甲状腺炎(亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎・急性化膿性甲状腺炎)|症状・原因・検査・治療
前頸部の痛みや発熱、あるいは急な動悸・体重減少——甲状腺の炎症(甲状腺炎)でも、バセドウ病とよく似た症状が起こります。大手町の内科・総合内科専門医が、原因の見分け方と治療を解説します。
甲状腺炎とは
甲状腺炎は、甲状腺に炎症が起こる病気の総称です。炎症で甲状腺の組織が壊れると、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に一気に漏れ出し、動悸・発汗・体重減少などの甲状腺中毒症状が一時的に現れます。その後、ホルモンが枯渇して一過性の機能低下を経て、多くは数か月で正常に戻ります。
バセドウ病のように甲状腺がホルモンを「作りすぎている」わけではなく、あくまで炎症による「漏れ出し」である点が大きく異なります。原因や治療法もまったく違うため、見分けが重要です。
3つのタイプ
亜急性甲状腺炎
ウイルス感染の後に起こり、前頸部の強い痛み(耳や顎に放散し、飲み込みで悪化)と発熱を伴います。中年女性にやや多くみられます。
無痛性甲状腺炎
痛みがなく、動悸・体重減少などの中毒症状だけが現れます。出産後や、橋本病の素因がある方に起こりやすいタイプです。
急性化膿性甲状腺炎
細菌感染により甲状腺に膿がたまる、まれなタイプです。頸部の強い発赤・腫れ・高熱を伴い、すみやかな治療が必要です。
主な症状
- 甲状腺中毒期:動悸・頻脈、汗が多い・暑がり、手のふるえ、体重減少、イライラ・不眠、疲れやすさ
- 亜急性甲状腺炎:上記に加えて、前頸部の痛み・圧痛、発熱、倦怠感(風邪の後に出やすい)
- 回復期:一過性に、寒がり・むくみ・便秘など甲状腺機能低下の症状が出ることがあります
原因
亜急性甲状腺炎は、かぜなどのウイルス感染が引き金になると考えられていますが、特定のウイルスは分かっていません(特定の体質との関連が知られています)。無痛性甲状腺炎は自己免疫が関与し、出産後などに起こります。急性化膿性甲状腺炎は細菌感染によるもので、頻度はまれです。
検査・診断(バセドウ病との見分け)
血液検査では、甲状腺中毒期にFT4・FT3が高くTSHが低下します。亜急性甲状腺炎ではCRP・赤沈(炎症反応)やサイログロブリンが上昇します。
バセドウ病との見分けには、次を用います。
| 項目 | 甲状腺炎(亜急性・無痛性) | バセドウ病 |
|---|---|---|
| 前頸部の痛み | 亜急性ではあり/無痛性はなし | なし |
| 経過 | 一過性(多くは数か月で回復) | 治療しないと持続 |
| TRAb(TSH受容体抗体) | 陰性 | 陽性 |
| 甲状腺エコー | 炎症部位の低エコー・血流低下 | びまん性腫大・血流増加 |
| 放射性ヨウ素摂取率 | 低下 | 上昇 |
当院では血液検査・甲状腺エコー・心電図で評価し、診断の見当をつけます。放射性ヨウ素検査が必要な場合や、鑑別が難しい場合、妊娠中の方は甲状腺専門医療機関へご紹介します。
治療
亜急性甲状腺炎:軽症は消炎鎮痛薬、痛みや炎症が強い場合はステロイド(プレドニゾロン)を数週間かけて減量しながら使用します。動悸にはβ遮断薬で対症療法を行います。抗甲状腺薬は効きません。
無痛性甲状腺炎:多くは経過観察と、動悸に対するβ遮断薬で対応します。
いずれも回復期に一過性の機能低下がみられることがあり、症状が強い・長引く場合は甲状腺ホルモン薬を一時的に補います。急性化膿性甲状腺炎は抗菌薬・排膿が必要で、専門施設での治療になります。院外処方箋をお渡しします。
※亜急性甲状腺炎は再燃することがあり、無痛性甲状腺炎は再発や、一部で永続的な甲状腺機能低下に移行することがあるため、血液検査での経過観察が大切です。
受診の目安・当院での対応
前頸部の痛みと発熱、原因のはっきりしない動悸・体重減少・発汗が続く場合は、内科で甲状腺を含めた血液検査を受けてください。当院で亜急性・無痛性甲状腺炎の診断・治療・経過観察に対応します。頸部の強い発赤・腫れと高熱(急性化膿性甲状腺炎の疑い)、診断が困難な場合、妊娠中、重症例は専門医療機関へご紹介します。
よくある質問
Q. バセドウ病との違いは何ですか?
A. 甲状腺炎は炎症でホルモンが一時的に漏れ出す病気で、多くは数か月で自然に回復します。バセドウ病は甲状腺がホルモンを作り続ける病気で、治療しないと症状が持続します。血液検査(TRAb)やエコーで見分けます。
Q. 自然に治りますか?
A. 亜急性・無痛性甲状腺炎の多くは、数か月の経過で自然に軽快します。ただし途中で一過性の機能低下が出たり、再発・機能低下への移行がみられることがあるため、血液検査でのフォローをおすすめします。
Q. 抗甲状腺薬は使いますか?
A. 甲状腺炎による甲状腺中毒症には抗甲状腺薬は無効です。動悸などの症状にβ遮断薬、炎症・痛みに消炎鎮痛薬やステロイドを用います。
関連ページ
このページについて
- 監修医:院長 片山泰輔(日本内科学会総合内科専門医/日本腎臓学会腎臓内科専門医)
- 所属:リーレクリニック大手町
- 更新日:2026年9月8日
- 関連情報:大手町の内科(一般内科)