咽頭炎・扁桃炎の治療|抗菌薬・ステロイドが必要なケースを医師が解説
のどの痛みで受診される方の多くは咽頭炎・扁桃炎です。原因の大半はウイルスで自然に改善しますが、溶連菌感染症では抗菌薬が必要になり、扁桃周囲膿瘍などでは緊急の対応が必要です。近年は、適切な症例への単回のステロイド投与がのどの痛みをやわらげることも示されています。ここでは、抗菌薬やステロイドが必要になるケースを整理します。
咽頭炎・扁桃炎とは
咽頭炎・扁桃炎は、のど(咽頭・扁桃)に炎症が起こる病気です。原因の多くはウイルス感染ですが、一部では溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)などの細菌感染が原因となり、抗菌薬による治療が必要になります。代表的な症状は次のとおりです。
飲み込みにくさ
発熱
扁桃の腫れ
白い膿(白苔)
首のリンパ節の腫れ
のどの痛みや発熱で受診をお考えの方は、それぞれのページもご覧ください。
多くはウイルス性で自然に改善します
急性咽頭炎・扁桃炎の多くはウイルス感染によるもので、通常は数日〜1週間程度で自然に改善します。そのため、基本の治療は次のとおりです。
- 安静
- 十分な水分摂取
- 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)
ウイルス性の場合、抗菌薬を飲んでも治りは早くなりません(風邪に抗菌薬が無効というお話)。
抗菌薬が必要なのはどんな場合?
抗菌薬はすべての咽頭炎に必要ではありません。主に次のような場合に用います。
- 溶連菌感染症(A群溶血性連鎖球菌)
- 扁桃周囲膿瘍
- 重症の細菌感染
溶連菌を疑う症状(Centorの基準)
次のような特徴があるほど溶連菌感染の可能性が高まります。必要に応じて迅速検査や培養検査を行い、結果に応じて抗菌薬を処方します。
- 38℃以上の発熱
- 扁桃の白苔(滲出物)
- 前頸部リンパ節の腫れ・圧痛
- 咳がほとんどない
- 3〜14歳(年齢も判断の参考になります)
使用される抗菌薬
第一選択はペニシリン系(アモキシシリンなど)です。ペニシリンアレルギーがある場合は、セフェム系・クリンダマイシン・マクロライド系などから選択します。溶連菌感染症では、リウマチ熱などの合併症予防のため、決められた日数しっかり内服することが重要です。
ステロイドは効果がある?
のどの痛みに対するステロイドの効果は、複数のランダム化比較試験をまとめたメタ解析で検討されています。10試験・約1,400人を対象とした解析では、デキサメタゾンなどの単回投与を追加すると、次のような効果がみられました。
- 24時間後に痛みが和らいでいる人が約2倍に
- 48時間以内に痛みがなくなる人が増える
- 重篤な副作用は増えなかった
一方で、ステロイドには次の限界があります。
- 病気そのものを治すわけではない
- 学校や仕事を休む期間は大きく変わらない
- 再発を予防する効果は明らかでない
国際的な診療ガイドラインでも、ステロイドは「痛みの緩和を目的とした弱い推奨」と位置づけられています。
当院でステロイドを使用するケース
当院では、次のような場合に、患者さんと相談のうえで単回のステロイド投与を検討することがあります。
- 強いのどの痛みで水分摂取も困難
- 飲み込むときの痛みが著しい
- 扁桃炎による強い腫れ
すべての方に routine で投与するわけではありません。症状・原因・基礎疾患(糖尿病や高血圧など)を考慮して適応を判断します。
緊急受診が必要な症状
咽頭炎と思っていても、次のような場合は扁桃周囲膿瘍や深頸部感染症など重症の病気の可能性があります。耳鼻咽喉科や救急外来での早急な評価が必要です。
- 片側だけの強いのどの痛み
- 口が開けにくい(開口障害)
- よだれが止まらない・飲み込めない
- 声がこもる(hot potato voice)
- 息が苦しい
- 首が大きく腫れる
- 高熱が続く
当院で行う診療
診察では、のどの状態・発熱の有無・頸部リンパ節を確認し、必要に応じて溶連菌迅速検査や他疾患との鑑別を行います。慢性的ないびきや強い口呼吸がある方では、扁桃肥大や睡眠時無呼吸症候群との関連もあわせて確認します。喫煙はのどの慢性的な炎症の原因になるため、必要に応じて禁煙外来もご案内します。
症状に応じて、解熱鎮痛薬・抗菌薬・ステロイド(適応例のみ)を組み合わせて治療します。症状が安定している方の再診や、経過に応じた処方はオンライン診療もご相談いただけます。
よくある質問
Q. 抗菌薬を飲めばすぐ治りますか?
A. ウイルス性の咽頭炎には抗菌薬は効果がありません。溶連菌などの細菌感染が疑われる場合のみ使用します。
Q. ステロイドは危険ではありませんか?
A. 単回投与では重篤な副作用は少なく、痛みの軽減効果が期待できます。ただし全員に必要な治療ではなく、症状や基礎疾患を考慮して使用します。
Q. 食事が全く取れません。
A. 脱水や扁桃周囲膿瘍の可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。
まとめ
咽頭炎・扁桃炎の多くはウイルス感染で、自然に改善します。溶連菌感染症では抗菌薬治療が必要で、扁桃周囲膿瘍など重症の病気では緊急の対応が必要です。近年は、適切な症例への単回のステロイド投与がのどの痛みの緩和に有効であることも示されていますが、効果と限界を理解したうえで、一人ひとりの状態に応じて使うことが大切です。のどの痛みや発熱でお困りの方は、一般内科にご相談ください。
参考文献
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