テストステロンを上げる方法|生活習慣・栄養・運動・睡眠を医師が解説
要点
- テストステロンを上げる方法として比較的エビデンスがしっかりしているのは、体重管理・レジスタンストレーニング・十分な睡眠・ビタミンD/亜鉛欠乏の是正です。
- 睡眠不足(5時間程度への制限)で翌日のテストステロンが10〜20%程度低下したとの報告があります。
- 「テストステロンを上げる」ことと「健康状態を改善する」ことは重なる部分が多いですが、必ずしも同一ではありません。
- 生活習慣を整えても症状が続く場合は、男性更年期外来での血液検査をご検討ください。
テストステロンを上げる方法とは
テストステロンを自然に高める方法は数多く紹介されていますが、実際に科学的根拠があるものは限られます。
現時点でエビデンスが比較的しっかりしているのは
- 体重管理
- レジスタンストレーニング
- 十分な睡眠
- ビタミンD・亜鉛欠乏の是正
などです。テストステロンの働きや低下の仕組みについてはテストステロンとはもあわせてご覧ください。
①睡眠
かなり重要なので最初でも良いくらいです。
- 7〜8時間睡眠を目安にしましょう
- 睡眠不足(5時間程度に制限)で翌日のテストステロンが10〜20%程度低下したという報告があります
- 睡眠時無呼吸症候群があると睡眠の質が下がり、テストステロンにも影響します
- 肥満を伴う場合はCPAP(持続陽圧呼吸療法)も重要です
睡眠とテストステロンの関係は睡眠とテストステロン、睡眠時無呼吸については睡眠時無呼吸症候群(SAS)とテストステロンの関係で詳しく解説しています。
②運動
筋トレ中心に考えるのがおすすめです。
- スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなど大きな筋肉を使う種目が効果的です
- HIIT(高強度インターバルトレーニング)も有効とされています
- 有酸素運動も肥満改善には有効です
- オーバートレーニング(やりすぎ)は逆効果になることがあります
詳しくは筋トレとテストステロン、HIIT・タバタ式トレーニングとテストステロン、有酸素運動とテストステロンで解説しています。
握力は全身の筋力や健康寿命の指標にもなります。握力と健康寿命、テストステロンもご覧ください。
③肥満改善
肥満では、脂肪組織のアロマターゼによってテストステロンがエストラジオール(E2)へ変換されやすくなります。
そのため、BMIを改善するだけでもテストステロンが改善する例が報告されています。
詳しくは肥満と男性更年期障害の関係で解説しています。
④栄養
タンパク質
筋肉量を維持するために不足しないようにしましょう。高タンパク食・ロイシン・EAAとテストステロンの関係はプロテインとテストステロンで解説しています。
亜鉛
ここは特に重要です。
- 亜鉛が欠乏している人では、補充によりテストステロンが改善することがあります
- もともと正常値の方では、劇的に増えることは期待できません
- 過剰摂取は銅欠乏を招くことがあり注意が必要です
亜鉛を多く含む食品には、牡蠣、牛肉、赤身肉などがあります。詳しくはテストステロンと亜鉛の関係、亜鉛補充のコツをご覧ください。
ビタミンD
欠乏している場合は補充によって改善が期待できますが、もともと正常な方では効果は限定的です。詳しくは紫外線とビタミンD、テストステロンの関連で詳しく解説しています。
マグネシウム
最近注目度が高まっている栄養素です。欠乏している場合は改善する可能性がありますが、エビデンスはまだ限定的です。亜鉛・ビタミンDとあわせてメンタルヘルスとテストステロンでも解説しています。
大豆・イソフラボン
「大豆を食べるとテストステロンが下がる」と心配される方がいますが、メタアナリシスでは大豆・イソフラボンの摂取で総テストステロン・遊離テストステロン・エストラジオール・SHBGのいずれも有意に変化しないと報告されています。過度に避ける必要はありません。詳しくは大豆・納豆・味噌は長生きにつながる?|死亡率との関係で解説しています。
脂質(脂肪酸の質)
テストステロンはコレステロールから作られるため、極端な低脂肪食は避けます。飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・オメガ3の選び方は脂質とテストステロン、食べる時間帯の整え方は時間制限食とテストステロンで解説しています。
腸内環境・環境化学物質
食物繊維や発酵食品による腸内環境と男性ホルモンの関係は腸内細菌叢とテストステロン、BPA・PFASなど身の回りの化学物質については環境ホルモンとテストステロンもご参考ください。
⑤ストレス
慢性的なストレスが続くと、コルチゾールが上昇し、テストステロンが低下することが知られています。
ストレスとテストステロンの関係はメンタルヘルスとテストステロンで詳しく解説しています。
サウナによるリラクゼーションと男性ホルモンの関係、注意点はサウナとテストステロンで解説しています。
⑥アルコール
大量の飲酒はテストステロンの低下につながります。飲酒量にも注意しましょう。
⑦喫煙
喫煙もテストステロンに好ましくない影響を与えるとされています。禁煙が望ましいでしょう。
⑧陰嚢冷却(金冷法)
SNSでは「陰嚢を冷やすとテストステロンが増える」と言われることがありますが、金冷法などと呼ばれるこの方法についてはまだエビデンスが限られています。
ここでは、現在報告されている研究を整理してご紹介します。
陰嚢温度と精子形成能の関係
- 高温による不妊リスク:高温環境(例:長時間運転、ノートPCを膝に乗せる、サウナなど)では、陰嚢温度が体温より2〜4℃上昇し、精子の質が低下します。
- 陰嚢位置の重要性:体内より数度低く精子を作る環境を維持するため、陰嚢は体外にぶら下がっており、体毛除去(陰嚢剃毛)が冷却に有利との報告もあります。
温度別・細胞タイプ別精巣機能への影響
- In vitroのヒトライディッヒ細胞・セルトリ細胞実験:33℃と37℃の温度では大きな撹乱が見られなかった一方、胚細胞の分化段階では直接障害を受けたという報告があります。
- 動物モデル(ラット)における30℃程度の冷却実験:精巣を冷却すると、約1時間後からアポトーシスが急増し、3〜10週間後には精祖細胞が大きく減少するという研究結果が報告されています。また、セルトリ細胞機能も変化し、血中FSH増・inhibin B減少傾向がみられました。
精子形成とテストステロン分泌の違い
- 冷却で胚細胞・精子形成能は明らかに低下します(上記動物データおよび高温リスクからの推察)。
- 一方、セルトリ細胞やライディッヒ細胞(テストステロン産生に関与)は、冷却そのものでは短期的な直接障害は確認されていません。
- 臨床的には、遊離テストステロン(総テストステロン)の上昇は確認されておらず、むしろホルモン変化は限定的との報告です。
妊娠を希望される方向けのテストステロン治療については▶こちらで詳しく解説しています。
ヒトでの冷却実用性・臨床データ
- 臨床試験・パッチや装置の使用状況:冷却パッチや冷却装置を使った研究では、使用者の順守率が低い(快適性・働きにくさ・続けにくさが理由)とされています。
- 精子パラメータへの効果:冷却装置使用後、精子運動性・生存率がやや改善し、DNAフラグメンテーション低下も観察されましたが、総テストステロン値には変化がありませんでした。
- システマティックレビュー:冷却により精子パラメータが「良い方向に向かう傾向あり」とされますが、質の高いランダム化試験が不足しており結論には至っていません。
まとめ表
| 項目 | エビデンス |
|---|---|
| 高温環境 | 精子形成・質が低下 |
| 陰嚢冷却(実験室・動物) | 精巣内の胚細胞が減少、テストステロン分泌細胞への直接影響は弱い |
| 実用的なヒトでの冷却 | 精子運動性など微改善あり。ホルモン値(遊離T)は変化なし |
| 順守性 | 快適性・装着性に課題あり |
臨床へのアプローチ
- 男性不妊治療(精子改善目的):陰嚢温度を34℃程度に緩やかに冷却するアプローチは、「補助策」として有用性がある可能性があります。ただし、過度な冷却は逆効果の恐れがあります。
- 遊離テストステロンを増やしたい場合:現時点では冷却によるホルモン上昇のエビデンスはなく、目的達成のためには睡眠・レジスタンストレーニング・栄養(不飽和脂肪酸など)を優先すべきです。
- 熱リスク対策:長時間の運転、ノートパソコンの長時間使用、サウナ・長風呂などでは、冷却の併用や環境調整が推奨されます。
陰嚢冷却は”精子形成支援”として一定の可能性を示す一方で、遊離テストステロンの上昇には効果が薄く、臨床的に推奨される根拠はまだ十分ではありません。快適性や継続性といった実用面の課題もあります。テストステロン目的であれば、まずはライフスタイル改善(睡眠・運動・栄養)が優先です。
⑨サプリメント
マカ、トンカットアリ、アシュワガンダ、DAA(D-アスパラギン酸)、フェヌグリークなど、テストステロンに関連するサプリメントは数多く販売されており、検索需要も高い分野です。
効果が期待できる研究はありますが、現時点では標準治療として推奨できる十分なエビデンスはありません。
当院で扱っているフェヌグリーク配合サプリメントについてもご紹介しています。
⑩男性更年期なら病院へ
生活習慣を改善しても
- 性欲低下
- 疲労感
- 抑うつ
- 筋力低下
などが続く場合には、男性更年期障害(LOH症候群)の可能性があります。
その場合、血液検査で総テストステロン・遊離テストステロンを確認します。それぞれの基準値は検査基準値一覧で詳しく解説しています。
数値と症状を総合的に評価したうえで、必要に応じてテストステロン補充療法(TRT)などを検討します。保険診療での治療については男性更年期の保険適用についてをご覧ください。
症状に心当たりがある方は、まずAMSスコアによるセルフチェックもご利用いただけます。
よくある質問
Q. テストステロンを上げる方法で最もエビデンスがあるのは何ですか?
A. 体重管理、レジスタンストレーニング、十分な睡眠、ビタミンD・亜鉛欠乏の是正など、生活習慣の改善が比較的エビデンスがしっかりしています。特殊なサプリメントより基本的な生活習慣の見直しが重要です。
Q. 睡眠不足はテストステロンにどのくらい影響しますか?
A. 睡眠を5時間程度に制限した研究では、翌日のテストステロンが10〜20%程度低下したとの報告があります。7〜8時間睡眠を目安に、睡眠時無呼吸症候群がある場合はその治療も重要です。
Q. サプリメントだけでテストステロンを上げることはできますか?
A. 亜鉛やビタミンDなどは不足している場合に補充することで改善が期待できますが、不足していない方が追加で摂取しても大きな効果は期待しにくいとされています。まず生活習慣を整えることが基本です。
Q. 生活習慣を改善しても症状が続く場合はどうすればよいですか?
A. 「歳のせい」と自己判断せず、男性更年期外来での血液検査をご検討ください。テストステロン値と症状を総合的に評価したうえで、必要な治療を判断します。
テストステロン全般についてはテストステロン総合ガイドで、基準値・原因・維持する方法・TRT・保険・PCTまでまとめて解説しています。
関連コラム
生活習慣とテストステロンについて、切り口の異なる記事もあわせてご覧ください。
参考文献
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