帯状疱疹ワクチンは65歳まで待つ?50歳になったらシングリックスを
「帯状疱疹ワクチンは65歳になったら打てばいい」
そう考えている方も多いのではないでしょうか。
確かに、2025年度から帯状疱疹ワクチンは65歳の方などを対象とする定期接種になりました。
しかし、ここで注意したいのは、
「65歳から定期接種になる」ことと、「65歳までワクチンを打つ必要がない」ことは別だということです。
現在の組換え帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は、50歳以上の方を対象として使用することができ、50~64歳では任意接種として受けることができます。
帯状疱疹をできるだけ予防したいのであれば、65歳の定期接種を待たず、50歳になった段階で接種を検討するという考え方があります。
帯状疱疹は誰でも発症する可能性があります
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスが、体内の神経節に潜伏した後、再び活性化することで発症します。
典型的には、身体の左右どちらか一方に沿って、痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが現れます。
「子どもの頃に水ぼうそうにかかったから、もう大丈夫」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、実際には水痘・帯状疱疹ウイルスは水ぼうそうが治った後も体内に潜伏しており、加齢などによって免疫が低下すると再活性化して帯状疱疹を発症することがあります。
厚生労働省によると、帯状疱疹は70歳代で発症する方が最も多く、年齢とともに発症リスクが高くなります。代表的な合併症として、皮膚症状が治った後も痛みが残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」があります。
「65歳から」ではなく「50歳から」が一つの重要な目安
では、なぜ65歳ではなく50歳からワクチンを考えるのでしょうか。
その理由は、50歳以上を対象として帯状疱疹ワクチンの有効性が確認されているからです。
現在、日本で使用されているシングリックスは、50歳以上の成人に対して帯状疱疹の予防を目的に使用できます。
一方、2025年度から始まった定期接種の対象は、原則として65歳を迎える方です。
つまり、
50歳=ワクチンを予防目的で検討できる年齢
であり、
65歳=公費による定期接種の対象となる年齢
です。
この2つは同じ意味ではありません。
定期接種の開始年齢が65歳だからといって、「65歳になるまで帯状疱疹ワクチンを受ける必要はない」ということにはならないのです。
シングリックスは帯状疱疹を大幅に減らします
シングリックスの有効性は、大規模な第III相ランダム化比較試験で検証されています。
50歳以上を対象としたZOE-50試験では、シングリックスによって帯状疱疹の発症リスクが約97%低下しました。
また、70歳以上を対象としたZOE-70試験を含む解析では、70歳以上において帯状疱疹に対する有効率は91.3%、**帯状疱疹後神経痛に対する有効率は88.8%**でした。
さらに、50歳以上のアジア人を対象とした解析でも、帯状疱疹に対する有効率は95.6%と高い効果が確認されています。
つまり、
「帯状疱疹になってから治療する」のではなく、「帯状疱疹そのものを予防する」
という選択肢があるわけです。
特に避けたいのが「帯状疱疹後神経痛」です
帯状疱疹の発疹そのものは、抗ウイルス薬などによる治療によって改善していきます。
しかし、問題になるのが**帯状疱疹後神経痛(PHN)**です。
帯状疱疹が治った後も、神経の損傷によって痛みや違和感が長期間残ることがあります。
帯状疱疹後神経痛は年齢とともに増えることが知られており、仕事や睡眠、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
シングリックスは、帯状疱疹だけでなく、その後に生じるPHNも減らすことが確認されています。
そのため、
「帯状疱疹になっても治療すればいい」
というだけではなく、
「そもそも帯状疱疹を発症しないようにする」
という予防には大きな意味があります。
顔面神経麻痺を起こすこともあります
帯状疱疹は、身体だけに起こる病気ではありません。
顔面神経などの神経にウイルスが再活性化すると、**Ramsay Hunt症候群(ハント症候群)**と呼ばれる状態を起こすことがあります。
耳の周囲の帯状疱疹に加えて、顔面神経麻痺、耳痛、難聴などを生じることがあります。日本感染症学会も、顔面神経領域の帯状疱疹ではRamsay Hunt症候群を生じうることを説明しています。
顔面神経麻痺は、患者さんにとって非常に大きな負担となる合併症です。
もちろん、シングリックスを「顔面神経麻痺のワクチン」と表現することはできません。
しかし、帯状疱疹そのものを予防することで、帯状疱疹に伴う神経合併症を減らすことが期待できます。
「65歳の定期接種まで待つ」必要はありません
ここで重要なのが、定期接種制度の意味です。
2025年度から、帯状疱疹ワクチンは65歳の方などを対象として予防接種法に基づく定期接種になりました。
これは非常に大きな制度変更です。
しかし、
定期接種=その年齢になって初めて接種できる
という意味ではありません。
50~64歳の方は定期接種の対象ではありませんが、シングリックスを任意接種として受けることができます。
したがって、
「65歳になったらワクチンを打つ」
という選択肢だけではなく、
「50歳になったら自費で2回接種して、帯状疱疹のリスクを早くから減らす」
という選択肢があります。
50歳になったら接種を検討する理由
では、なぜ50歳なのでしょうか。
一つは、50歳以上を対象とした大規模臨床試験でシングリックスの有効性が確認されていることです。
もう一つは、帯状疱疹は加齢とともに発症リスクが高くなる病気だからです。
50歳を過ぎた時点から、将来の帯状疱疹を予防するためにワクチンを利用することには合理性があります。
さらに、シングリックスの長期追跡研究では、初回接種から11年後まで帯状疱疹に対する高い予防効果が維持されていることが報告されています。50歳以上で接種した人でも、11年目の時点で帯状疱疹に対する有効性は82.0%でした。
もちろん、将来的に追加接種が必要になるかなどについては、今後の研究や各国の推奨を踏まえて判断する必要があります。
しかし、「50歳で接種すると65歳までに効果が切れてしまうから意味がない」という単純な話ではありません。
50~64歳は「任意接種」という選択肢
50~64歳の方は、定期接種ではないため、原則として自費での接種になります。
シングリックスは通常、2回接種します。
標準的には1回目の接種から2か月後に2回目を接種します。国内の承認上も、50歳以上では0.5mLを2回、通常2か月間隔で筋肉内に接種することになっています。
「65歳まで待てば公費で受けられるのに、なぜ50歳で自費接種するのか?」
という疑問も当然あると思います。
しかし、65歳までの15年間に帯状疱疹を発症する可能性はゼロではありません。
そして、発症してしまった場合には、帯状疱疹そのものだけでなく、PHNなどの合併症が問題になることがあります。
予防できる病気を、費用をかけてでも早くから予防するか。
これは、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンと同じように、個人の価値観や健康への考え方によって選択するものです。
こんな方は50歳からの接種を検討してみましょう
特に以下のような方では、50歳からの任意接種を検討する価値があります。
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できるだけ帯状疱疹を予防したい方
-
帯状疱疹後神経痛を避けたい方
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仕事を長期間休むような病気をできるだけ避けたい方
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顔面神経麻痺などの神経合併症が心配な方
-
50歳を過ぎて、今後の健康維持を積極的に考えている方
特に50代は、まだ「高齢者」という意識がない一方で、帯状疱疹の予防を考えるには重要な時期です。
まとめ:65歳を待つのではなく、50歳から予防を
帯状疱疹ワクチンについては、
「65歳になったら打つもの」
というイメージが広がっています。
しかし、正確には、
65歳=定期接種の対象となる年齢
であり、
50歳=シングリックスによる帯状疱疹予防を検討できる年齢
です。
シングリックスは、50歳以上を対象とした大規模な臨床試験で、帯状疱疹の発症を大幅に減らすことが確認されています。また、帯状疱疹後神経痛などの合併症を減らす効果も確認されています。
そのため、
「65歳の定期接種まで待つ」のではなく、「50歳になったらシングリックスを接種する」
という考え方には、十分な医学的根拠があります。
もちろん、任意接種では費用がかかり、接種後には発熱、筋肉痛、注射部位の痛みなどの副反応が起こることがあります。
そのメリットとデメリットを理解したうえで、
50歳になったら、帯状疱疹ワクチンについて一度検討してみる。
それが、将来の帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防する一つの選択肢です。
参考文献・情報源
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厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html -
厚生労働省「制度変更(令和7年4月):帯状疱疹ワクチンの定期接種化」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_51380.html -
PMDA「シングリックス筋注用」添付文書・医薬品情報
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/340278_631341BE1028_2_07 -
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27626517/ -
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40630610/ -
日本感染症学会「感染症トピックス:震災時に問題となる感染症」(帯状疱疹・Ramsay Hunt症候群の解説を含む)
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=65