睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・CPAP治療|保険適用・2026年診療報酬改定対応
睡眠中に、次のような症状はありませんか。
睡眠中に呼吸が止まると言われる
朝起きても疲れが取れない
日中の眠気が強い
集中力が続かない
高血圧や糖尿病を指摘されている
このような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の可能性があります。SASは眠気だけでなく、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、不整脈などの心血管疾患リスクを高めることが知られており、適切な診断と治療が重要です。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に気道が狭くなり、呼吸が繰り返し止まる病気です。無呼吸や低呼吸が繰り返されることで、
- 血中酸素濃度の低下
- 睡眠の質の低下
- 日中の眠気
- 慢性的な疲労
などが起こります。医学的には、10秒以上続く無呼吸・低呼吸が睡眠1時間あたり平均5回以上みられる状態などと定義されます。
放置するリスク(合併症)
SASを放置すると、次のような病気のリスクが高くなることが報告されています。
当院で行う検査
症状や既往歴を確認したうえで、まずはご自宅でできる簡易睡眠検査(携帯型装置)を行います。より詳しい評価が必要な場合も、当院では在宅での精密検査(在宅PSG:脳波などを記録する終夜睡眠ポリグラフ検査)に対応しているため、入院せずにご自宅で検査を受けられます。
いびき・日中の眠気・起床時の頭痛などの症状を確認します。
検査機器をご自宅にお送りします。装着して就寝し、無呼吸の状態を測定して返送していただきます。
結果をもとに、CPAP・マウスピース・生活習慣改善などの方針をご提案します。重症度の評価に精密検査が必要な場合は、在宅で行うPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)を当院で手配します。
CPAP(シーパップ)治療とは
CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)は、睡眠中に鼻や口へ一定の空気圧を送り、気道の閉塞を防ぐ治療です。中等症〜重症のSASでは第一選択となります。
そのほか、軽症〜中等症ではマウスピース(口腔内装置)、肥満がある場合は減量が重要です。
2026年6月からCPAPの保険適用基準が変わりました
2026年6月の診療報酬改定により、CPAPの保険適用基準が緩和されました。
| 検査 | 改定前 | 2026年6月〜 |
|---|---|---|
| 簡易検査でのAHI | 40以上 | 30以上 |
| 精密検査(PSG)でのAHI | 20以上 | 15以上 |
これにより、以前は「AHIがあと少し足りず保険適用外」だった方でも、保険でCPAP治療を始められる可能性があります。健康診断や他院で「軽めの無呼吸」と言われた方も、あらためて相談する価値があります。
CPAPは「4時間・70%」が目標です
CPAP治療では、「1日4時間以上の使用を、全体の70%以上の日で継続すること」が治療目標として広く用いられています。十分な使用時間が確保されることで、
- 日中の眠気の改善
- 血圧の低下
- 心血管イベントの減少
- 死亡率の低下
などが期待できるためです。特に循環器疾患リスクの低下との関連は多くの研究で示されており、日本睡眠学会や国際的なガイドラインでも長時間の継続使用が推奨されています。
「4時間・70%」は保険継続の絶対条件ではなく、十分な治療効果を得るための目標として広く採用されている数値です。仕事や体調で使えない日があっても、そのことだけで保険が打ち切られるわけではありません。
「平均1時間未満」が3か月続くと保険診療を継続できません
一方で、2026年6月の診療報酬改定では、CPAPのモニタリング機能を用いた継続管理がより重視されました。
実施月の前月から数えて3か月連続で、1日あたりの平均使用時間が1時間未満の場合は、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定できなくなりました。つまり「ほとんど使えていない状態」が続くと、保険診療としてのCPAP管理を継続できなくなる可能性があります。
そのため、マスクの調整・加湿設定の見直し・鼻づまりの治療・圧設定の調整などを行いながら、無理なく続けられる環境を整えることが大切です。使えていないときこそ、早めにご相談ください。
CPAPが続かない原因と対策
| よくある原因 | 主な対策 |
|---|---|
| 鼻づまり・鼻炎 | 点鼻薬やアレルギー治療、加湿の調整 |
| 口が渇く・口から空気がもれる | 加湿設定、チンストラップ、フルフェイスマスクへの変更 |
| マスクの跡・皮膚のかぶれ | サイズ・種類の見直し、クッションの交換 |
| 圧が強くて息苦しい | ゆっくり昇圧する機能の活用、圧設定の調整 |
| 音が気になる・同室の家族への影響 | 機器の置き場所やマスクの見直し |
| なんとなく続かない | 使用データを一緒に確認し、目標を小さく設定して段階的に慣れる |
マスクの種類と選び方
鼻マスク(ネーザル)
- 鼻全体を覆う、最も一般的なタイプ
- 圧迫感が比較的少なく視界も広い
- 口が開くと空気がもれやすい
鼻ピロータイプ
- 鼻の入口にあてる小型のマスク
- 接触面が小さく閉塞感が少ない。眼鏡・読書がしやすい
- 高い圧設定にはやや不向きなことがある
フルフェイスタイプ
- 鼻と口の両方を覆う
- 鼻づまりや口呼吸が強い方向け
- 装着範囲が広く、リークや圧迫感が出やすい
どのマスクが合うかは個人差が大きいため、使用感やリーク量を確認しながら調整します。
CPAPで改善が期待できる合併症
- 高血圧:CPAPにより血圧が低下することが示されています。特に治療で下がりにくい高血圧や夜間高血圧で効果が期待されます。
- 心房細動:SASの治療により、不整脈治療(カテーテルアブレーション)後の再発が減る可能性が報告されています。
- 心血管イベント・死亡率:未治療の重症SASでは心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高く、CPAP治療を受けている方ではそのリスクが低いことが観察研究で示されています。
眠気による事故・運転とSAS
SASによる日中の強い眠気は、居眠り運転や作業中の事故のリスクを高めます。運送・運輸などハンドルを握る仕事の方や、長距離運転をする方では特に注意が必要です。CPAP治療で眠気が改善すると、事故リスクの低下につながります。強い眠気を感じる間は、運転や危険を伴う作業を控えてください。
当院でのCPAP管理
当院では、毎回の診察でCPAPのデータを確認しています。
- 1日平均使用時間・使用した日の割合
- AHI(残っている無呼吸の程度)
- マスクの空気もれ(リーク)
- 日中の眠気や倦怠感などの症状の変化
使用時間が短いときは、その原因を一緒に確認し、マスクの種類・加湿・圧設定・鼻閉の治療などを調整して、続けやすい方法をご提案します。
一般内科の診療内容・院内でできる検査・アクセスは大手町の内科(一般内科)のページをご覧ください。
よくある質問
Q. 4時間使えない日がありますが、保険は打ち切られますか?
A. いいえ。「4時間以上・70%」は治療効果を得るための目標です。一方で、2026年6月の診療報酬改定では「3か月連続して1日平均1時間未満」という、極端に使えていない場合が保険診療継続の基準として新たに加わりました。使用時間が短くなってきたら、早めにご相談ください。
Q. 毎日使う必要がありますか?
A. はい。CPAPは使用した日だけ効果があります。中断するとその夜から無呼吸が再び出現するため、毎晩継続して使用することが推奨されます。
Q. CPAPは一生必要ですか?
A. 体重の減少や生活習慣の改善で症状が軽くなる方もいます。定期的に評価しながら、必要に応じて治療方針を見直します。
Q. 検査は自宅でできますか?
A. はい。まずはご自宅でできる簡易検査を行います。より詳しい精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG)が必要な場合も、当院は在宅で行うPSGに対応しているため、入院せずにご自宅で検査を受けられます。
参考文献
- 日本睡眠学会. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン.
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定(在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し。簡易検査AHI40→30・PSG AHI20→15への緩和、3か月連続で1日平均使用時間1時間未満の場合の算定要件). 2026.
- Epstein LJ, Kristo D, Strollo PJ, et al. Clinical Guideline for the Evaluation, Management and Long-term Care of Obstructive Sleep Apnea in Adults. J Clin Sleep Med. 2009.(PMID: 19960649)
- Weaver TE, Grunstein RR. Adherence to Continuous Positive Airway Pressure Therapy: The Challenge to Effective Treatment. Proc Am Thorac Soc. 2008.(PMID: 18250209)
- Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AGN. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005.(PMID: 15781100)