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インフルエンザワクチンの効果

インフルエンザワクチンはどこまで効く?発症・重症化・入院・死亡を最新エビデンスから解説

「インフルエンザワクチンを打っても、インフルエンザにかかる人はいるのでは?」

これはよくある疑問です。

実際、その通りです。

インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからなくなるワクチンではありません。

しかし、ワクチンの効果は「発症するかどうか」だけで評価するものではありません。

重要なのは、

  • インフルエンザの発症を減らす

  • 医療機関を受診するほどの感染症を減らす

  • 入院を減らす

  • 重症化を減らす

  • インフルエンザによる死亡を減らす

という複数の効果です。

2026年9月2日、医学誌『JAMA』に、2026~2027年シーズンに向けたインフルエンザワクチンの有効性と安全性をまとめたsystematic review(系統的レビュー)が発表されました。

今回はこの最新レビューを中心に、インフルエンザワクチンが「実際にどこまで効くのか」を解説します。

インフルエンザワクチンについてはこちら


2026年のJAMA systematic reviewとは?

今回の論文は、

Senerth E, Sheikholeslamian SM, Sivakumaran K, et al.
Influenza Vaccine Effectiveness and Safety for the 2026-2027 Respiratory Season.
JAMA. Published online September 2, 2026.

というsystematic reviewです。

2025年8月1日から2026年6月30日までに発表された研究を、

  • MEDLINE/PubMed

  • Embase

  • Cochrane CENTRAL

  • Scopus

から検索しています。

最終的に69件の研究が対象となりました。

その内訳は、

  • 21件:ランダム化比較試験(RCT)

  • 23件:比較対象を持つ観察研究

  • 7件:比較対象のない安全性研究

  • 18件:インフルエンザの疾病負担に関する研究

です。

さらに、研究ごとにrisk of bias(バイアスのリスク)も評価されています。

つまり、単一の研究結果を紹介したものではなく、2026年時点で新しく蓄積されたエビデンスを体系的に検索し、研究デザインとバイアスを評価したレビューです。

この点で、インフルエンザワクチンの有効性を考える上で非常に重要な資料です。


まず結論:ワクチンの効果は「発症予防」だけではない

今回のJAMAレビューから最も重要なことを一言でまとめると、

インフルエンザワクチンは、感染・発症を完全に防ぐものではありませんが、インフルエンザによる重症化や入院、死亡のリスクを低下させる方向のエビデンスが蓄積しています。

特に、

  • 高齢者

  • 乳幼児

  • 小児・若年者

  • 基礎疾患を持つ人

など、重症化リスクが高い集団では、単純な「感染予防」以上に重症化予防が重要になります。


① 発症予防:どのくらいインフルエンザを防げる?

まず最もイメージしやすいのが「インフルエンザにかかるのを防ぐ効果」です。

2025~2026年シーズンの米国データでは、18~64歳の成人について、検査で確認されたインフルエンザに対するワクチン有効性(VE)は、

24~36%

でした。

つまり、ワクチンを接種した人では、非接種者と比較して、検査で確認されるインフルエンザのリスクが一定程度低下していました。

ただし、ここで重要なのが、

「VEが30%なら、100人中30人が必ず防げる」という意味ではない

ということです。

VEは、ワクチン接種群と非接種群の相対的なリスクを比較した指標です。

また、インフルエンザワクチンの有効性は、

  • その年に流行するウイルス株

  • ワクチン株との抗原性の一致

  • 年齢

  • 免疫状態

  • 使用するワクチン製剤

などによって変わります。

そのため、インフルエンザワクチンのVEには毎年かなり幅があります。


「ワクチンを打ったのにインフルエンザになった」は珍しくない

ここは患者さんにとって重要なポイントです。

インフルエンザワクチンは、COVID-19ワクチンなどと同様、

100%の感染予防効果を持つワクチンではありません。

したがって、

「去年ワクチンを打ったけれどインフルエンザになった」

という経験があったとしても、

「だからワクチンは効かない」

とは言えません。

むしろ、ワクチンの価値を考えるときには、

「感染したか」だけではなく、「感染した場合にどこまで重症化を防げたか」

を見る必要があります。


② 入院予防:ワクチンの重要な効果

今回のJAMAレビューで特に注目したいのが、入院予防です。

2025~2026年シーズンでは、

18~64歳

インフルエンザ関連入院に対するVEは、

29%(95%CI 11~45%)

でした。

65歳以上

インフルエンザ関連入院に対するVEは、

31%(95%CI 21~39%)

でした。

つまり、ワクチンを接種することで、インフルエンザによって入院するリスクが一定程度低下することが示されています。

発症を完全に防げなくても、

「インフルエンザになったときに入院するほどの重症になるリスクを下げる」

ということが、ワクチンの重要なメリットです。


③ 高齢者では「死亡」についても効果を示すデータがある

インフルエンザで特に問題になるのが、高齢者の重症化と死亡です。

今回のJAMAレビューでは、65歳以上の高齢者について、複数のシーズンの研究をまとめると、インフルエンザワクチンはインフルエンザ関連死亡のリスク低下と関連していました。

報告されたVEは研究によって、

29.0%(95%CI 16.0~40.0%)から65.8%(95%CI 54.6~76.9%)

まで幅がありました。

一見すると非常に大きな効果に見えますが、ここは注意が必要です。

この死亡に関する研究の多くは観察研究であり、RCTほど厳密に因果関係を証明できるわけではありません。

例えば、

  • 健康状態が比較的良い人ほどワクチンを受ける

  • 医療機関へのアクセスが良い人ほど接種する

  • 健康意識が高い人ほど予防行動を取る

といった違いが、結果に影響する可能性があります。

したがって、

「インフルエンザワクチンで死亡率が必ず65.8%下がる」

という説明は適切ではありません。

一方で、

「高齢者では、インフルエンザ関連死亡を減らす方向のエビデンスが複数の研究で確認されている」

という結論は支持できます。


④ 子どもでは死亡予防について非常に大きな効果が報告された

今回のレビューには、子どもについても重要なデータがあります。

米国の全国サーベイランスデータを2016~2020年および2021~2025年の8シーズンにわたって解析した研究では、6か月~17歳の小児・青少年について、

検査で確認されたインフルエンザ関連死亡に対するVEは80.0%(95%CI 75.0~84.0%)

でした。

これは非常に大きな数字です。

ただし、これも観察データに基づく推定値です。

また、対象となった「インフルエンザ関連死亡」というアウトカム自体が非常にまれであるため、成人の一般的なインフルエンザ発症予防のVEと単純に比較することはできません。

それでも、

小児・青少年においても、ワクチン接種と重症インフルエンザ・死亡リスクの低下との関連が認められている

ことは重要です。


⑤ 妊婦が接種すると、生まれた赤ちゃんにもメリットがある

インフルエンザワクチンには、本人だけではなく乳児への間接的な効果もあります。

今回のJAMAレビューでは、妊娠中のワクチン接種によって、生後6か月までの乳児における検査確認インフルエンザ感染に対するVEが、

44.4%(95%CI 31.4~54.9%)

と報告されています。

生後6か月未満の乳児は、年齢の関係で通常のインフルエンザワクチン接種の対象になりません。

そのため、妊娠中の母親への接種によって胎児に移行する抗体などを介して、出生後の乳児を守ることには意味があります。


⑥ 高齢者では「高用量ワクチン」という選択肢もある

高齢になると免疫応答が弱くなるため、65歳以上では高用量ワクチンなど、より強い免疫応答を期待した製剤も使用されています。

今回のレビューでは、2022~2025年シーズンのRCTデータにおいて、

高用量ワクチンは標準量ワクチンと比較して、インフルエンザによる入院に対する相対的な有効性が43.6%(95%CI 27.5~56.3%)高かった

と報告されています。

ただし、これは

「高用量ワクチンの効果が43.6%ある」

という意味ではありません。

「標準量ワクチンと比較した場合に、高用量ワクチンのほうが入院予防について相対的に有利だった」という意味です。

また、すべてのアウトカムで高用量ワクチンが優れているわけではありません。


⑦ ワクチンの安全性はどうなのか?

ワクチンでは「効果」だけでなく「安全性」も重要です。

今回のJAMAレビューでは、2023~2024年シーズンにワクチンを接種した、

9,973,703人

を対象としたself-controlled case series(自己対照ケースシリーズ)も評価されています。

この大規模研究では、

  • Guillain-Barré症候群

  • アナフィラキシー

  • 脳卒中

  • その他の重篤な有害事象

について、季節性インフルエンザワクチン接種との新たな関連は確認されませんでした。

また、RSVワクチンやCOVID-19ワクチンとの同時接種についても、新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。

小児についても、インフルエンザワクチンと接種後0~7日の熱性けいれんとの関連は認められませんでした。

今回のレビューの結論も、

新たな安全性上の懸念は確認されなかった

というものでした。


インフルエンザワクチンの効果を「3段階」で考える

インフルエンザワクチンを理解するときには、次の3段階で考えると分かりやすくなります。

① 発症を防ぐ

インフルエンザそのものにかかる可能性を低下させます。

ただし、効果はシーズンや流行株によって変動します。

② 重症化・入院を防ぐ

ワクチンを接種していても感染することはあります。

しかし、感染した場合に肺炎や重症化、入院に至るリスクを低下させることが期待されます。

③ 死亡を防ぐ

特に高齢者などでは、インフルエンザ関連死亡を減らす方向のデータがあります。

ただし、死亡については観察研究が中心であり、効果の大きさを単一の数字で断定するべきではありません。


「ワクチンを打ってもかかるなら意味がない」は正しくない

これはインフルエンザワクチンについて非常によくある誤解です。

ワクチンの効果を、

「感染を100%防げるか」

だけで評価すると、インフルエンザワクチンの価値を過小評価してしまいます。

例えば、

発症する

高熱・肺炎

入院

ICU

死亡

という一連のリスクがあるとしたら、ワクチンはこのすべての段階に対して一定の予防効果を持つ可能性があります。

したがって、

「ワクチンを打ったのにインフルエンザになった」

ことと、

「ワクチンに意味がなかった」

ことは同じではありません。


効果は毎年同じではない

インフルエンザワクチンについて数字を紹介するときには、この点を必ず理解しておく必要があります。

インフルエンザウイルスは毎年変化します。

そのため、

  • 流行したウイルス株

  • ワクチンに含まれる株

  • 抗原性の一致度

  • 年齢

  • 免疫状態

  • 使用したワクチン製剤

  • そのシーズンの流行状況

によってワクチンの有効性は変わります。

今回のJAMAレビューでも、VEにはシーズンや年齢によるばらつきが認められています。

したがって、

「インフルエンザワクチンの効果は○%」

と一つの数字だけで説明するのは正確ではありません。


日本の患者さんにそのまま当てはめてよいのか?

ここも重要です。

今回のJAMAレビューは、米国で使用されているインフルエンザワクチンと米国のデータを中心にしたレビューです。

インフルエンザワクチンそのものの生物学的な効果を考える上では重要な資料ですが、

  • 日本で流行するウイルス

  • 日本で使用される製剤

  • 日本の接種率

  • 日本の医療制度

  • 日本人の患者背景

が米国と完全に同じわけではありません。

したがって、今回の数字をそのまま「日本人における効果」とすることはできません。

一方で、

インフルエンザワクチンが発症だけでなく、重症化・入院・死亡を減らす可能性がある

という大きな方向性を考える上では、非常に重要なエビデンスです。


当院からのメッセージ

インフルエンザワクチンは、

「打てば絶対にインフルエンザにかからないワクチン」ではありません。

しかし、最新のエビデンスでは、

  • インフルエンザの発症を減らす

  • インフルエンザによる入院を減らす

  • 重症化を減らす

  • 高齢者ではインフルエンザ関連死亡を減らす方向のデータがある

  • 小児でも重症インフルエンザ・死亡を減らす方向のデータがある

  • 新たな重大な安全性上の問題は確認されていない

ということが分かっています。

特に高齢者や基礎疾患のある方では、

「インフルエンザにかからないため」だけではなく、「かかった場合に重症化しないため」

という視点でワクチンを考えることが重要です。

インフルエンザワクチンの効果は毎年一定ではありません。

それでも、2026年9月にJAMAで発表された最新のsystematic reviewを含め、これまで蓄積されてきた研究からは、

インフルエンザワクチンは、発症予防だけでなく、重症化・入院・死亡を減らすことを目的とした予防手段である

と考えるのが、現在のエビデンスを最も正確に反映した説明です。

2026–2027年インフルエンザワクチン

2026年9月15日から接種を開始しています。

料金:1回4,000円(税込)

大手町駅C2b出口から徒歩1分のため、大手町で働く方の昼休みや仕事前後の接種にもご利用いただけます。
大手町・丸の内で働く方の仕事前・昼休み・仕事帰りの接種にもご利用いただけます。

予約なしでも対応できますが、待ち時間短縮にはご予約をお勧めしています。

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参考文献

  1. Senerth E, et al. JAMA 2026 — 今回のコラムの中心文献
    JAMA:Influenza Vaccine Effectiveness and Safety for the 2026-2027 Respiratory Season
    PubMed:PMID 42684248
  2. Demicheli V, et al. — 成人のインフルエンザワクチンCochrane review
    PubMed:Vaccines for preventing influenza in healthy adults
  3. Nichol KL, et al. — 高齢者のワクチン効果
    PubMed:Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly
  4. Ferdinands JM, et al. — 高齢者における高用量等ワクチンの比較
    論文:Protection against influenza hospitalizations from enhanced influenza vaccines among older adults
  5. Zhao W, et al. — 高用量 vs 標準量ワクチンの2026年メタ解析
    PubMed:Effect of high-dose versus standard-dose influenza vaccines on hospitalisation outcomes and mortality
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