大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック

TRT後のPCT(Post Cycle Therapy)

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TRT後のPCT(Post Cycle Therapy)とは?|精巣機能・妊孕性の回復をエビデンスで解説

要点

  • PCT(Post Cycle Therapy)は、TRT終了後にhCG・クロミフェンなどを用い、自分自身の精巣機能・精子形成の回復を目指す治療です。
  • TRTを受けた方全員に必要な治療ではなく、妊娠を希望しない・症状が安定している場合はPCTを行わずTRTを継続することも一般的な選択肢です。
  • 回復の速さには年齢(45歳未満が回復しやすい)とTRT継続期間(2年未満か以上か)が影響します。
  • 論文では6〜12か月継続して評価しており、当院でも精液検査・年齢・TRT期間などを総合的に判断して終了時期を決めています。

男性更年期障害(LOH症候群)の診療で最も多い質問のひとつが、「一度テストステロン補充療法(TRT)を始めたら一生続ける必要がありますか?」「将来子どもが欲しくなったらどうなりますか?」というものです。

TRTは外からテストステロンを補充する治療のため、視床下部・下垂体から分泌されるLH・FSHが抑制され、精巣でのテストステロン産生や精子形成が低下することがあります。そのため、妊孕性(将来子どもを希望すること)を考慮する場合には、PCT(Post Cycle Therapy)を計画することがあります。

一方で、妊娠を希望せず症状が十分に改善している場合は、PCTを行わずTRTを継続することも一般的な選択肢です。前提となるTRT(テストステロン補充療法)の効果と注意点ホルモン検査値の見方もあわせてご覧ください。

PCTとは?

PCT(Post Cycle Therapy)は、TRT終了後にhCG・クロミフェン(必要に応じてFSH製剤)などを使用し、自分自身の精巣機能・精子形成の回復を目指す治療です。目的は次のとおりです。

  • LH・FSHの回復
  • 精巣機能の回復
  • 精子形成の回復
  • 妊孕性の回復

全員がPCTを行う必要はありません

これは非常に重要な点です。PCTは、TRTを受けた全員が必要になる治療ではありません。

PCTを積極的に検討する方

  • 将来子どもを希望している
  • 妊活の予定がある
  • 高用量のテストステロンを使用した
  • アナボリックステロイドの使用歴がある
  • 若年の方

PCTを行わないことも多い方

  • 妊娠を希望していない
  • TRTで症状が十分に改善している
  • TRTを長期継続する予定

妊娠希望がなく症状が安定している場合は、PCTを行わずそのままTRTを継続することも標準的な選択肢です。

PCTの治療成績を左右する2つの因子

これまでの研究で、PCTの成功率(精子形成の回復までの時間)に最も影響する因子は、①年齢②TRTの継続期間であることが分かっています。

① 年齢

TRT使用後に不妊を主訴に受診した66例を対象とした研究では、年齢が高いほど精子形成の回復までに時間がかかる傾向がみられました。臨床的には、45歳未満の方が回復しやすいと考えられています。

② TRTの継続期間

同じ研究では、TRT期間が短いほど回復が早く、長く継続した方では回復が遅れる傾向がありました。一般的には、TRT2年未満と2年以上で回復の速さが異なると考えられています。ただし、2年以上だから回復しないという意味ではなく、時間がかかる可能性が高くなるということです。

PCTはどれくらい続ける?

短期間で終了してしまう施設もありますが、論文では6〜12か月継続して評価しています。特に9か月頃までは精子数や総運動精子数の改善が続く症例も多く、十分な回復が得られるまで治療の継続を検討する価値があります。

そのため当院でも、ホルモン値だけでなく、精液検査・妊娠を希望する時期・TRT期間・年齢を総合的に判断して終了時期を決めています。

hCGとクロミフェンはなぜ併用する?

2つの薬は作用する場所が異なります。

  • hCG:LHの代わりとなり、精巣を直接刺激します。
  • クロミフェン:脳(視床下部・下垂体)に作用し、LH・FSHの分泌を促します。

作用点が違うため、両者を組み合わせることで回復率が高くなる可能性があります。無精子症の状態で慌てることのないよう、複数のホルモンをスケジュールを組んで計画的に使うことが大切です。

参考:テストステロン投与中も精巣はhCGに反応します

従来、テストステロン投与中は精巣へのネガティブフィードバックのためhCG投与は無効とされていました。しかしスポーツ領域では経験的に併用が行われるようになり、テストステロン投与中でも精巣がhCGに反応してテストステロンを産生することが薬物動態の研究でも確認されています。

テストステロン投与後にhCGを投与したときの尿中テストステロンとエピテストステロンの推移を示すグラフ
テストステロン投与後にhCGを投与したときの反応。グラフのテストステロン(尿中)は投与後140時間ほどまで上昇し、24時間後にhCGを投与すると内因性のテストステロンであるエピテストステロンが上昇します。テストステロン補充中もhCGに対して精巣が反応していることが分かります。

PCTの成功率

代表的な研究では、高用量hCGとSERM(クロミフェンなどの選択的エストロゲン受容体調節薬)を併用した場合、約70%が12か月以内に総運動精子数500万以上まで回復しました。精子形成が再開する割合は、研究によっては95%以上と報告されているものもありますが、治療内容や患者背景が異なるため一律には比較できません。

当院の考え方

男性更年期の診療では、TRTだけを考えるのではなく「将来子どもを希望する可能性」も重要です。当院では、年齢・TRT期間・テストステロン値・LH・FSH・エストラジオール・精液検査・妊孕性を総合的に評価し、PCTが必要かどうかを判断しています。

全員にPCTを勧めることはありませんが、必要な患者さんにはエビデンスに基づいた治療をご提案しています。テストステロン投与を続けながらの不妊治療にも対応しています。

よくある質問

Q. TRTを始めると一生やめられませんか?

A. いいえ。症状や目的によっては、TRTを終了しPCTを行って自己の精巣機能の回復を目指すことも可能です。

Q. TRTを続けながら子どもを作れますか?

A. 症例によってはhCGの併用などで妊孕性を維持できる可能性がありますが、精子形成が抑制されることがあるため、妊娠を希望する場合は事前にご相談ください。

Q. TRT期間が長いと回復しませんか?

A. 回復が期待できるケースは多くありますが、年齢が高い場合やTRT期間が長い場合は、回復までに時間がかかる傾向があります。

Q. 他院でテストステロン投与を受けていました。自己分泌能が低下していることが心配ですが、治療を受けられますか?

A. はい。テストステロン補充療法(TRT)を中止した後に、低下したテストステロンの自己分泌や造精機能の回復を促す治療をご相談いただけます。外からテストステロンを投与すると、脳から分泌されるLH・FSHが抑制され、精巣でのテストステロン産生や精子形成が低下することがあります。その場合、状態に応じてクロミフェンやhCGなど、精巣を刺激して内因性のテストステロン産生や造精機能の回復を促す治療を検討します。ただし、自己分泌能や造精機能がどの程度回復するかは、TRTの投与期間、年齢、治療前の精巣機能、LH・FSHの状態などによって異なります。治療によって必ず元の状態まで回復するとは限らず、実際に治療を行いながら経過を確認する必要があります。妊娠を希望されている場合には、テストステロン値だけでなく、精液検査なども含めて評価することが可能です。

関連情報

参考文献

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