プロテインは腎臓に悪いは本当?|よくある誤解をエビデンスで解説
「プロテインを飲むと腎臓が悪くなる」と言われたことはありませんか?
筋トレやダイエットを始めると、
「プロテインは腎臓に悪い」
「飲みすぎると腎不全になる」
という話を聞くことがあります。
しかし結論から言うと、
腎機能が正常な人において、プロテイン摂取が腎臓を傷めることを示す強いエビデンスはありません。
この誤解は長年繰り返されていますが、実際には検査値の解釈や腎臓の生理学が十分に理解されていないことから生じているケースが少なくありません。
そもそもプロテインは「薬」ではない
まず大前提として、プロテインは特別な薬ではありません。
プロテインパウダーの正体は、
- 牛乳由来(ホエイ・カゼイン)
- 大豆由来(ソイ)
- エンドウ豆由来(ピープロテイン)
などのタンパク質を効率よく摂取するための食品です。
極端な話をすれば、
- 鶏むね肉
- 卵
- 魚
- 牛肉
を食べるのと本質的には同じです。
プロテインだけが特別に腎臓へ毒性を持つわけではありません。
「タンパク質を摂るとBUNが上がる」は事実
プロテインを飲むと、
健康診断で
- BUN(尿素窒素)
が上昇することがあります。
これは異常ではありません。
タンパク質は体内で代謝されると窒素を含む老廃物を生じ、その最終産物として尿素が作られます。
つまり、
タンパク質摂取量が増えればBUNが上がるのは生理的な反応です。
BUNが上がったからといって腎機能障害とは限りません。
実際には、
- 高タンパク食
- 脱水
- 激しい運動
でも上昇します。
GFRやeGFRが保たれているかが重要
腎機能を評価する際に重要なのは、
- eGFR
- 尿蛋白
- 尿アルブミン
などです。
健康な成人を対象とした28試験・1,358人を解析したメタアナリシスでは、高タンパク食群と通常タンパク食群で腎機能低下に有意差は認められませんでした。著者らは「高タンパク摂取は健康成人の腎機能に有害な影響を与えない」と結論づけています。
つまり、
BUNが少し高いことと、腎臓が壊れていることは全く別の話なのです。
クレアチンでクレアチニンが上がるのも同じ誤解
筋トレをしている方では、
- クレアチン
- クレアチニンサプリ
を摂取していることがあります。
すると血液検査で
- クレアチニン
が上昇することがあります。
これを見て、
「腎機能が悪化した」
と誤解されることがあります。
しかしクレアチンは体内でクレアチニンへ変換されるため、サプリメント摂取によって血中クレアチニンが上昇するのはある意味当然です。
健康な人を対象とした研究では、通常量のクレアチン摂取によって腎障害が増加することは確認されていません。
筋肉量が多い人やクレアチンを摂取している人では、クレアチニン単独で判断せず、
- シスタチンC
- 尿アルブミン
- 経時的変化
なども含めて評価することが重要です。
腎臓はタンパク質を処理するためにできている
高タンパク食を摂取すると腎臓の血流量や糸球体濾過量(GFR)は一時的に増加します。
これを「糸球体過剰濾過」と呼びます。
この現象だけを見ると、
「腎臓に負担がかかっている」
ように見えるかもしれません。
しかし健康な腎臓においては、これは正常な適応反応です。
運動すると心拍数が上がるからといって心臓病とは言わないのと同じで、タンパク質摂取後にGFRが増えること自体は病気ではありません。
糖尿病性腎症でも最初からタンパク質制限するわけではない
「腎臓病ならタンパク質を減らさなければいけない」
と思われがちですが、現在のガイドラインはそれほど単純ではありません。
KDIGO 2024ガイドラインでは、
CKDステージG3〜G5でタンパク質摂取量0.8g/kg/日程度を推奨
しています。
また、ADA(米国糖尿病学会)2026でも、
CKDステージG3以上では0.8g/kg/日程度を推奨
しています。
つまり、
健康な人に対してタンパク質制限を勧めているわけではなく、
ある程度進行した慢性腎臓病(CKD G3以降)で初めてタンパク質摂取量が議論される
のです。
筋トレしている人はむしろタンパク質不足に注意
筋肉量維持や増加を目的とする場合、
1日あたり
- 1.2〜1.6g/kg
- 場合によっては2.0g/kg前後
のタンパク質摂取が推奨されることがあります。
筋トレをしているにもかかわらず、
「腎臓が心配だからプロテインをやめました」
という方の方が、むしろ筋肉量低下や代謝低下のリスクが高くなる可能性があります。
こんな人は医師へ相談を
一方で、以下の場合は注意が必要です。
- 既に慢性腎臓病がある
- 尿蛋白を指摘されている
- 糖尿病性腎症が進行している
- eGFR低下がある
- 腎炎の既往がある
このような方ではタンパク質摂取量について主治医と相談することをおすすめします。
当院の腎臓内科の診療についてはこちらをご覧ください。
まとめ
「プロテインは腎臓に悪い」という話は、現在のエビデンスでは健康な人に対して支持されていません。
プロテインは単なるタンパク質食品であり、
- BUN上昇
- クレアチニン上昇
が見られても、それだけで腎障害を意味するわけではありません。
実際には、
- eGFR
- 尿蛋白
- 尿アルブミン
などを総合的に評価することが重要です。
腎機能が正常な方であれば、適切なタンパク質摂取やプロテイン利用を過度に恐れる必要はありません。
むしろ筋肉量の維持、代謝改善、健康寿命の延伸という観点からは、十分なタンパク質摂取の方が重要な場合も少なくないのです。
参考文献
- KDIGO. “2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease.” KDIGO Guidelines
- American Diabetes Association. “Standards of Care in Diabetes—2026.”(糖尿病性腎症における蛋白摂取の考え方) Diabetes Care. 2026. ADA Standards of Care
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