大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック
ホーム » コラム » アロマ阻害の使い分け

アロマ阻害の使い分け

TRT中にエストラジオール(E2)が高くなったら?アロマターゼ阻害薬3剤の特徴と使い分け

テストステロン補充療法(TRT)を受けている男性では、治療中に「エストラジオール(E2)が高くなった」と指摘されることがあります。

テストステロンの一部は、脂肪組織などに存在するアロマターゼという酵素によってエストラジオール(E2)に変換されます。

そのため、TRTによって血中テストステロンが増えると、E2も上昇することがあります。

このような場合に検討される薬剤が、アロマターゼ阻害薬(Aromatase Inhibitor:AI)です。

代表的なものとして、

  • アナストロゾール

  • レトロゾール

  • エキセメスタン

の3種類があります。

では、この3剤にはどのような違いがあり、TRT中のE2上昇に対してどのように使い分ければよいのでしょうか。

まず知っておきたい「テストステロンとE2の関係」

男性にとってエストラジオールは、単なる「女性ホルモン」ではありません。

男性でもテストステロンからE2が産生され、性欲や勃起機能、骨代謝などに関与しています。

したがって、

「E2は低ければ低いほどよい」

という考え方は適切ではありません。

実際、男性ではエストロゲン作用を過度に抑制すると、骨代謝に悪影響を及ぼす可能性があります。

アナストロゾールを高齢男性に投与した研究では、E2が低下する一方で、骨吸収マーカーが上昇しました。

そのため、TRT中にE2が基準値より高かったとしても、検査値だけを見てAIを追加するのではなく、症状とE2の程度、テストステロン値、投与方法などを総合的に判断することが重要です。

内分泌系の具体的な基準値は男性ホルモン・TRT関連検査の基準値一覧で解説しています。

テストステロンとE2の比率についてはこちらのコラムをご参照ください。

なぜTRTでE2が上がるのか?

テストステロンは、アロマターゼによってエストラジオールに変換されます。

特に、

  • 体脂肪が多い

  • テストステロン投与量が多い

  • 注射などによってテストステロン濃度が大きく上昇する

  • 投与後のテストステロンピークが高い

といった場合には、E2が上昇しやすくなることがあります。

したがって、E2が高い場合には、いきなりAIを追加するのではなく、

「そもそもTRTの投与量・投与間隔が適切か」

を確認することが重要です。

場合によっては、テストステロンの投与量や投与間隔を調整するほうが自然な解決方法になることもあります。

アロマターゼ阻害薬はどのように作用する?

AIは、テストステロンなどのアンドロゲンをE2へ変換するアロマターゼを阻害します。

つまり、

テストステロン → アロマターゼ → エストラジオール

という経路の途中を抑える薬です。

その結果、E2を低下させることができます。

一方、内因性のテストステロン産生が残っている男性では、E2による視床下部・下垂体への負のフィードバックが弱くなるため、LH・FSHが上昇し、結果としてテストステロンが上昇することもあります。

これは、AI単独で男性のテストステロンを上昇させる治療で利用される作用です。

ただし、TRT中は外からテストステロンを補充しているため、AIによって内因性テストステロンを増やすことよりも、過剰なE2産生を抑えることが主な目的になります。


3種類のアロマターゼ阻害薬の違い

現在、代表的なAIにはアナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンがあります。

大きく分けると、

薬剤 分類 アロマターゼ阻害 血中半減期の目安 特徴
アナストロゾール 非ステロイド性・可逆的 強力 約41~48時間 バランスがよく、男性TRTで最も使用経験が多い
レトロゾール 非ステロイド性・可逆的 非常に強力 約2~4日 強力かつ長く作用し、E2を下げすぎないよう注意
エキセメスタン ステロイド性・不可逆的 強力 約27時間 「自殺的阻害」と呼ばれる不可逆的作用が特徴

薬物動態を比較したレビューでは、アナストロゾールの半減期は41~48時間、レトロゾールは2~4日、エキセメスタンは約27時間とされています。

ただし、これは主として乳がん治療で得られた薬物動態データであり、男性TRTにおける3剤の臨床効果を直接比較したものではありません。

ここは非常に重要なポイントです。


アナストロゾール:TRT中のE2管理では最も使いやすい選択肢

アナストロゾールは、非ステロイド性のAIです。

アロマターゼに可逆的に作用し、血中半減期は約2日です。

男性での研究も比較的多く、TRT中にE2が上昇した男性にアナストロゾールを使用した後ろ向き研究では、E2が大きく低下しながら、総テストステロンは治療前後で大きく変化しませんでした。

この研究では、TRT中の男性44人にアナストロゾールが使用され、E2は中央値65 pg/mLから22 pg/mLへ低下しました。一方、総テストステロンは616 ng/dLから596 ng/dLで、有意な変化はありませんでした。

このことから、アナストロゾールは、

「TRTによってE2が上がったが、テストステロンそのものは維持したい」

という場面で比較的扱いやすい薬剤と考えられます。

一方、これはランダム化比較試験ではなく、男性TRTにおけるAI使用の標準投与法が確立しているわけではありません。

したがって、アナストロゾールの使用量や頻度についても、個々の患者のE2・症状・TRT量を見ながら調整する必要があります。


レトロゾール:非常に強力だが「強ければよい」わけではない

レトロゾールも非ステロイド性AIです。

3剤の中では特に強力なアロマターゼ阻害作用を持ち、半減期も比較的長いことが特徴です。

男性を対象とした研究では、重度肥満に伴う低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の男性にレトロゾールを投与すると、E2が低下し、LHとテストステロンが大きく上昇しました。

つまりレトロゾールは、

「アロマターゼをかなり強く抑えたい」

場合には有力な薬剤です。

しかし、TRT中のE2管理では、この「強さ」が必ずしもメリットになるとは限りません。

E2を必要以上に抑制してしまうと、関節症状、性機能、骨代謝などに悪影響を及ぼす可能性があります。

競技によっては、筋肉の張り(パンプ)がでないことが問題になることもあります。

また、作用時間も長いため、効きすぎた場合に調整しにくいという面があります。

そのため、

「E2が少し高いから、とりあえずレトロゾール」

という使い方は合理的ではありません。

特に軽度のE2上昇では、リスクが高いです。


エキセメスタン:不可逆的にアロマターゼを阻害する独特の薬剤

エキセメスタンは、アナストロゾールやレトロゾールとは異なるステロイド性AIです。

アナストロゾールやレトロゾールが非ステロイド性であるのに対し、エキセメスタンはアロマターゼを不可逆的に阻害する、いわゆる「自殺的阻害」を起こします。

つまり、薬剤がアロマターゼに作用すると、その酵素自体が機能を失います。

エキセメスタンは血中半減期自体は比較的短い一方、酵素を不可逆的に阻害するため、血中濃度だけで作用時間を単純に判断することはできません。

若年男性を対象とした研究では、エキセメスタン25 mgを10日間投与すると、E2が約38%低下し、テストステロンが約60%上昇しました。

ただし、この研究は健康な若年男性を対象とした短期間の試験です。

TRT中の男性で、アナストロゾールやレトロゾールよりエキセメスタンが優れていることを示した臨床試験ではありません。

そのため、TRT中のE2管理においてエキセメスタンを「より優れたAI」と断定することはできません。


では、3剤をどう使い分ける?

現在のエビデンスから考えると、次のように整理するのが実際的です。

① 軽度のE2上昇なら、まずAIを使う必要があるか考える

最初に確認したいのは、

  • E2がどの程度上昇しているか

  • E2上昇に関連する症状があるか

  • テストステロンが過剰になっていないか

  • TRTの投与量・投与間隔は適切か

  • 体脂肪が多くないか

です。

E2が基準値を少し超えただけで、症状がない場合には、直ちにAIを追加する必要があるとは限りません。

男性TRTにおいて、「E2が何pg/mLを超えたらAIを開始する」という国際的に確立した基準値もありません。

実際、TRT中の男性を対象とした研究では、E2が60 pg/mLを超える場合、または40~60 pg/mLで症状がある場合にアナストロゾールを開始していましたが、これは一施設の後ろ向き研究であり、標準的な治療基準ではありません。

数値だけでなく症状を診ることが大切です。

② AIが必要なら、まずアナストロゾールが扱いやすい

TRT中のE2上昇を抑えるという目的では、現在の男性データと使用経験を考えると、アナストロゾールは比較的使いやすい選択肢です。

特に、

「TRTは継続したい」

「テストステロン値は維持したい」

「E2だけをある程度下げたい」

というケースでは、検討しやすい薬剤です。

当院ではこちらを使用しております。

③ E2がかなり高い場合には、レトロゾールを検討する余地がある

E2が明らかに高く、アロマターゼ活性を強く抑制する必要がある場合には、レトロゾールも選択肢になります。

ただし、「強力=優れている」ではありません。

E2を過剰に抑制しないよう、検査値と症状を確認しながら慎重に使用する必要があります。

④ エキセメスタンは「別タイプのAI」という位置づけ

エキセメスタンは不可逆的AIという独自の特徴があります。

そのため、アナストロゾールやレトロゾールとは薬理学的に異なる選択肢ですが、TRT中のE2管理について3剤の優劣を示す十分な比較データはありません。

「アナストロゾールが効かないからエキセメスタン」という単純な優先順位がエビデンスによって確立しているわけではありません。


AIを使いすぎることにも注意が必要

AIを使ううえで最も重要なのは、

E2を下げすぎないこと

です。

男性でもE2は重要なホルモンです。

特に骨代謝については、AIによってE2を抑制すると骨吸収が亢進する可能性があります。

また、AIを使用した男性のRCTをまとめたレビュー・メタ解析でも、テストステロンは上昇する一方、脊椎骨密度の低下が確認されています。

したがって、

「TRT+AIでテストステロンを高く、E2を低くするほど良い」

という考え方はおすすめできません。

目標は、

テストステロンとE2をどちらも生理的な範囲に近づけ、症状を改善すること

です。


TRT中のE2上昇では「AIを追加する前」が重要

実際の診療では、AIを追加する前に確認すべきことがあります。

1.テストステロン投与量が多すぎないか

TRTでテストステロンを必要以上に高くしている場合、E2も上昇しやすくなります。

その場合はAIを追加するより、まずテストステロン投与量を適正化するほうが合理的です。

2.注射によるピークが大きくないか

テストステロン注射では、投与後に血中テストステロンが大きく上昇することがあります。

E2上昇が投与後のピークと関連している場合には、投与量・投与間隔を調整することによってE2を改善できる可能性があります。

3.体脂肪が多くないか

脂肪組織にはアロマターゼが存在します。

肥満男性ではアロマターゼによるエストロゲン産生が増え、テストステロンとE2のバランスが変化することがあります。

そのため、肥満がある場合には、AIだけでE2を抑えるよりも、体脂肪を減らすことそのものが重要な治療になります。


E2の「数字」だけで治療しない

ここは非常に重要です。

E2が高いという検査結果だけで、すぐにAIを開始するとは限りません。

例えば、

  • E2が高いが症状がない

  • テストステロンも適正範囲

  • TRT開始後に一時的に上昇しているだけ

  • 投与量を調整すれば改善できそう

という場合には、経過を見る選択肢もあります。

逆に、

  • 乳房の張り・圧痛

  • 女性化乳房

  • E2高値が持続する

  • TRTによって症状が悪化した

などの場合には、AIを含めた治療を検討することがあります。

ただし、女性化乳房についても、すべての症例でAIが第一選択になるわけではありません。

ほかの女性ホルモンと合わせて評価が必要です。

E2という数字だけではなく、「なぜ高くなっているのか」と「患者さんに何が起きているのか」を見ることが大切です。


アロマターゼ阻害薬3剤のまとめ

  アナストロゾール レトロゾール エキセメスタン
分類 非ステロイド性 非ステロイド性 ステロイド性
作用 可逆的阻害 可逆的阻害 不可逆的阻害
作用の強さ 強力 非常に強力 強力
半減期 約2日 約2~4日 約1日
男性での研究 比較的多い あり あり
TRT中E2管理のデータ あり 限定的 限定的
特徴 調整しやすい 強力・長時間作用 作用機序が独特
注意点 E2過剰抑制 効きすぎに注意 不可逆的作用
実際の位置づけ 第一に検討しやすい 強い抑制が必要な場合に検討 別タイプの選択肢

※「作用の強さ」は乳がん領域の薬理学的知見を含む総合的な表現であり、男性TRTにおける3剤の直接比較試験に基づく順位ではありません。


当院からのメッセージ

TRT中にエストラジオールが上昇した場合、アロマターゼ阻害薬によってE2を低下させることができます。

しかし、

「E2は低ければ低いほど良い」わけではありません。

男性にとってもE2は重要なホルモンであり、過度に抑制すると骨代謝などに悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、TRT中にE2が上昇した場合には、

①テストステロン投与量・投与間隔を確認する
②体脂肪や生活習慣を確認する
③E2の値だけでなく症状を確認する
④必要な場合にAIを検討する
⑤AI開始後はE2を下げすぎていないか確認する

という順番で考えることが重要です。

3種類のAIにはそれぞれ特徴がありますが、男性のTRT中のE2管理について「この薬が最も優れている」と証明されたものはありません。

現在のエビデンスでは、比較的使用経験の多いアナストロゾールを調整しながら使用する方法が考えやすい一方、強いE2抑制が必要な場合にはレトロゾール、異なる作用機序を持つ選択肢としてエキセメスタンを検討する、といった使い分けが現実的です。

なお、日本で承認されているアナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンはいずれも乳がん治療が主な適応であり、TRT中の男性のE2管理を目的とした使用は承認適応ではありません。 PMDAの医薬品情報でも、これらの薬剤は乳がん治療薬として位置づけられています。

したがって、使用する場合には、男性における限られたエビデンスと副作用を踏まえた慎重な判断が必要です。

参考文献

  1. Tan RBW, Guay AT, Hellstrom WJG. Clinical Use of Aromatase Inhibitors in Adult Males. Sex Med Rev. 2014;2(2):79-90. PMID: 27784593. PubMed

  2. Awouters M, Vanderschueren D, Antonio L. Aromatase inhibitors and selective estrogen receptor modulators: Unconventional therapies for functional hypogonadism? Andrology. 2020;8(3):660-671. PMID: 31696669. DOI: 10.1111/andr.12725. PubMed

  3. Saad F, et al. Role of Aromatase Inhibitors in Managing Hypogonadism in Adult Males Related to Obesity and Aging: A Systematic Review and Meta-Analysis. [PubMed-indexed systematic review]. PMID: 39005511. PubMed

  4. Punjani N, et al. The Utilization and Impact of Aromatase Inhibitor Therapy in Men With Elevated Estradiol Levels on Testosterone Therapy. Sex Med. 2021;9(4):100378. DOI: 10.1016/j.esxm.2021.100378. PMID: 34090245. PubMed

  5. Leder BZ, et al. Effects of aromatase inhibition vs. testosterone in older men with low testosterone: randomized-controlled trial. PMID: 26588809. PubMed

  6. Leder BZ, et al. The effect of aromatase inhibition on sex steroids, gonadotropins, and markers of bone turnover in older men. J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(6):286? PMID: 11397902. DOI: 10.1210/jcem.86.6.7541. PubMed

  7. Mauras N, et al. Pharmacokinetics and dose finding of a potent aromatase inhibitor, aromasin (exemestane), in young males. J Clin Endocrinol Metab. 2003. PMID: 14671195. PubMed

  8. de Boer H, Verschoor L, Ruinemans-Koerts J, Jansen M. Letrozole normalizes serum testosterone in severely obese men with hypogonadotropic hypogonadism. Clin Endocrinol (Oxf). 2005. PMID: 15811136. PubMed

  9. Finkelstein JS, et al. Gonadal Steroids and Body Composition, Strength, and Sexual Function in Men. N Engl J Med. 2013;369:1011-1022. PMID: 24024838. PubMed

  10. PMDA. アリミデックス錠1mg(アナストロゾール)医療用医薬品情報。PMDA 医療用医薬品情報

  11. PMDA. フェマーラ錠2.5mg(レトロゾール)医療用医薬品情報。PMDA 医療用医薬品情報

テストステロン・男性更年期のご相談は、大手町の男性更年期外来へ

疲れ・意欲低下・性欲低下などが続く方は、まずAMSセルフチェックで症状の程度を確認できます。当院は総合内科をベースに、保険診療を基本とした男性更年期外来を行っています(大手町駅C2b出口直結・徒歩1分)。

LINEで予約 電話 03-5224-6672

電話 03-5224-6672 LINEで予約