男性更年期障害は「珍しい病気」ではありません|認知は広がる一方で、受診率はまだ低いのが現状です
「最近、男性更年期という言葉をよく聞く」
ここ数年、
テレビや新聞、インターネットなどで
「男性更年期障害(LOH症候群)」
という言葉を目にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に2025年には、政府の「骨太の方針」においても男性更年期障害が初めて取り上げられ、職場における健康課題としても注目されるようになりました。
しかしその一方で、
症状があっても受診していない方はまだ非常に多いことも分かっています。
今回は、近年のデータをもとに、男性更年期障害の現状についてご紹介します。
男性更年期障害(LOH症候群)とは?
男性更年期障害(LOH症候群)は、
加齢やストレス、肥満、生活習慣などを背景にテストステロン(男性ホルモン)が低下し、さまざまな症状が現れる病気です。
代表的な症状として、
-
疲れやすい
-
朝からだるい
-
やる気が出ない
-
集中力が続かない
-
イライラする
-
気分が落ち込む
-
性欲低下
-
ED(勃起障害)
-
筋力低下
-
内臓脂肪が増えやすい
などがあります。
これらは加齢だけでなく、
うつ病や適応障害、睡眠障害などと症状が似ているため、見逃されやすい病気でもあります。
▶ 男性更年期障害(LOH症候群)の症状・検査・治療の流れについて詳しく見る
実は決して珍しい病気ではありません
「男性更年期障害は珍しい病気」
と思われることがありますが、
実際にはそうではありません。
日本メンズヘルス医学会では、
就労世代の男性のおよそ10%が男性更年期障害に悩んでいる可能性を紹介しています。
海外の疫学研究でも、
症状を伴うテストステロン低下は
-
50歳未満:約4%
-
50歳以上:約8%
と報告されています。
さらに、
テストステロン自体の低下は加齢とともに増加し、
60代では約20%、
70代では約30%、
80代では約50%で低値が認められるという報告もあります。
つまり、
テストステロンの低下そのものは決して珍しい現象ではありません。
潜在患者は数百万人とも推定
日本国内では正確な患者数は把握されていません。
しかし、
複数の専門施設やメンズヘルス関連団体では、
潜在的な患者数は約600万人とも推定されています。
一方で、
実際に診断・治療を受けている方はその一部にとどまると考えられています。
認知は広がってきたものの…
2024年に実施された全国調査では、
「男性更年期障害」という言葉自体は半数以上が知っている一方で、
LOH症候群という正式名称の認知率は1割未満でした。
つまり、
「名前は聞いたことがある」
という方は増えていますが、
症状や治療について正しく理解されているとはまだ言えない状況です。
「年齢のせい」で受診しない方が多い
男性更年期障害は、
症状がゆっくり進行します。
そのため、
-
年齢だから仕方ない
-
仕事が忙しいから疲れている
-
ストレスのせいだろう
-
気合が足りない
と考えてしまい、
医療機関を受診しないケースが少なくありません。
実際のアンケートでも、
症状を自覚していても、
すぐに受診する方はごく少数という結果が報告されています。
社会的な関心も高まっています
近年、
男性更年期障害は個人だけの問題ではなく、
社会全体の健康課題としても注目されています。
経済産業省の試算では、
男性更年期症状による
-
生産性低下
-
欠勤
-
離職
などを合わせた経済損失は、
年間約1.2兆円に上るとされています。
こうした背景から、
2025年には政府の「骨太の方針」に男性更年期障害が盛り込まれました。
男性更年期障害は治療できる病気です
大切なのは、
「年齢だから仕方ない」と決めつけないことです。
症状の原因がテストステロン低下であれば、
-
生活習慣の改善
-
睡眠の見直し
-
減量
-
運動習慣
-
必要に応じたテストステロン補充療法(TRT)
などによって改善が期待できます。
もちろん、
すべての不調が男性更年期障害というわけではありません。
だからこそ、
一度ホルモン値を確認し、
症状と合わせて評価することが大切です。
こんな症状があれば、一度ご相談ください
以下のような症状が続いている場合は、
男性更年期障害が隠れている可能性があります。
-
最近疲れが取れない
-
朝からやる気が出ない
-
筋力が落ちた
-
集中できない
-
気分が落ち込む
-
性欲が低下した
-
EDが気になる
-
内臓脂肪が増えてきた
-
睡眠の質が悪い
こうした症状は、
年齢だけでは説明できないことも少なくありません。
「調べて異常がなければ安心」という考え方も大切です
血液検査でテストステロンを測定した結果、
正常範囲であれば、
それも一つの安心材料になります。
逆に、
テストステロン低下が見つかれば、
適切な治療につながる可能性があります。
つまり、
検査は「病気を見つけるため」だけではなく、「原因を明らかにするため」の第一歩です。
まとめ
男性更年期障害(LOH症候群)は、
決して珍しい病気ではありません。
潜在患者は数百万人とも推定され、
就労世代でも約10%が症状に悩んでいる可能性があります。
一方で、
「年齢のせい」
「疲れているだけ」
と思い込み、
受診につながっていない方が非常に多いのが現状です。
近年は社会的な認知も少しずつ広がり、
男性更年期障害は「我慢するもの」ではなく、
診断・治療できる病気として考えられるようになってきました。
疲れや気分の落ち込み、筋力低下、性欲低下など、
気になる症状が続いている方は、
一度テストステロンを含めた検査を受けてみることをおすすめします。
参考文献
-
日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会. 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き(最新版).
-
日本Men’s Health医学会. LOH症候群とは.
-
健康長寿ネット. 男性の性腺機能低下症(LOH症候群).
-
クロス・マーケティング. 身体の悩みに関する調査(2024年)男性編.
-
Bhasin S, Brito JP, Cunningham GR, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018.
-
Mulhall JP, Trost LW, Brannigan RE, et al. Evaluation and Management of Testosterone Deficiency: AUA Guideline. J Urol. 2018.