アナボリックステロイド使用中に胸が張ってきたら|女性化乳房は「エストロゲン」だけが原因ではありません
「乳首が痛い」「胸が膨らんできた」
個人輸入したアナボリックステロイド(AAS)を使用している方から、
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乳首が敏感になった
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胸の張りがある
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しこりができた
といった相談を受けることがあります。
多くの方は
「エストロゲン(E2)が高いからだろう」
と考えがちですが、
女性化乳房(Gynecomastia)の原因はそれだけではありません。
特に、
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ナンドロロン(Deca-Durabolin®、いわゆるデカ)
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トレンボロン(Trenbolone、トレン)
などを使用している場合は他の女性ホルモンも上昇する可能性があります。
原因によって治療法は異なるため「とりあえずアロマターゼ阻害薬を飲む」という対応は適切ではありません。使用中の薬剤ごとの特徴は各種AASの特徴についてもあわせてご覧ください。ホルモン低下による症状が続く方は▶ 男性更年期障害(LOH症候群)の症状・検査・治療もご確認ください。
女性化乳房とは?
女性化乳房は、男性の乳腺組織が増殖する状態です。
原因はさまざまですが、共通しているのは
エストロゲン作用がアンドロゲン作用を上回る状態
です。
AAS使用者では、特に
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高エストラジオール(E2)
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高プロラクチン
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性腺機能低下
などが関与することがあります。
女性化乳房は一度発症してしまうと、治すには外科的手術が必要となります。
保険適応では行えず、ケロイドなど術後の創部の問題もあり事前のケアが重要です。
テストステロンでは「E2」が問題になる
テストステロン製剤は体内で
アロマターゼ
という酵素によって
エストラジオール(E2)
へ変換されます。
投与量が多いほどE2も上昇しやすくなります。
この場合女性化乳房の原因はアロマ化によるエストロゲン過剰です。
そのためまず確認したい検査は
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総テストステロン
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エストラジオール(高感度E2)
です。テストステロンとE2のバランスの考え方は遊離テストステロン/E2比に関してで詳しく解説しています。
デカやトレンでは他の女性ホルモンも重要
ナンドロロンやトレンボロンは、プロゲステロン受容体への作用を持つことが知られています。
この作用が、一部の使用者では女性ホルモン分泌の亢進や乳腺刺激に関与している可能性が指摘されています。
臨床ではこれらの薬剤使用中に
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乳頭痛
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女性化乳房
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性欲低下
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ED
などを伴い、女性ホルモン高値が見つかるケースがあります。
ただし重要なのは、
「トレンボロンやナンドロロンが必ず女性化乳房を起こす」と証明された質の高いヒト研究はありません。
一方で、臨床経験や症例報告では、女性ホルモン上昇を伴う例が報告されており、実際の診療では鑑別に挙げることが重要と考えられています。
原因は採血で見分けることができます
胸が張ってきた場合まず重要なのは
原因を推測ではなく採血で確認することです。
幅広い内分泌系の評価が必要です。
これは一般的な女性化乳房診療ガイドラインでも推奨されている考え方です。当院で行う内分泌の検査項目は男性更年期の検査についてもご参照ください。
原因によって対応は異なります
例えば、
E2が高い場合
原因として
テストステロンのアロマ化が考えられます。
この場合は、
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投与量の見直し
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必要に応じたアロマターゼ阻害薬
などを検討します。
その他のホルモンの評価も重要です。
AASだけではなく、
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下垂体腺腫
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抗精神病薬
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甲状腺機能低下症
などでも上昇するため自己判断は危険です。
原因によって対応も異なります。
「AIを飲めば大丈夫」は危険です
海外のSNSでは症状が出る前からアロマターゼ阻害薬を大量に使用する例も見られます。
しかしE2を必要以上に下げると、
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関節痛
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HDLコレステロール低下
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骨密度低下
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性欲低下
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気分の落ち込み
などの問題が起こります。
エストラジオールは男性にとっても重要なホルモンであり、「低ければ低いほど良い」わけではありません。
長期使用では他の検査も重要です
AAS使用者では、ケアするべきは女性化乳房だけではありません。
定期的に
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PSA
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血算(多血症)
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肝機能
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腎機能
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脂質
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HbA1c
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血圧
なども確認することが望まれます。PSAとテストステロン投与についてやテストステロンと多血症、瀉血についてもあわせてご覧ください。
また将来妊娠を希望する方では、精液検査やLH・FSHの評価も重要になります。妊孕性とTRT,PCTで詳しく解説しています。
当院からのメッセージ
アナボリックステロイド使用中に女性化乳房の兆候がある場合、
「エストロゲンだろう」と決めつけるのではなく、
エストラジオール(E2)だけでなく、広範囲な内分泌系の原因を調べることが大切です。
特に、ナンドロロンやトレンボロンなどを使用している場合は、他の女性ホルモンを調べることで原因に応じた対応が可能になります。
自己判断で薬を追加する前に、まずは採血でホルモンバランスを確認し安全性も含めて評価することをおすすめします。
参考文献
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