大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック
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栄養素をサプリメントで摂るか食事で摂るか

栄養素はサプリメントで摂るべき?食事から摂るべき?最新エビデンスで考える

「ビタミンはサプリメントでまとめて摂ったほうが効率的なのでは?」

「食事だけでは栄養が足りないから、マルチビタミンを飲んでおけば安心なのでは?」

このように考えて、複数のサプリメントを毎日摂っている方も少なくありません。

一方で、健康食品やサプリメントの広告を見ると、

「抗酸化作用」

「免疫力アップ」

「若返り」

「疲労回復」

など、さまざまな効果がうたわれています。

では、医学的にはどうなのでしょうか。

結論から言えば、

健康な人の栄養管理では、基本的にはサプリメントよりも、栄養価の高い食品を組み合わせた食事を土台にすることが重要です。

ただし、

「サプリメントは不要」という意味ではありません。

栄養素が不足している場合、食事だけでは十分な量を確保することが難しい場合、あるいは特定の病態・ライフステージで必要性が明確な場合には、サプリメントや医薬品による補充が非常に有用です。

重要なのは、「食事かサプリか」という二択ではなく、「何が不足していて、それをどの方法で補うのが合理的か」という考え方です。


「栄養素を摂る」だけなら、サプリメントのほうが簡単

例えばビタミンCを考えてみましょう。

サプリメントなら、錠剤1個で数百mgを簡単に摂取できます。

しかし、食品から摂る場合には、

  • 野菜
  • 果物
  • 芋類

など、複数の食品を組み合わせることになります。

単純に「ある栄養素を一定量摂取する」という目的だけなら、サプリメントは非常に効率的です。

では、サプリメントのほうが健康にも有利なのでしょうか。

ここが問題です。

栄養素を摂取することと、その栄養素を含む食品を食べることは、必ずしも同じではありません。


食品には「栄養素以外のもの」も含まれている

食品には、ビタミンやミネラル以外にも、

  • 食物繊維
  • タンパク質
  • 脂質
  • ポリフェノール
  • カロテノイド
  • 発酵性成分
  • その他の植物由来成分

など、多数の成分が含まれています。

さらに、食品は単独で食べるのではなく、他の食品と組み合わせて食べることで、食事全体としての効果が生まれます。

例えば、

からは、

  • EPA・DHA
  • タンパク質
  • ビタミンD
  • セレン
  • その他の微量栄養素

などを同時に摂取できます。

野菜や果物からも、

  • ビタミン
  • ミネラル
  • 食物繊維
  • ポリフェノール
  • カロテノイド

などをまとめて摂取できます。

そのため、

「ビタミンCを500mg摂れば、野菜や果物を食べるのと同じ」

とは言えません。


「栄養素」ではなく「食事全体」を研究する必要がある

栄養学で難しいのはここです。

人間は「ビタミンCだけ」「マグネシウムだけ」を食べて生きているわけではありません。

実際には、

食事パターン

として栄養を摂っています。

そのため近年の栄養学では、

「このビタミンを何mg摂れば健康になるか」

だけではなく、

どのような食事パターンを長期間続けている人の健康状態が良いのか

という研究が重視されています。

米国のDietary Guidelinesでも、栄養素の必要量は基本的に食品・飲料から満たすことを原則とし、野菜、果物、全粒穀物、魚・肉・卵・豆類、ナッツなどを含む栄養密度の高い食品を組み合わせることを推奨しています。


2019年のNHANES研究:「食事からの栄養」と「サプリ」は同じではなかった

以前からよく引用されてきた研究があります。

2019年にAnnals of Internal Medicineに発表された研究です。

米国NHANESの成人30,899人を対象に、栄養素の摂取量と死亡との関連を調べました。

その結果、

  • ビタミンA
  • ビタミンK
  • マグネシウム
  • 亜鉛

などについて、十分な摂取量と死亡リスク低下との関連が認められました。

しかし重要なのは、

この関連は主として「食品からの摂取」で認められ、サプリメントからの摂取では認められなかった

という点です。

ただし、これは観察研究です。

「食品から摂ったから死亡率が低下した」と証明した研究ではありません。

健康的な食事をしている人は、

  • 運動習慣がある
  • 喫煙率が低い
  • 飲酒量が少ない
  • 肥満が少ない
  • 医療へのアクセスが良い

など、他の健康行動も同時に持っている可能性があります。

したがって、

「食事由来の栄養素は死亡率を下げるが、サプリでは下げない」と因果関係まで断定することはできません。

この点は、以前の当院の記事よりも慎重に書くべきところです。


2024年の39万人規模の研究でも「マルチビタミンで長生き」は確認されなかった

さらに重要なデータがあります。

2024年、JAMA Network Openに非常に大規模な研究が発表されました。

米国の3つの前向きコホート、

390,124人

を対象に、マルチビタミンの使用と死亡との関係を調べています。

追跡期間の中央値は約23.5年でした。

結果として、

毎日マルチビタミンを使用している人で、全死亡リスクが低下することは確認されませんでした。

これは、マルチビタミンを飲むこと自体が寿命を延ばすという考えを支持する結果ではありません。

もちろん、これも観察研究です。

したがって「マルチビタミンには絶対に効果がない」と証明したわけではありません。

しかし、

「とりあえずマルチビタミンを飲んでおけば健康になる」

という考えを支持する強いエビデンスもありません。


一方、マルチビタミンに全く研究結果がないわけではない

ここも重要です。

サプリメントを一括して「効果がない」と考えるのも正しくありません。

例えば2024年には、60歳以上の21,442人を対象としたCOSMOS試験の認知機能研究で、マルチビタミンを毎日摂取した群では、プラセボ群と比較して認知機能、特にエピソード記憶の改善が報告されています。

さらにCOSMOSの3つの認知機能研究を統合した解析では、マルチビタミンによって全般的認知機能とエピソード記憶に小さいながら統計学的な改善が認められました。

ただし、

認知症そのものの発症を確実に防ぐことが証明されたわけではありません。

COSMOS-Mindでは、3年間の追跡で軽度認知障害(MCI)や認知症の発症率そのものに有意差は確認されませんでした。

このように、

「あるアウトカムでは効果が見られるが、別の重要なアウトカムでは確認されない」

ということが、サプリメント研究では珍しくありません。

だからこそ、「○○に効く」という広告だけを見るのではなく、どの研究で、何をアウトカムとして、どの程度の効果が出たのかを見る必要があります。


USPSTFはビタミン・ミネラルサプリをどう評価している?

米国の予防医療に関する独立した専門家組織であるUSPSTFは、2022年にビタミン・ミネラル・マルチビタミンについてsystematic reviewを行いました。

84研究、合計739,803人を対象としています。

結論はかなりシンプルです。

健康な成人において、

ビタミン・ミネラルサプリメントの多くは、心血管疾患、がん、死亡を予防することについて、ほとんど利益がない、あるいは利益を示す十分なエビデンスがない

というものでした。

一方で、

ビタミンE

心血管疾患やがん予防目的で使用することは推奨されていません。

βカロテン

むしろ肺がんなどのリスクを増加させる可能性があるため、喫煙者などでは特に注意が必要です。

ビタミンD

一般的な健康な成人が病気を予防する目的で摂取することで、死亡、心血管疾患、がんが明確に減少することは確認されていません。

つまり、

「ビタミンだから安全」「抗酸化物質だから多いほど良い」という考え方は正しくありません。

栄養素にも適量があり、必要以上に摂ればよいわけではありません。


では、サプリメントはいつ使えばいい?

ここが実際の臨床では最も重要です。

サプリメントは、

「健康な人が念のため全部飲むもの」

ではなく、

「食事だけでは不足しやすいものを合理的に補う手段」

と考えると分かりやすいでしょう。

例えば、

妊娠を考えている女性の葉酸

神経管閉鎖障害の予防という明確な目的があります。

ビタミンD不足

日照不足、食事内容、生活環境などから不足している場合には補充が合理的です。

鉄欠乏

鉄欠乏性貧血など、明確な欠乏がある場合には食事だけでなく鉄剤による治療が必要になることがあります。

ビタミンB12

菜食、胃切除、吸収障害、特定の薬剤使用などによって不足する場合があります。

亜鉛

欠乏が確認されている場合には補充が有用です。

このように、

「不足しているから補う」

という使い方には、サプリメント・栄養補助食品・医薬品として明確な意味があります。


「食事だけで全部摂る」にも無理がある

一方で、

「健康な人は絶対にサプリメントを使ってはいけない」

というのも極端です。

例えば、現代の生活では、

  • 食事量を制限している
  • ダイエット中
  • 外食が多い
  • 偏食がある
  • 魚をほとんど食べない
  • 野菜・果物をほとんど食べない
  • 日光にほとんど当たらない

など、食事だけで必要量を確保するのが難しい人もいます。

また、必要量を確保するために大量の食品を食べれば、カロリー過剰になってしまうこともあります。

したがって、

「食事が基本」=「サプリメント不要」

ではありません。


「不足を補うサプリ」と「健康効果を期待するサプリ」は分けて考える

サプリメントを考えるとき、私はこの2つを分けることが重要だと思います。

① 不足を補う

例えば、

「血液検査で鉄が不足している」

「ビタミンDが不足している」

「食事だけでは葉酸を必要量確保できない」

など。

これは合理的です。

② 健康な人がさらに大量に摂る

「ビタミンCを大量に飲めば老化を防げる」

「抗酸化物質を大量に摂ればがんにならない」

「マルチビタミンを飲めば長生きできる」

など。

こちらは、現在の医学的エビデンスでは支持されていないものが多くあります。

むしろ、一部の栄養素では過剰摂取による害もあります。


「天然だから安全」でもない

サプリメントについてもう一つ注意したいのが、

「天然」「植物由来」=安全

という考え方です。

これは医学的には成り立ちません。

天然の植物にも薬理作用を持つ物質が多数存在します。

サプリメントには、

  • 医薬品との相互作用
  • 過剰摂取
  • 腎機能・肝機能への影響
  • 成分間の相互作用
  • 製品ごとの含有量の違い

などの問題があります。

米国NIHのNCCIHも、サプリメントは製品によって研究で使用されたものと成分・品質が異なる場合があり、薬剤との相互作用や基礎疾患との関係にも注意が必要としています。


サプリメントの「品質」も重要

同じ「ビタミンD」でも、製品によって、

  • 含有量
  • 添加物
  • 製造工程
  • 品質管理
  • 第三者認証
  • 成分表示の正確性

などが異なります。

したがって、

「論文で○○という成分に効果があった」

という情報だけを見て、その成分が入ったすべての市販サプリメントに同じ効果があると考えるのは危険です。

研究で使われた製品と、市販されている製品が同じとは限らないからです。


結局、食事とサプリメントはどちらがいい?

私なら次のように考えます。

原則

食事を基本にする。

食事を整える

  • 十分なタンパク質
  • 野菜
  • 果物
  • 豆類
  • 全粒穀物
  • ナッツ・種子類

などを組み合わせる。

不足しそうな栄養素を確認する

食事内容、生活習慣、年齢、性別、妊娠可能性、疾患、薬剤などを考慮する。

必要なら補充する

食事で十分に確保できない場合や、欠乏が確認された場合にサプリメント・栄養補助食品・医薬品を利用する。

この順番が合理的です。


「マルチビタミンを飲んでいるから食生活は適当でいい」は逆

これは特に注意したいところです。

マルチビタミンを飲めば、

  • 野菜不足
  • 魚不足
  • 食物繊維不足
  • タンパク質不足
  • 過剰な加工食品
  • 過剰なカロリー
  • 飽和脂肪酸の過剰摂取

などが帳消しになるわけではありません。

栄養素を錠剤で補っても、食事全体の質が置き換わるわけではないからです。


当院からのメッセージ

サプリメントは「健康に悪いもの」でも、「飲めば健康になるもの」でもありません。

重要なのは、

何のために、何を、どのくらい摂るのか

です。

健康な人が病気の予防目的で大量のサプリメントを摂取することについては、現在のエビデンスでは明確な利益が証明されていないものが多くあります。

一方で、栄養素が不足している場合には、適切な補充が非常に重要です。

そのため、

「食事かサプリか」ではなく、「食事を基本として、必要なところだけサプリメントで補う」

という考え方が最も合理的です。

サプリメントを増やす前に、まず食事を見直す。

そして、もし「食事では足りない理由」があるのであれば、その理由を考えて必要な栄養素を補う。

これが、エビデンスに基づいたサプリメントとの付き合い方です。

なお、特定の疾患や栄養素欠乏がある場合には、一般的な健康情報とは異なり、医師による評価や治療が必要になることがあります。

参考文献

  1. Chen F, et al. Association Among Dietary Supplement Use, Nutrient Intake, and Mortality Among U.S. Adults: A Cohort Study. Ann Intern Med. 2019;170(9):604-613. PMID 30959527.

    → 元記事の中心論文。食品由来の栄養素と死亡との関連を示した観察研究ですが、因果関係には注意が必要です。
  2. Loftfield E, et al. Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts. JAMA Netw Open. 2024;7(6):e2418729. DOI 10.1001/jamanetworkopen.2024.18729.

    39万0124人、中央値23.5年追跡。日常的なマルチビタミン使用と全死亡リスク低下は認められませんでした。
  3. O’Connor EA, et al. Vitamin and Mineral Supplements for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force. JAMA. 2022;327(23):2334-2347. DOI 10.1001/jama.2021.15650. PMID 35727272.

    → 84研究、739,803人。一般的なビタミン・ミネラルサプリの一次予防効果を評価。
  4. U.S. Preventive Services Task Force. Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer. 2022.

    → βカロテン・ビタミンEについては予防目的で推奨せず、その他の一般的サプリについては利益と害を判断するエビデンスが不十分としています。
  5. Vyas CM, et al. Effect of multivitamin-mineral supplementation versus placebo on cognitive function: results from the clinic subcohort of the COSMOS randomized clinical trial and meta-analysis of 3 cognitive studies within COSMOS. Am J Clin Nutr. 2024;119(3):692-701. DOI 10.1016/j.ajcnut.2023.12.011. PMID 38244989.

    → 高齢者でマルチビタミンによる認知機能・エピソード記憶の小さな改善を検討したRCT。
  6. Sachs BC, et al. Impact of Multivitamin-Mineral and Cocoa Extract on Incidence of Mild Cognitive Impairment and Dementia: Results from COSMOS-Mind. Alzheimer’s Dement. 2023;19(11):4863-4871. DOI 10.1002/alz.13078.

    → マルチビタミンによって認知機能の一部に良好な変化がみられたものの、3年間のMCI・認知症発症率そのものには有意差が確認されませんでした。
  7. Dietary Guidelines for Americans, 2020–2025. U.S. Department of Agriculture / U.S. Department of Health and Human Services.

    → 栄養素を主として食品・飲料から摂取するという「food first」の考え方の根拠。
  8. NIH Office of Dietary Supplements. Vitamin and Mineral Supplement Fact Sheets.

    → 各ビタミン・ミネラルの必要量、欠乏、過剰摂取、安全性などを確認するための公的資料。
  9. NIH National Center for Complementary and Integrative Health. Dietary and Herbal Supplements.

    → サプリメントのエビデンスのばらつき、薬剤との相互作用、製品間の違いなどについての公的情報。
電話 03-5224-6672 LINEで予約