がん患者にテストステロン補充療法(TRT)はできる?がんの種類・病期・治療状況別に考える現実的な判断基準
「がんと診断されたことがある人に、テストステロン補充療法(TRT)は行えるのでしょうか?」
男性更年期障害やLOH症候群の診療では、がんの既往がある方や、がん治療後にテストステロン低下を来した方から、このような相談を受けることがあります。
がん患者に対するTRTは、一律に「すべて禁忌」とすることも、「前立腺癌以外なら安全」とすることも適切ではありません。
判断に重要なのは、次の4点です。
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がんの種類と、ホルモン依存性の有無
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がんが現在活動性を持つか、治療後に寛解・制御されているか
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TRTによる症状改善が期待できるか
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TRTを行った場合の腫瘍学的安全性について、どの程度のエビデンスがあるか
本記事では、がんの状態別にエビデンスを整理し、実際の診療でどのように判断するのが現実的かを解説します。
1.まず結論:がんの種類と状態によって判断する
| がんの状態 | TRTの基本方針 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 前立腺癌が活動性を持つ・進行癌・転移癌 | 原則として行わない | アンドロゲン依存性と腫瘍進行の懸念 |
| 前立腺癌の監視療法中 | 原則慎重。例外的に専門医と検討 | 低リスク癌でも安全性は確立していない |
| 前立腺癌の根治治療後 | 条件付きで検討可能 | PSA、病理、再発リスク、治療後経過 |
| 男性乳癌 | 原則として行わない | ホルモン感受性を含めた腫瘍学的懸念 |
| その他の固形癌 | 一律禁忌ではない | がんの活動性、治療内容、予後、症状 |
| 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫 | 個別判断 | 治療による性腺機能低下、血栓・血算など |
| 精巣癌の治療後 | 条件付きで検討可能 | 性腺機能低下の確認、再発状況、妊孕性 |
| がん治療が終了し、長期寛解中 | がん種ごとに検討 | 根治性、再発リスク、残存病変の有無 |
| 進行癌・終末期 | 症状緩和目的で個別検討 | 予後、期待できる効果、治療負担 |
これは診療の出発点となる整理であり、すべての患者にそのまま適用できる確立した基準ではありません。特に前立腺癌の治療後や監視療法中については、ガイドラインの慎重な姿勢と、近年の観察研究から得られた比較的良好な結果を区別して考える必要があります。
2.前立腺癌:最も慎重な判断が必要
活動性の前立腺癌・進行癌・転移癌
活動性の前立腺癌がある場合、TRTは原則として避けます。
前立腺癌の一部はアンドロゲン受容体を介したシグナルに依存して増殖します。実際に、進行前立腺癌ではアンドロゲン除去療法(ADT)によってテストステロンを低下させ、腫瘍の制御を図ります。
このため、活動性の癌に外因性テストステロンを投与することは、腫瘍制御の観点から慎重であるべきです。
特に、以下の患者では通常、TRTを開始しません。
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転移性前立腺癌
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生化学的再発や画像上の進行が疑われる患者
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ADTなどのホルモン療法を受けている患者
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腫瘍の制御状況が不明な患者
ADTによって低テストステロン血症が生じていても、それ自体を理由にTRTを行うことはできません。ここでは、テストステロン低下が治療の副作用であると同時に、抗腫瘍治療の目的でもあるためです。
監視療法中の低リスク前立腺癌
前立腺癌の監視療法(active surveillance)中に、症候性の低テストステロン血症が見つかった場合は、さらに難しい判断になります。
従来、前立腺癌が存在する患者へのTRTは避けるべきとされてきました。一方、近年では、選択された低リスク患者においてTRTが癌の進行を明らかに増加させるという結果は、必ずしも示されていません。
2026年に公表されたシステマティックレビューでは、監視療法中にTRTを受けた295人を含む7件の観察研究が検討されました。追跡期間はおおむね2.3~6.1年で、TRT群に転移や前立腺癌特異的死亡は報告されませんでした。ただし、研究はすべて観察研究であり、患者選択の偏り、症例数、追跡期間などに限界があります。
したがって、現時点で「監視療法中でもTRTは安全」と一般化することはできません。
現実的な判断: 原則として開始を見合わせます。症状が強く、低リスク癌であることが十分確認され、患者が利益と不確実性を理解している場合には、泌尿器科・前立腺癌担当医との共同判断のもとで、例外的に検討する余地があります。
前立腺癌の根治治療後
根治的前立腺全摘除術や放射線治療を受け、癌が制御されている患者では、活動性の癌がある場合とは異なり、TRTを個別に検討できる場合があります。
ただし、「手術が終わった」「放射線治療が終わった」という事実だけでは判断できません。
確認すべき事項は以下のとおりです。
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根治治療の内容と治療からの経過期間
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術後PSAが検出限界以下で安定しているか、放射線治療後のPSAが安定しているか
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病理学的悪性度、病期、切除断端などの再発リスク
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生化学的再発や転移を疑う所見がないか
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低テストステロン血症の症状と検査所見が明確か
根治治療後の患者を対象とした研究では、適切に選択された患者において、TRTによる再発増加が明確には示されていません。しかし、エビデンスの中心は観察研究であり、再発リスクが高い患者や長期的な安全性については不確実性が残ります。
現実的な判断: 低リスクで、治療後のPSAが安定し、腫瘍学的に問題がないと担当医が判断した患者では、泌尿器科と相談してTRTを検討できます。再発リスクが高い患者、PSAが上昇している患者、追加治療が必要な患者では、開始を見合わせるのが妥当です。
3.男性乳癌:原則としてTRTを避ける
男性乳癌では、TRTは原則として行わない方針が妥当です。
男性乳癌の多くはエストロゲン受容体陽性であり、テストステロンが体内でエストラジオールに変換されることも考慮する必要があります。
ただし、TRTが男性乳癌の再発をどの程度増加させるかについて、直接的な比較試験はほとんどありません。ここで重要なのは、危険性が精密に定量化されているというより、腫瘍のホルモン感受性と安全性データの不足から、リスクを許容しにくいという点です。
現実的な判断: 活動性の男性乳癌はもちろん、治療後の患者でも、通常はTRTを避けます。例外的な検討が必要な場合も、乳腺外科・腫瘍内科などの担当医と相談し、利益と不確実性を十分に評価する必要があります。
4.前立腺癌・乳癌以外の固形癌
肺癌、大腸癌、胃癌、腎癌、肝癌など、前立腺癌や男性乳癌以外の固形癌については、がんの既往だけを理由にTRTを一律に禁忌とする根拠はありません。
ただし、「一律禁忌ではない」ことと「安全性が証明されている」ことは別です。
がん患者における低テストステロン血症は、腫瘍そのもの、全身性炎症、栄養状態の悪化、化学療法、放射線治療、手術など、複数の要因によって生じます。抗癌薬による性腺機能低下についてのシステマティックレビューでは、プラチナ製剤、代謝拮抗薬、タキサン系薬剤などとの関連が報告されています。また、免疫チェックポイント阻害薬では、下垂体炎や精巣炎などによって性腺機能に影響が及ぶことがあります。
一方、活動性の癌を有する患者にTRTを投与した場合の、腫瘍進行や生存期間への影響を十分に評価できる大規模試験は限られています。
現実的な判断:
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根治治療後で再発リスクが低く、症候性の性腺機能低下症が明確な場合:検討可能
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活動性の癌があるが病勢が安定している場合:症状、予後、治療内容を踏まえて腫瘍担当医と個別判断
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急速に進行する癌、全身状態が不安定な場合:まず原疾患・栄養状態・全身症状の評価を優先
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腫瘍の種類やホルモン感受性が不明な場合:確認が済むまで開始を見合わせる
TRTを検討する理由も重要です。性欲低下や勃起機能の低下、反復して確認された低テストステロン血症などがある場合と、単に疲労感や筋肉量低下だけがある場合では、治療による利益の見込みが異なります。
5.血液悪性腫瘍:治療後の性腺機能低下に注意
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などでも、病気や治療によって性腺機能低下症が生じることがあります。
原因には、全身性炎症、化学療法、造血幹細胞移植に伴う前処置、精巣への放射線照射などが含まれます。
2024年のスコーピングレビューでは、血液悪性腫瘍と男性の性腺機能低下症との関連が検討され、病気そのものに加えて、性腺毒性のある治療が重要な要因と考えられました。
ただし、血液悪性腫瘍の患者に対するTRTの安全性や有効性を直接評価した研究は限られています。がん種ごとに治療法や再発リスクが異なるため、一括して安全と判断することはできません。
現実的な判断: 寛解状態が安定し、症候性の低テストステロン血症が確認された患者では、血液内科と相談してTRTを検討できます。活動性の病気がある場合や、治療中で全身状態が変動している場合には、治療の優先順位と安全性を個別に判断します。
また、血液悪性腫瘍では、貧血、血栓症リスク、血球数の異常、移植後合併症などにも注意が必要です。TRTを開始する場合は、テストステロン値だけでなく、血算や基礎疾患の状態も確認します。
6.精巣癌の治療後
精巣癌では、片側または両側の精巣摘除術、化学療法、放射線治療などによって、テストステロン産生が低下することがあります。
特に両側精巣摘除後や、治療後に明確な性腺機能低下症が残っている患者では、TRTを検討する医学的理由があります。
ただし、精巣癌の治療歴があることだけでTRTの適応が決まるわけではありません。
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再発や残存病変がないか
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朝のテストステロン値が繰り返し低値か
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LH・FSHなどから原発性・続発性を評価できるか
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妊孕性を希望しているか
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治療に伴う長期合併症がないか
を確認します。
現実的な判断: 癌が制御され、症候性の低テストステロン血症が確認されていれば、TRTは選択肢になります。ただし、妊孕性を希望する場合、外因性テストステロンは精子形成を抑制するため、治療開始前に生殖医療の観点から相談することが重要です。
7.進行癌・終末期ではどう考えるか
進行癌や終末期の患者では、TRTの判断に別の視点が必要です。
低テストステロン血症は、倦怠感、筋力低下、性欲低下、貧血、体組成の変化などに関与する可能性があります。しかし、これらの症状は癌そのもの、炎症、低栄養、睡眠障害、薬剤などでも生じます。
TRTによって、がん患者の倦怠感や筋肉量低下、生活の質がどの程度改善するかについては、研究が限られています。進行癌の患者全般に対して、TRTが生存期間を延長する、あるいは癌悪液質を改善するといった効果は確立していません。
したがって、単にテストステロン値が低いという理由で開始するのではなく、以下を考慮します。
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低テストステロン血症による症状が明確か
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予想される効果が得られるまでの期間
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予後と治療負担
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血栓症や赤血球増加などのリスク
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本人が何を改善したいと考えているか
現実的な判断: 症状緩和の一環として検討する場合はありますが、がん種、病勢、予後、期待できる効果を踏まえ、腫瘍担当医と相談して決定します。
8.TRTを検討する前に、低テストステロン血症を正確に診断する
がん患者では、疲労感、意欲低下、性欲低下、筋肉量低下などが、癌や治療の影響と重なります。そのため、症状だけでLOH症候群と診断することはできません。
TRTを検討する際には、次の項目を確認します。
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性欲低下、勃起機能低下、朝立ちの減少など、テストステロン低下を示唆する症状があるか
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朝の採血でテストステロン低値が繰り返し確認されるか
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LH・FSHなどから、原発性か続発性かを評価できるか
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低栄養、急性疾患、睡眠不足、薬剤など、可逆的な要因がないか
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がんの種類、病期、治療状況、再発リスクが把握できているか
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TRTによる利益とリスクを、本人および腫瘍担当医と共有できているか
癌の治療中にテストステロンが低下した場合、急性疾患や栄養状態の悪化に伴う一過性の低下も考えられます。必要に応じて状態が安定した時点で再検査し、持続的な性腺機能低下症であることを確認します。
9.TRTを開始する場合のモニタリング
がん患者にTRTを行う場合、一般的なTRTの安全性確認に加えて、原疾患に応じたモニタリングが必要です。
一般的には、以下を確認します。
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テストステロン値と症状の変化
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血算・ヘマトクリット
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肝機能など、患者の状態に応じた検査
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前立腺癌の既往がある場合はPSAなどの腫瘍学的指標
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がんの種類に応じた画像検査や再発評価
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血栓症、浮腫、睡眠時無呼吸などの副作用
前立腺癌の既往がある患者では、PSAの変化をTRTの影響だけで解釈せず、必要に応じて泌尿器科で評価します。
TRT開始後にPSA上昇、腫瘍進行を疑う所見、重大な副作用が生じた場合は、継続の可否を再評価します。
10.現実的な判断基準:4つのカテゴリーで考える
実際の診療では、次の4カテゴリーに分けると整理しやすくなります。
A.原則としてTRTを行わない
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活動性の前立腺癌
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転移性前立腺癌やADT中
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男性乳癌
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腫瘍の活動性やホルモン感受性が不明で、安全性を評価できない場合
B.原則見合わせ、専門医と例外的に検討
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前立腺癌の監視療法中
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再発リスクの高い前立腺癌の治療後
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活動性の癌があり、全身状態が不安定な場合
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治療中で、TRTの利益や安全性を判断するための情報が不足している場合
C.条件付きで検討可能
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前立腺癌の根治治療後で、PSAが安定し再発リスクが低い場合
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精巣癌の治療後で、症候性の性腺機能低下症が確認された場合
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その他の固形癌・血液悪性腫瘍の治療後で、病勢が制御されている場合
D.がん種と病状に応じて個別判断
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活動性の前立腺癌・男性乳癌以外の癌で、症状が強く、TRTによる利益が期待される場合
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進行癌・終末期で、症状緩和を目的に検討する場合
ただし、C・Dに該当するからといって自動的にTRTを開始するわけではありません。診断の確実性、本人の希望、治療目標、腫瘍学的なリスクを総合して判断します。
まとめ
がん患者に対するTRTは、「がんがあるか、ないか」だけでは判断できません。
前立腺癌と男性乳癌では、ホルモン感受性と安全性への懸念から原則として慎重な対応が必要です。一方、その他の癌では、がんの既往だけで一律にTRTを禁忌とする根拠はありません。ただし、活動性の癌に対するTRTの安全性は十分に確立されていません。
現実的には、次の3点が重要です。
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本当に治療対象となる性腺機能低下症があるかを確認する。
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がんの種類・病期・治療状況・再発リスクを把握する。
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腫瘍担当医と情報を共有し、期待できる利益と不確実性を踏まえて決定する。
TRTは、テストステロン値を上げること自体が目的ではありません。症状や生活の質を改善することが目的です。
そのため、がん患者では「低テストステロンだから補充する」という単純な判断ではなく、治療によって得られる利益が、患者ごとの腫瘍学的リスクや治療負担を上回るかを考えることが重要です。
参考文献
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※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個々の患者へのTRTの適応を確定するものではありません。実際の治療判断では、がんの種類・病期・治療状況に応じて、腫瘍担当医と相談する必要があります。