・睡眠の改善を行い、薬物療法ではACE阻害薬・ARB・Ca拮抗薬・利尿薬・β遮断薬・MRAを病態に応じて選びます。
- CKDでアルブミン尿・蛋白尿がある場合、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)が腎保護の観点から重要です
- 一定の条件を満たすCKD患者では、KDIGO 2024でSGLT2阻害薬が推奨されています(血糖を下げる作用だけでは説明できない腎・心血管保護効果)
血圧の目標値:国際的には、KDIGO 2021の血圧ガイドラインが、標準化された診察室血圧で収縮期血圧120mmHg未満を「忍容できる場合」に提案しています。一方、日本腎臓学会は2026年に「CKD患者の血圧管理に関するステートメント」を公表し、原則として診察室血圧130/80mmHg未満・家庭血圧125/75mmHg未満としつつ、年齢・腎機能・健康状態・起立性症状などを考慮した個別化を重視しています。血圧は数字だけを下げればよいものではなく、測定方法と患者さんの状態を踏まえて目標を設定します。
6. 慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)は、腎機能の低下または腎障害を示す所見が3か月以上続く状態です。進行すると透析などの腎代替療法が必要になる可能性があるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクも高めます。
主な原因:糖尿病性腎臓病、高血圧性腎障害、IgA腎症などの糸球体腎炎、多発性嚢胞腎、尿路閉塞、薬剤性腎障害など。
CKDでは、eGFRだけでなく尿アルブミン・尿蛋白を組み合わせて、腎機能と将来のリスクを評価します。治療は原疾患の治療に加えて、次を総合的に管理します。
- 血圧管理・血糖管理・蛋白尿/アルブミン尿の管理
- SGLT2阻害薬などによる腎保護
- 食塩摂取の調整・適正体重の維持・禁煙・脂質管理
- 腎性貧血・電解質異常・代謝性アシドーシス・CKD-MBD(骨・ミネラル代謝異常)
KDIGO 2024では、腎機能だけでなく尿アルブミン、心血管リスク、薬剤、生活習慣、CKD合併症までを含めた包括的な管理が推奨されています。詳しくは慢性腎臓病のページもご覧ください。
7. 尿蛋白・血尿
健診などで尿蛋白や尿潜血を指摘されることは、腎臓内科で評価する重要なきっかけです。健診では簡易的な尿検査のみが行われるため、まず尿沈渣や尿蛋白定量などの詳しい尿検査と、腹部エコーによる腎臓・膀胱の観察といった負担の少ない検査から行い、必要に応じて血液検査を追加します。
| 主な原因 | |
|---|---|
| 尿蛋白 | 糸球体腎炎、糖尿病性腎臓病、高血圧性腎障害、ネフローゼ症候群、尿路感染症、多発性骨髄腫(ベンス・ジョーンズ蛋白)など |
| 血尿 | 糸球体腎炎、尿路結石、尿路感染症、膀胱がん、腎がん、前立腺疾患など(腎臓以外の原因も多い) |
尿蛋白は尿蛋白を指摘されたら、血尿は尿潜血を指摘されたら、腎機能の低下はeGFRが低いと言われたらのページも参考にしてください。一度悪くなった腎臓の働きを元に戻すことは難しいため、尿の異常は腎臓からのサインと考えて早めにご相談ください。
腎臓内科で大切にしていること
腎臓の病気は単独で存在するとは限りません。高血圧・糖尿病・心不全・肝疾患・内分泌疾患・感染症・薬剤など、全身のさまざまな病態が腎臓に影響します。反対に、腎機能が低下すると血圧・心臓・血管・骨ミネラル代謝・造血にも影響が及びます。
そのため腎臓内科では、「腎臓から全身を診る」と同時に「全身から腎臓を診る」ことが重要です。一つの検査値だけを見るのではなく、その背景にある病態を考え、必要な検査を選び、治療によって将来の腎臓と全身の健康を守ります。当院では内科医としての専門性を生かしエビデンスを大切にしながら、個人への適応や継続性の視点も大切にして診療しています。
一般内科の診療内容・院内でできる検査・アクセスは大手町の内科(一般内科)のページをご覧ください。
参考文献
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO). KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International. 2024.(PMID: 38490803)
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO). KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Blood Pressure in Chronic Kidney Disease. Kidney International. 2021.(PMID: 33637192)
- 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
- 日本腎臓学会. 慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント. 2026年6月.
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO). KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney International Supplements. 2012.