大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック
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バターかマーガリンか|トランス脂肪酸と飽和脂肪酸を医師が解説

バターかマーガリンか|トランス脂肪酸と飽和脂肪酸を医師が解説

「マーガリンは工業的に作られていてトランス脂肪酸が入っているから体に悪い」「トランス脂肪酸は食べるプラスチック」——このような話をよく目にします。その流れで「マーガリンをやめてバターに」と考える方も少なくありません。一方でバターは動物性脂肪(飽和脂肪酸)が多く、こちらも動脈硬化を進めるとされています。

では、バターとマーガリン、どちらが健康への影響が大きいのでしょうか?コレステロールや心血管疾患のデータをもとに、内科医の視点で整理します。

トランス脂肪酸とは

脂肪酸には、二重結合を持たない飽和脂肪酸と、二重結合を持つ不飽和脂肪酸があります。不飽和脂肪酸のうち、二重結合部分の構造の違いで「シス型」と「トランス型」に分かれます。

シス型脂肪酸

  • 天然に多く存在する
  • 一般的な植物油・魚油など

トランス型脂肪酸

  • 工業的に加工された油脂に多い(部分水素添加油など)
  • 不飽和脂肪酸なのに、体への影響は飽和脂肪酸に近い

通常、不飽和脂肪酸はLDLコレステロールを下げ、飽和脂肪酸は上げます。ところがトランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸でありながらLDLコレステロールを上げ、さらにHDLコレステロール(善玉)を下げるという、より不利な影響を与えます。そのためトランス脂肪酸は脂質異常症や動脈硬化のリスクを高めるとされ、体に良くないという点は事実です。

トランス脂肪酸と飽和脂肪酸、どちらが問題か

ここで大切なのは、「体に悪いかどうか」だけでなく、1回あたりの影響の大きさ普段の摂取量の両方で考えることです。

研究では、コレステロール(LDL/HDL比)への悪影響は、トランス脂肪酸のほうが同じ量の飽和脂肪酸のおよそ2倍という試算があります。おおまかには、トランス脂肪酸3gと飽和脂肪酸7gが、同じくらいコレステロール値を悪化させるイメージです。

一方で、日本人の摂取量には大きな差があります。

日本人の1日あたりの平均摂取量。トランス脂肪酸は約0.9g、飽和脂肪酸は約19gで、飽和脂肪酸のほうが20倍以上多い。
日本人のトランス脂肪酸の摂取量は諸外国と比べても少なく、飽和脂肪酸のほうが20倍以上多く摂取されています。もともと0.9g程度のトランス脂肪酸を1g減らすことはほぼ不可能ですが、19g摂っている飽和脂肪酸を2g減らすことは比較的容易です。
  トランス脂肪酸 飽和脂肪酸
日本人の1日摂取量(平均) 約0.9g 約19g
コレステロールへの影響(同量あたり) 大きい(飽和の約2倍) 中くらい
現実的に減らしやすいか もともと少なく、減らす余地が小さい 摂取量が多く、減らす余地が大きい

実際の影響より恐怖感からリスクを大きく見積もり、かえって不利な選択をしてしまうことをドレッド・リスク効果といいます(同時多発テロ後に飛行機を避けて車移動が増え、交通事故死が増えた例が有名です)。カタカナの語感や報道の仕方が、トランス脂肪酸のリスクを実際以上に大きく感じさせている面があります。

日本人の食生活では、まず取り組むべきは飽和脂肪酸を減らすことだと考えられます。

バターとマーガリンの比較

バター

  • 飽和脂肪酸が100gあたり50g前後(商品による)
  • コクがあり風味がよい

マーガリン

  • トランス脂肪酸が100gあたり4〜10g(商品による)
  • 近年はトランス脂肪酸が非常に少ない(0.2〜0.3%)製品も増えている

パンに同じ量を塗って比べた場合、バターのほうがコレステロール値を悪化させ、心血管イベントのリスクも高まります。含まれる脂肪酸の「影響の大きさ×量」で見ると、バターの飽和脂肪酸のほうが影響が大きいためです。

なお、食パン・菓子パン・ケーキ・クロワッサンなどには大量のバターが使われています。脂質異常症のある方に、主食としてパンより米(できれば玄米)やそばをおすすめするのは、パンに含まれるバター(飽和脂肪酸)を減らす意味もあります。

「マーガリンよりバター」は正しいのか

ここまではコレステロール値という代用マーカー(サロゲートマーカー)で見てきました。これは、実際に病気や死亡を長期間追跡すると結論までに時間がかかりすぎるため、医学でよく使われる手法です。

では、実際の死亡率ではどうでしょうか。飽和脂肪酸の摂取が多く心筋梗塞の多かったフィンランド(北カレリア地方)では、1970年代から地域ぐるみでバターをやわらかい植物性脂肪(マーガリン)に、牛乳を低脂肪乳に置き換えるなどの取り組みを行い、血中コレステロールと冠動脈疾患による死亡率が大きく低下しました。国レベルの生活習慣の変更が心血管疾患の予防につながった代表例として知られています。

脂質異常症に有効な食事療法

脂質異常症の食事療法で大切なのは、単品の善し悪しよりも「何を減らし、何に置き換えるか」という全体の組み立てです。脂質異常症のページともあわせてご覧ください。

減らす:飽和脂肪酸

  • 肉の脂身・鶏皮・ラード・バター・生クリーム
  • 脂の多い加工肉(ベーコン・ソーセージ)
  • 洋菓子・菓子パン・クロワッサン

置き換える:不飽和脂肪酸

  • オリーブオイル・なたね油
  • 青魚(さば・いわし・さんま)のEPA・DHA
  • ナッツ・アボカド

増やす:食物繊維・大豆

  • 野菜・海藻・きのこ
  • 大麦・オートミール・全粒穀物(水溶性食物繊維がLDLを下げる)
  • 豆類・大豆製品(豆腐・納豆)

中性脂肪が高い方は

  • 糖質・甘い飲料・お菓子を控える
  • アルコールを減らす
  • 果物のとりすぎに注意

食事パターンとしては、地中海食・DASH食・日本食(The Japan Diet:魚・大豆・野菜・海藻・きのこを中心に、動物性脂肪と塩分を控える)が、LDL低下や心血管疾患の予防に有効とされています。主食は精製された白いパンより、米(できれば玄米)・そば・全粒穀物がすすめられます。卵などの食事由来コレステロールの影響には個人差があるため、まずは飽和脂肪酸を減らすことを優先します。

まとめ

  • トランス脂肪酸も飽和脂肪酸も、摂りすぎればコレステロールを悪化させる
  • ただし日本人の摂取量は、飽和脂肪酸が圧倒的に多い
  • 同じ量を塗るなら、マーガリンよりバターのほうがコレステロールへの影響は大きい
  • 「マーガリンをやめてバターに」はドレッド・リスク効果による、かえって不利な選択になりうる
  • 最も有効なのは、バターでもマーガリンでもなくオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸に置き換えること

とはいえ、バターの風味は魅力的です。神経質になりすぎず、量とバランスを意識して楽しむのがよいと思います。健康診断でコレステロールや中性脂肪を指摘された方は、脂質異常症のページもご覧ください。

参考文献

テストステロン・男性更年期のご相談は、大手町の男性更年期外来へ

疲れ・意欲低下・性欲低下などが続く方は、まずAMSセルフチェックで症状の程度を確認できます。当院は総合内科をベースに、保険診療を基本とした男性更年期外来を行っています(大手町駅C2b出口直結・徒歩1分)。

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