要点
- TRT(テストステロン補充療法)は、低下したテストステロンを注射などで補う治療です。当院は保険診療(LOH症候群と診断された場合)と、自費診療(保険適用基準を満たさない場合や競技パフォーマンス向上目的など)の両方に対応しています。
- 自費診療では保険診療の適用範囲とは異なる治療設計が可能ですが、投与量・投与間隔は安全性や血液検査の結果を確認しながら医師が判断します。全額自己負担となり、副作用のモニタリングがより重要になります。
- 当院は内科医が全身状態・血液検査を含めて評価する診療方針を取っています。
- 詳しい効果・注意点・費用は本文で解説しています。
本ページは、医療機関で行う自費のテストステロン補充療法(TRT)についてのご案内です。医師の診察・血液検査に基づく治療であり、自己判断で行うアナボリックステロイド(AAS)の使用とは位置づけが異なります。AASの副作用対策や薬剤の使い分けについてはステロイドとテストステロンの違いのページもあわせてご覧ください。
TRT(テストステロン補充療法)は、低下したテストステロンを注射で補う治療です。当院では、保険診療(LOH症候群と診断された場合)と、自費診療(保険適用基準を満たさない場合や、競技パフォーマンス向上目的など)の両方に対応しています。
治療の内容
通常は月2回程度の注射を行い、症状や血液検査の結果に応じて投与間隔を調整しながら経過をみていきます。男性ホルモンの補充方法には、注射のほかに塗り薬・飲み薬もあります。
注射(当院の基本)
- 血中濃度を確実に上げられる
- 投与量・間隔を調整しやすい
- 月2回程度の通院が必要
塗り薬(外用薬)
- 含有量が少なく効果は限定的
- 塗布部位から他者へ移行する可能性
飲み薬
- 肝障害のリスクがある
- 長期間の使用には適さない
これらの理由から、当院ではより確実に補充できる注射による治療を基本としています。
保険診療と自費診療の違い
| 保険診療 | 自費診療 | |
|---|---|---|
| 対象 | 医学的に治療が必要と判断された方(LOH症候群) | 保険適用基準を満たさない方、競技目的など保険適用外の目的の方 |
| 投与量・頻度 | 保険上の基準の範囲内 | 制限なし(医師の判断で調整) |
費用の目安(保険診療・自費診療)
必要な方には保険診療もご案内します。まず保険診療で調べ、より幅広く一度に調べたい場合に自費で項目を追加することもできます。
| 内容 | 目安 |
|---|---|
| 【保険】初診・血液検査(3割負担) | 約5,000円 |
| 【保険】テストステロン注射(3割負担) | 1回 約2,000円 |
| 【保険】定期採血(多血症・E2・肝機能等、3割負担) | 4,000円前後 |
| 【自費】テストステロン注射 | 250mgにつき 1回 6,000円 |
| 【自費】hCG注射 | 5,000IUにつき 8,000円 |
| 【自費】詳細ホルモン検査(SHBG・LH・FSH・E2・PRL等の追加) | 項目数により変動(診察時にご説明) |
投与量・頻度・追加検査によって費用は変動します。保険適用の条件は男性更年期障害は保険適用になる?をご覧ください。
期待できる変化
効果のあらわれ方には個人差がありますが、診療の中で、医師として次のような変化を経験することがあります。
- 活力が出て、日中のエネルギッシュさにつながる
- 気持ちが前向きになる
- 筋力の向上や体脂肪の減少
- 男性機能の変化
精巣機能の低下を防ぐため、必要に応じて精巣刺激ホルモン(hCGなど)を併用するなど、お一人おひとりの状態に合わせた治療計画をご提案しています。詳しくはTRT後のPCTについてをご覧ください。
あわせて行うことがある治療
症状や検査結果、ご希望に応じて次のような治療を組み合わせることがあります。
- 保険診療による漢方薬の処方
- 保険診療による前立腺肥大症の治療
- 精巣を刺激して男性ホルモンを作らせるhCG注射・クロミフェン(自費診療)
- 自費診療によるED治療・AGA治療(テストステロンが低い方の男性更年期障害へのホルモン補充療法自体は保険診療で行えます)
よくある心配・誤解
「テストステロン注射をすると禿げてしまうのでは」というご相談をよくいただきます。実際には、テストステロンが足りない状況・多すぎる状況のいずれでもDHT作用によるAGAが進むことがあり、適切な値に保つことが重要です。ホルモンバランスの変化により、まれにアロマ化によるむくみ・女性化乳房や、DHT作用による脱毛・ニキビがみられることがありますが、男性更年期障害の治療で用いる量(125〜250mg/2週間程度)では頻度は高くありません。
競技目的などで医学的適応を超える高用量(500〜1,000mg/週)のテストステロンを使用することは、一般的なTRTとは異なるリスクを伴い、女性化乳房や脱毛などの副作用が生じやすくなります。アロマターゼ阻害薬や5α還元酵素阻害薬などを併用することでリスクを軽減できる場合がありますが、これらの薬剤自体にも副作用があり、リスクを完全になくせるわけではないため、定期的な血液検査や診察で経過を確認することが重要です。競技のためにテストステロンを用いる場合は保険診療ではなく自費診療となります。
ずっと続ける必要がありますか?
症状や血液検査の結果を確認しながら、治療を継続するかどうかを判断します。精巣刺激ホルモン(hCGなど)で自己分泌能を高める治療を組み合わせることもあり、症状が改善した場合には治療内容を見直すこともあります。治療開始前には、期待できる効果だけでなく、起こりうる副作用や、治療中に定期的な血液検査が必要になることについてもご説明し、ご理解いただいたうえで治療を開始しています。
なぜ内科医によるテストステロン診療なのか
男性ホルモン補充療法は、単にテストステロンを補充するだけではありません。安全に継続するためには、次のような点を総合的に評価することが重要です。
- 副作用の評価(多血症・肝機能・むくみ・にきび・脱毛・気分の変化など)
- 血液検査の解釈(テストステロン・E2・PSA・ヘマトクリット・脂質・血糖など)
- 赤血球増加(多血症)・肝機能・PSA(前立腺)のモニタリング
- 睡眠時無呼吸症候群・高血圧・脂質異常症・糖尿病など、テストステロン低下の背景にある病気の管理
当院では内科医として、テストステロンの数値だけでなく全身の状態を確認しながら、一人ひとりに適した治療を行います。どの診療科・医療機関でTRTを受けるか迷っている方は、テストステロン治療(TRT)クリニックの選び方もご覧ください。
当院と一般的な自費TRTクリニックの違い
他院を否定するものではなく、当院で診療する際の特徴を整理したものです。実際の対応は医療機関により異なります。
| 比較項目 | リーレクリニック | 一般的な自由診療クリニック |
|---|---|---|
| 保険診療 | ○ 条件を満たせば対応 | 自費のみの場合が多い |
| 自費TRT | ○ | ○ |
| PCT(精巣機能の回復) | ○ | 対応していない施設もある |
| 一般内科診療 | ○(高血圧・糖尿病・脂質異常症も管理) | 限定的な場合がある |
| 副作用管理 | 内科的評価を含めて対応 | 施設による |
| 治療目的の判断 | 症状・検査結果を総合して判断 | 施設方針による |
※上記は一般的な傾向であり、各医療機関の方針により異なります。
こんな方におすすめです
- 美容クリニックでTRTを勧められたが不安がある
- できるだけ医学的に安全な治療を受けたい
- 将来の妊孕性(子どもをもつ可能性)も考えたい
- 副作用について詳しく相談したい
- 保険診療になる可能性も知りたい
- 筋トレやパフォーマンスだけでなく、健康面も相談したい
- 高血圧・糖尿病なども含めてまとめて診てもらいたい
保険適用の条件は男性更年期障害は保険適用になる?で確認できます。
当院の診療方針
当院では、国内外の診療ガイドライン・最新の医学論文・患者さん一人ひとりの症状や背景を総合的に考慮し、テーラーメイドのテストステロン診療を行っています。数値だけではなく、症状や生活背景も重視するという姿勢を大切にしています。
1回の低値だけで治療を始めることはせず、早朝・空腹での再検査で結果が一貫していることを確認し、肥満・睡眠・薬剤・下垂体・甲状腺など他の原因を評価したうえで方針を決めます。検査値の考え方は男性ホルモン・TRT関連検査の基準値一覧、検査の受け方は男性更年期の検査についてをご覧ください。
よくある質問
Q. 美容クリニックとの違いは何ですか?
A. 美容クリニックは見た目やパフォーマンスの向上を主目的とすることが多いのに対し、当院は内科医として全身の状態(多血症・肝機能・PSA・睡眠時無呼吸症候群・高血圧・脂質異常症など)を評価しながら治療します。中止時のPCTや将来の妊孕性にも配慮します。
Q. 内科でTRTを受けるメリットは何ですか?
A. テストステロン低下の背景にある肥満・睡眠時無呼吸症候群・糖尿病などをまとめて評価・管理でき、副作用(多血症・脂質異常など)にも内科的に対応できます。保険適用の条件を満たす場合は保険診療もご案内します。
Q. 筋トレ・体づくりの目的でも相談できますか?
A. ご相談いただけます。ただし競技力・筋力増強・美容のみを目的とする場合は保険適用外で、自費診療となります。安全のため、開始前の評価と定期的な血液検査は保険診療と同様に行います。
Q. 保険診療になることはありますか?
A. あります。疲労感・性欲低下・筋力低下・抑うつ気分などの症状があり、血液検査でテストステロンの低下が確認され、他の病気が除外された場合は、保険診療の対象となることがあります。
Q. PCTまで相談できますか?
A. できます。TRTをやめたいとき、妊娠を希望するときには、hCG・クロミフェンなどを用いて自己のホルモン分泌の回復をうながすPCTに対応しています。
Q. 副作用はどのように確認しますか?
A. 治療開始後1〜3か月で採血を行い、ヘマトクリット(多血症)・PSA・E2・肝機能・脂質などを確認します。その後も定期的にモニタリングし、必要に応じて投与量や間隔を調整します。
Q. 他院でTRT中でも転院できますか?
A. 可能です。現在の治療内容・投与量・最近の血液検査結果がわかる資料をお持ちください。当院で症状と採血を確認したうえで、保険診療・自費診療のいずれが適しているかをご相談します。
アスリート・ボディビルダー・格闘技選手の方へ(参考情報)
ご確認ください
- テストステロンをはじめとするアナボリックステロイド(AAS)は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)により禁止物質に指定されています。治療目的であっても、所属する競技団体・大会の規定を必ず事前にご確認ください。
- 日本では、医療目的以外でのAAS使用は医薬品医療機器等法に関わり、販売・譲渡は処罰の対象となる可能性があります。
- 以下は、競技目的でAASを用いる場合に流通している一般的な情報を、参考情報・注意喚起として整理したものです。使用を推奨するものではありません。
なお、以下で紹介するAASの使用パターンは、当院で行う医師管理下の自費TRTとは異なる、競技者間で流通している情報です。個々の薬剤の副作用対策についてはアナボリックステロイドの使い分けのページで詳しく解説しています。
球技・格闘技・ボディビルにおけるAASの使用は、筋肉増強・脂肪削減・競技パフォーマンス向上を目的として一部の競技者に行われています。テストステロン、ボルデノン、トレンボロン、マステロン、ナンドロロン(デカ)などは特性や副作用が異なり、目的に応じて使い分けられます。種類別の通説と薬理作用の考察は各種AASの特徴についてのコラムもご覧ください。
スポーツ目的のアナボリックステロイドについて調べている方へ
薬剤ごとの特徴・半減期・使い分け・副作用対策・回復(PCT)・ドーピングの歴史などを、下記のコラムで個別に解説しています。ここを起点にご覧ください。
AAS使用の一般的なスケジュールは、大きく3つのフェーズに分けて語られます。用量・期間が増えるほど、副作用のリスクと回復の負担が大きくなります。
| フェーズ | 期間の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| オンサイクル | 8〜24週 | AASを投与する期間。定期的な血液検査でヘマトクリット・肝機能・脂質・血圧・PSAなどを確認し、必要に応じてアロマターゼ阻害薬などのケア剤を併用します。 |
| PCT(ポストサイクルセラピー) | 4〜36週(回復するまで) | hCG・クロミフェン・タモキシフェンなどで自己のホルモン分泌の回復を図ります。回復までの期間には大きな個人差があり、採血(テストステロン・LH・FSH)で確認しながら継続します。妊娠を希望する場合はさらに長くとることがあります。 |
| ドラッグフリー | 予定や体調に合わせて | 大会スケジュールや体調に合わせて休薬期間を設定します。 |
回復の考え方や薬剤の詳細はTRT後のPCTについて、中止後に妊娠を希望する場合は男性不妊外来をご覧ください。
1. AASの種類と使い分け
テストステロン
- 特性:AASの基盤。アナボリック/アンドロゲニック比 約100:100。エステル型(エナンテート・シピオネート・プロピオネート)で作用時間が異なる
- 用途:バルクアップの中心、ほぼ全サイクルのベース
- 副作用:エストロゲン変換による女性化乳房・水分貯留、脱毛、高血圧など
ボルデノン(エクイポイズ)
- 特性:アナボリック比が高く(約100:50)アンドロゲニック作用は低め。食欲増進が特徴
- 用途:バルクアップ補助、カッティング
- 副作用:女性化乳房、腎負担、赤血球増加による血液粘度上昇
トレンボロン
- 特性:最も強力なAASの一つ(比 約500:500)。エストロゲン変換なし
- 用途:カッティング、コンテスト直前の仕上げ。上級者向け・短期
- 副作用:腎・肝負担、プロラクチン上昇による性機能障害、不眠、攻撃性、精神不安定
マステロン(ドロスタノロン)
- 特性:DHT誘導体。アロマ化せず水分貯留が少ないため「乾いた」仕上がりになりやすい。抗エストロゲン様の作用も報告される。比 約60〜130:25〜40
- 用途:カッティング・コンテスト直前の仕上げ。テストステロンやトレンボロンとの併用が中心
- 副作用:AGA・前立腺への影響、皮脂増加。プロピオン酸型は隔日〜週3回、エナント酸型は週1〜2回
デカ(ナンドロロンデカノエート)
- 特性:半減期が非常に長く数週間残存。関節の調子がよくなると言われる一方、19-nor系でプロゲステロン様作用をもつ
- 用途:バルクアップ、増量期のベース補助。長期の中〜低用量で使われることが多い
- 副作用:高プロラクチン血症による性機能障害(「デカディック」)、女性化乳房、妊孕性低下、気分の落ち込み。中止後も作用が長く残る
その他の薬剤
- ダイアナボル(メタンジエノン):経口。バルクのキックスタート。肝毒性が強い
- オキシメトロン(アナドロール):筋肥大・筋力に優れるが肝毒性・エストロゲン様作用が強い
- スタノゾロール(ウィンストロール):カッティング向け。乾いた仕上がり
使い分けの原則
- 目的で選ぶ:バルク=テストステロン+ボルデノン等/カット=テストステロン+トレンボロン等
- サイクル期間:初心者6〜8週、中級者8〜12週、上級者12〜16週
- テストステロンはほぼ全サイクルに含める
- 体質・副作用耐性に応じて用量や薬剤を調整する
2. サイクルとメニューの例
流通している代表的なサイクル例です。用量が増えるほど副作用のリスクと管理の負担が大きくなります。
初心者・バルクアップ(8週)
- 薬剤:テストステロン・エナンテート 週500mg(週2回に分割)
- ケア剤:アナストロゾール 0.5mg 週2回、肝保護にシリマリン
- PCT:終了2週後からクロミフェン+タモキシフェンを4週
- 栄養:体重1kgあたりタンパク質2〜2.5g
中級者・カッティング(10週)
- 薬剤:テストステロン・プロピオネート 週400mg+トレンボロン・アセテート 週200mg
- ケア剤:エキセメスタン隔日、カベルゴリン 週2回、シリマリン
- PCT:終了3日後からクロミフェン+タモキシフェンを漸減しながら4週
- 栄養:カロリーは維持〜10%減
上級者・コンテスト準備(12週)
- 薬剤:テストステロン・プロピオネート+トレンボロン+マステロン 各週300mg、終盤にオキサンドロロン
- ケア剤:レトロゾール隔日、カベルゴリン 週2回、EPA
- PCT:クロミフェン+タモキシフェン+hCGで自己分泌能を回復
- 栄養:タンパク質3g/kg、炭水化物を段階的に削減
3. 最近のトレンド
- 低用量・短サイクル:従来の高用量(週1,000mg超)より、週200〜500mgのサイクルが注目。トレンボロンも週100〜150mgで運用する例が増加
- ブリッジTRTを含む長期設計:サイクル期間をブリッジのTRT込みで6〜9か月ととり、妊娠希望時はPCTを長めにとる。クロミフェンを9か月まで続けると精巣機能が向上するという報告があり、完全な断薬よりPCTを優先する考え方
- SARM:AASより副作用が少ないとされるが長期安全性は未確立
- 成長ホルモン・ペプチド:AASと併用され、コンテスト準備での使用が増加。エビデンスの現状はボディビルと成長ホルモン(hGH)、ペプチド(BPC157/TB500)の現時点でのエビデンスで解説しています
- データ駆動型:テストステロン値・多血症・肝機能・脂質を定期的に測定し用量やケア剤を調整。25(OH)D・亜鉛・マグネシウムのチェックも有用
- 女性競技者:アンドロゲニック作用の低いAASを低用量で使用する例が増加。声の低音化・多毛など男性化リスクが課題
4. ケア剤と副作用管理
| 目的 | 代表的な薬剤・用量の例 |
|---|---|
| エストロゲン抑制 | アナストロゾール 0.5mg 隔日/エキセメスタン 12.5mg 隔日/タモキシフェン(PCTで20〜40mg/日) |
| プロラクチン抑制 | カベルゴリン 0.25〜0.5mg 週2回 |
| 肝臓保護 | シリマリン 200〜400mg/日/ウルソデオキシコール酸 |
| 脂質・心血管保護 | EPA 2g/日/スタチン(医師管理下でLDL管理) |
| 脱毛予防 | フィナステリド 1mg/日/デュタステリド 0.5mg/日 |
| ホルモン回復 | hCG 250〜500IU 隔日/クロミフェン 50〜100mg/日 |
主な副作用と対応
- 女性化乳房:アロマターゼ阻害薬・SERMで予防。進行時は手術
- 肝障害:経口AASを避ける。肝保護薬と定期的な血液検査
- 心血管リスク:HDL低下・LDL上昇に注意。有酸素運動とEPA/スタチン
- 精神症状(不眠・不安・攻撃性):用量調整、カベルゴリン
- ホルモンクラッシュ(使用後の抑うつ・無気力):PCTの徹底
PCT(ポストサイクルセラピー)の重要性:AAS使用後は自己のテストステロン分泌が低下しており、回復を促す必要があります。標準的にはクロミフェン 50mg/日・タモキシフェン 20mg/日を用い、必要に応じてhCGを併用します。オンサイクルの目安は8〜24週、PCTは4〜36週かけて、採血(テストステロン・LH・FSH)で回復を確認しながら継続します。回復までの期間には大きな個人差があり、妊娠を希望する場合はさらに長くとることがあります。その後のドラッグフリー期間は、大会予定や体調に合わせて設定します。
5. 健康リスクと法的問題
心血管系
- 心筋肥大、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞リスクの増加
- HDL低下・LDL上昇
肝臓
- 経口ステロイド(アルキル化型)による肝障害
- 長期使用で肝腫瘍・肝不全の可能性
ホルモン系
- テストステロン産生抑制、精子数減少、精巣萎縮
- 女性では声の低音化、月経異常、多毛などの男性化
精神系・その他
- 抑うつ、攻撃性増加、依存の形成
- ニキビ・脱毛・皮脂増加、睡眠時無呼吸症候群の悪化、感染症リスク
法的・品質のリスク
- 日本では医療目的以外のAAS使用は医薬品医療機器等法に関わり、個人輸入・譲渡は処罰対象になる可能性があります。
- 以前からクロミフェンやhCGは偽薬が多く、最近はテストステロンでも偽薬や不純物混入による局所感染が増えています。世界的な原材料不足で製造が追いつかない状況にもかかわらず「明らかに安すぎる」「いくらでも買える」というサイトは警戒すべきです。
- JBBF・IFBB・NPC・WADAなどではAASは禁止物質であり、検査陽性は資格停止・出場不可・キャリア断絶につながります。
6. 代替案と安全なアプローチ
サプリメント
- プロテイン・EAA・BCAA:筋肉合成と回復
- クレアチン:筋力・瞬発力(科学的根拠が豊富)
- 亜鉛・ビタミンD:テストステロンの自然分泌をサポート
- L-カルニチン:減量中のパフォーマンス維持
トレーニング・栄養
- 高強度レジスタンスを週4〜6回、漸進的過負荷
- 筋群あたり週10セット以上を目安に調整
- 睡眠と回復を確保しオーバートレーニングを防ぐ
- タンパク質2.0g/kg以上、脂質も適量確保
医療的アプローチ(TRT)
- 40代以降やテストステロン低下が顕著な場合、医師の監督下でのTRTも選択肢
- 血液検査を通じて安全に管理する
7. まとめ
AASは目的別に薬剤を組み合わせることで大きな肉体変化をもたらしますが、肝臓・心血管・精神・性機能への影響やホルモンの恒常性の破綻など、健康リスクは極めて大きいものです。日本では医療目的以外での使用は違法であり、ドーピング検査のある競技では失格や制裁の対象になります。
パフォーマンス向上を目指す場合は、まずトレーニング・栄養・サプリメント・生活習慣の最適化を優先し、それでも改善がみられないときは、医療機関での診断と、合法かつ安全な手段(TRTなど)を検討することが最良の選択です。
関連情報
このページについて
- 監修医:院長 片山泰輔(日本内科学会総合内科専門医/日本腎臓学会腎臓内科専門医)
- 所属:リーレクリニック大手町
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