環境ホルモン(BPA・PFASなど)はテストステロンを下げる?|不妊・健康寿命との関係をエビデンスで解説
身の回りの化学物質が男性ホルモンに影響する?
近年、環境中に存在する化学物質が男性ホルモンや精子の質に影響する可能性が注目されています。
代表的なのが、
- BPA(ビスフェノールA)
- PFAS(有機フッ素化合物)
- フタル酸エステル
- 一部の農薬
などの内分泌かく乱物質(Endocrine Disrupting Chemicals:EDCs)です。
これらは一般的に「環境ホルモン」と呼ばれています。
今回は現在分かっているエビデンスをもとに、テストステロン、不妊、健康寿命との関係について解説します。
環境ホルモンとは?
環境ホルモンとは、
体内のホルモン作用を乱す可能性がある化学物質です。
具体的には、
- ホルモン受容体に結合する
- ホルモン合成を妨げる
- ホルモン代謝を変化させる
などさまざまな経路で作用すると考えられています。
ただし、「少量でも必ず有害」という意味ではなく、物質ごとに影響の強さやエビデンスは異なります。
BPA(ビスフェノールA)とは?
BPAは、プラスチック製品や食品缶の内面コーティングなどに使われてきた化学物質です。
近年は使用量が減っていますが、現在でも一部の製品には使用されています。
観察研究では尿中BPA濃度が高い男性ほど
- テストステロン低下
- 精子数低下
- 精子運動率低下
との関連が報告されています。
一方で、すべての研究で一致した結果ではなく、
「関連はあるが、因果関係はまだ十分には証明されていない」
というのが現在の評価です。
PFASとは?
PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)は耐熱性・撥水性に優れた化学物質です。
代表例として、
- フライパンの一部コーティング
- 防水加工製品
- 食品包装
- 消火剤
などに利用されてきました。
PFASは体内で分解されにくく、
「Forever Chemicals(永遠の化学物質)」
とも呼ばれています。
近年では、PFAS濃度が高い男性で
- テストステロン低下
- 精子数低下
- 精子運動率低下
などとの関連を示した研究が増えています。
また、脂質異常症や肝機能異常、甲状腺機能への影響も研究されています。
PFASと脂質の関係については脂質異常症のページも参考になります。
男性不妊との関係
近年世界的に精子数が減少していることが報告されています。
もちろん原因は一つではありません。
- 肥満
- 喫煙
- 睡眠不足
- 運動不足
- 加齢
などが大きく関与しています。
その中で、環境ホルモンも複数あるリスク因子の一つとして研究されています。
特に胎児期や思春期など、精巣が発達する時期の曝露が重要ではないかと考えられています。
妊娠を希望される方は妊孕性とTRT・PCTもご覧ください。
テストステロンへの影響は?
動物実験では、BPAやPFASがライディッヒ細胞(テストステロンを作る細胞)の働きを抑えることが示されています。
しかし、ヒトでは影響の程度は比較的小さく、個人差も大きいことが分かっています。
つまり、環境ホルモンだけが原因で男性ホルモンが大きく低下するというケースは少なく、肥満や睡眠不足など他の生活習慣要因の影響の方が大きい場合も少なくありません。
健康寿命との関係
PFASは、男性ホルモンだけではなく、
- 脂質異常症
- 高血圧
- インスリン抵抗性
- 慢性炎症
との関連も研究されています。
これらはいずれも、健康寿命を左右する重要な要因です。
ただし、現時点ではPFASを減らせば寿命が延びることまで証明されたわけではありません。
今後さらに研究が進む分野です。
できる対策は?
環境ホルモンを完全に避けることは現実的ではありません。
しかし、曝露を減らす工夫は可能です。
例えば、
- 熱い食品をプラスチック容器のまま電子レンジで加熱しない
- ガラスやステンレス製の容器を活用する
- 傷んだフッ素樹脂加工の調理器具は交換する
- 加工食品ばかりに偏らず新鮮な食材を選ぶ
- 室内の換気や掃除を行い、ハウスダストを減らす
などは比較的取り入れやすい対策です。
生活習慣の方が影響は大きい
環境ホルモンが話題になると、
「これさえ避ければテストステロンが上がる」
と思われがちですが、現在のエビデンスでは、
男性ホルモンに最も大きな影響を与えるのは、
- 肥満
- 睡眠不足
- 運動不足
- 喫煙
- 過度の飲酒
といった生活習慣です。
つまり、環境ホルモン対策は生活習慣改善の”上乗せ”として考えるのが現実的でしょう。
当院からのメッセージ
環境ホルモンであるBPAやPFASなどは、男性ホルモンや精子の質への影響が研究されています。
現在のところ、関連を示す研究は増えていますが、「これだけが原因」と言えるほどの強いエビデンスではありません。
一方で妊娠を希望している方や、男性更年期障害が気になる方では、不要な曝露を減らす生活習慣は取り入れる価値があります。
それ以上に重要なのは、
- 適正体重を維持する
- 筋トレと有酸素運動を行う
- 十分な睡眠をとる
- 禁煙する
- バランスの良い食事を続ける
ことです。
「環境ホルモンを恐れる」よりも、科学的根拠のある生活習慣を積み重ねることが、テストステロン・妊孕性・健康寿命を守る近道と言えるでしょう。
具体的な生活習慣はテストステロンを上げる方法、症状が気になる方は男性更年期障害(LOH症候群)をご覧ください。
参考文献
- Gore AC, et al. EDC-2: The Endocrine Society’s Second Scientific Statement on Endocrine-Disrupting Chemicals. Endocr Rev. 2015;36(6):E1-E150.(PMID: 26544531)
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- Levine H, et al. Temporal trends in sperm count: a systematic review and meta-regression analysis of samples collected globally in the 20th and 21st centuries. Hum Reprod Update. 2023;29(2):157-176.(PMID: 36377604)
- Rochester JR. Bisphenol A and human health: a review of the literature. Reprod Toxicol. 2013.
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- European Food Safety Authority (EFSA). Risk to human health related to the presence of perfluoroalkyl substances in food. EFSA Journal. 2020.
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