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MK-677(イブタモレン)とは?|期待される効果と現時点のエビデンス、安全性を解説

MK-677(イブタモレン)とは?|期待される効果と現時点のエビデンス、安全性を解説

「飲む成長ホルモン」は本当に存在する?

近年、アンチエイジングやボディメイク、スポーツ分野で注目されている物質の一つがMK-677(イブタモレン:Ibutamoren)です。

SNSなどでは、

  • 筋肉がつく
  • 脂肪が減る
  • 睡眠が深くなる
  • 若返る
  • 成長ホルモンが増える

といった情報を目にすることがあります。

一方で、MK-677は現在、日本でも米国でも医薬品として承認されている薬ではありません。

では、実際にはどこまで分かっているのでしょうか。

今回は、期待される効果・分かっていること・分かっていないことをエビデンスに基づいて整理します。


MK-677(イブタモレン)とは?

MK-677(イブタモレン)は、

グレリン受容体(Growth Hormone Secretagogue Receptor:GHS-R)を刺激する経口薬です。

グレリンは「空腹ホルモン」として知られていますが、

同時に

  • 成長ホルモン(GH)
  • IGF-1(インスリン様成長因子)

の分泌も促進します。

MK-677はこの仕組みを利用して、

自分自身の成長ホルモン分泌を増やす薬として開発されました。

つまり、

外から成長ホルモンを注射する薬ではありません。


最も確立している作用は「GH・IGF-1を増やすこと」

これはヒト試験でも一貫しています。

25mg/日のMK-677を投与すると、

  • 成長ホルモン
  • IGF-1

は有意に上昇します。

この作用は2年間の試験でも維持されていました。

つまり、

「GH・IGF-1を増やす」という点については比較的確かなエビデンスがあります。


筋肉は増える?

これも比較的期待されている効果です。

肥満男性を対象としたランダム化比較試験では、

約8週間で

除脂肪体重(Fat Free Mass)が約3kg増加

しました。

また高齢者でも、

  • 除脂肪体重
  • 四肢筋肉量

は改善しています。

ただし重要なのは、

筋力はそれほど改善していません。

つまり、

筋肉量が増えても、

そのまま運動能力向上につながるとは限らないことが分かっています。


脂肪は減る?

ここはSNSで誤解が多いポイントです。

実際の臨床試験では、

内臓脂肪や体脂肪率はほとんど改善していません。

むしろ、

体重が増える例もあります。

これは、

筋肉量増加に加えて、

食欲増進による摂取カロリー増加が影響している可能性があります。

したがって、

「MK-677だけで痩せる薬」ではありません。


睡眠への効果

GH分泌は深い睡眠と密接に関係しています。

MK-677では、

深睡眠(Slow-wave sleep)が増えたという研究があります。

睡眠の質改善を目的とした研究も進められていますが、

症状改善まで証明されたわけではありません。


アンチエイジング効果は?

理論的には、

GH・IGF-1増加により

  • 筋肉量維持
  • 骨量維持
  • 身体機能維持

などが期待されています。

しかし、

現在までの臨床試験では

寿命が延びる

老化が遅くなる

ことは証明されていません。


アルツハイマー病にも研究された

IGF-1には神経保護作用が期待されていたため、

563人を対象とした大規模RCTも実施されました。

しかし、

アルツハイマー病の進行を遅らせる効果は認められませんでした。

これは、

「バイオマーカーが改善しても、実際の症状改善につながるとは限らない」

ことを示す代表的な例です。


副作用として最も注意されること

① 食欲増加

最もよく見られる副作用です。

グレリン受容体を刺激するため、空腹感が強くなる人が少なくありません。


② 血糖値の上昇

現在最も注意されている副作用です。

GHやIGF-1が増えることで、インスリン抵抗性が悪化し、

  • 空腹時血糖
  • HbA1c

が上昇することがあります。

糖尿病や糖尿病予備群では特に注意が必要です。


③ むくみ

GH作用により、

  • 浮腫
  • 手足の張り

などがみられることがあります。


④ 長期安全性は不明

2年程度までの試験はありますが、5年、10年といった長期データはありません。

特に、

  • がん
  • 心血管イベント
  • 長期死亡率

への影響は分かっていません。


投与量は?

臨床試験で最も多く使用されているのは25mg/日です。

一方、ボディビル分野では10〜25mg程度が使用されることが多いです。

しかしこれは経験的な使用であり、最適用量が確立されているわけではありません。

目的別の推奨用量を示したガイドラインも存在しません。


現時点での位置づけ

MK-677はヒト試験が比較的多いペプチド関連薬の一つです。

しかし、期待された

  • 肥満
  • 股関節骨折
  • アルツハイマー病

などでは主要評価項目を達成できず、現在まで医薬品として承認されていません。

つまり、「成長ホルモンは増える」ことは確かですが、「病気を改善する薬」としては十分な証拠が得られていないというのが現在の評価です。


個人輸入・研究用製品にも注意

現在流通しているMK-677製品の多くは、未承認製品や研究用試薬です。

海外では、表示と異なる成分(アナボリックステロイド)が混入していた事例も報告されています。

品質管理が保証されていない製品もあるため、個人輸入には十分注意が必要です。


まとめ

MK-677(イブタモレン)は、経口で成長ホルモン・IGF-1分泌を促進する成長ホルモン分泌促進薬(Growth Hormone Secretagogue)です。

ヒト試験では、

  • GH・IGF-1の増加
  • 除脂肪体重の増加
  • 深睡眠の改善

などは比較的再現性のある結果が得られています。

一方で、

  • 筋力向上
  • 減量
  • アンチエイジング
  • パフォーマンス向上

については、現時点で十分なエビデンスはありません。

また、

  • 血糖値上昇
  • 食欲増加
  • むくみ

などの副作用が報告されており、長期安全性も十分には分かっていません。

そのため現時点では、「将来性はあるものの、まだ標準治療として推奨できる段階ではない研究段階の薬剤」と理解するのが最も適切です。


参考文献

  1. Sigalos JT, Pastuszak AW. The Safety and Efficacy of Growth Hormone Secretagogues. Sex Med Rev. 2018.
  2. Nass R, et al. Effects of an Oral Ghrelin Mimetic (MK-677) on Body Composition and Clinical Outcomes in Healthy Older Adults. Ann Intern Med. 2008.
  3. Svensson J, et al. MK-677 Increases Growth Hormone and Fat-Free Mass in Obese Men: A Randomized Controlled Trial. J Clin Endocrinol Metab. 1998.
  4. Sevigny JJ, et al. Growth Hormone Secretagogue MK-677: No Clinical Effect on Alzheimer’s Disease Progression in a Randomized Trial. Neurology. 2008.
  5. Pastuszak AW, et al. Beyond the Androgen Receptor: The Role of Growth Hormone Secretagogues in the Modern Management of Body Composition in Hypogonadal Males. Transl Androl Urol. 2020.
  6. U.S. Food and Drug Administration. FDA Briefing Document: Ibutamoren Mesylate. 2024/2025.
  7. Therapeutic Goods Administration (Australia). Unapproved Ibutamoren (MK-677) Capsules Found to Contain Undeclared Anabolic Steroid. 2026.
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