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バターかマーガリンか(トランス脂肪酸)|大手町の内科クリニックによるコラム

バターとマーガリンどちらが健康的か?

というお話です。

マーガリンは工業的に作られていて、そのせいでトランス脂肪酸が入っていて体に悪い!などよく目にしますよね。

トランス脂肪酸は食べるプラスチック?と書かれたものもあります。

バターはバターで、動物性の油脂類のために動脈硬化を進ませると言われています。

バターとマーガリン、どちらが健康に悪いのでしょうか?

リーレクリニック大手町の内科のコラムです


以前トランス脂肪酸が危険だととても話題になったことがあります。語感が怖そうなのか、トランス脂肪酸は危険だ!と騒がれていました。

その流れで、「マーガリンは体に悪いからバターを!」なんて主張する方やネットの情報も見かけます。

一時期は、朝食として珈琲にバターを溶かして飲むのが良いなどと書いた本も売れていました。

(エビデンスははなく、根拠は著者の体感・感想だけのようです)

実際の健康への影響はどうなのでしょうか?

  1. トランス脂肪酸とは

  2. トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の比較

  3. バターとマーガリンの比較

の順に記載します。


1.トランス脂肪酸とは

(退屈だと思いますが)まず前提の説明として、トランス脂肪酸とは不飽和脂肪酸の一種(二重結合を持つ脂質)です。不飽和結合している炭素原子の末端の、炭素鎖とカルボキシル基のつき方でシス型とトランス型と変わります。

このシス型脂肪酸は天然に存在しており、トランス型脂肪酸は工業的に生成された加工油脂に多く含まれます。トランス型脂肪酸は不飽和脂肪酸にも関わらず飽和脂肪酸のような影響を人体に与えます。
(不飽和脂肪酸はLDLコレステロールを下げ、飽和脂肪酸は上げることをコレステロールの記事で書きました)

いわゆる脂質異常症を引き起こします。

そのためトランス脂肪酸は身体に悪いということです。


2.トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の比較

ここで問題なのが、(トランス脂肪酸を気にして)マーガリンをバターに変えた場合、飽和脂肪酸の摂取量が増えてしまうということです。

どちらが身体に有害でないか(≒健康に良いか)を検討するには、それぞれの影響の大きさと普段の摂取量が重要です。

トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の摂取量による冠動脈疾患への影響の大きさを比較した論文があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3024842/pdf/bfsn50-29.pdf

「LDLコレステロール÷HDLコレステロール」がどれくらい上昇するかで見た場合、およそトランス型脂肪酸は(不飽和脂肪酸の)二倍くらいの影響力がありそうです。

トランス型脂肪酸3g摂る事と飽和脂肪酸7g摂る事が、同じ程度にコレステロール値を悪化させると考えてください。

こちらの論文では、日本人のトランス脂肪酸の摂取量が諸外国に比較しとても少ないことが報告されています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3900810/pdf/je-20-119.pdf

農林水産省によると、日本人1日あたり摂取量は下記の表になります。

トランス脂肪酸 0.9g(/day)
飽和脂肪酸 19g(/day)

ここまでのデータからは、まず取り組むべきは不飽和脂肪酸の摂取量を抑えることではないでしょうか?

平均的な食生活の日本人がトランス脂肪酸の摂取量を1g減らすことはほぼ不可能(摂取量は平均0.9gですので)ですが、

(同等の健康改善効果の期待できる)飽和脂肪酸の摂取量を2g程度減らすことは比較的容易です。

実際の影響力よりも、恐怖感から大きく見積もり過ぎて結果的に不利益な選択をしてしまう事をドレッド・リスク効果といいます。

911の後、飛行機より車移動を選んで交通事故の死亡者数が増えた例が有名です。

トランス脂肪酸も、カタカナの響きやマスコミの報道の仕方がドレッド・リスク効果を生んでいるのかも知れませんね。


3.バターとマーガリンの比較

そして、肝心のバターとマーガリンの比較をします。

マーガリン100gに含まれるトランス型脂肪酸は4~10g(商品によって異なります)
バター100gに含まれる飽和脂肪酸は50g前後(こちらも商品によって異なります)

例えばパンを食べる時同じ量のバターとマーガリンを塗ると明らかにバターの方がコレステロール値を悪化させてしまいます。それによる心血管イベントが増えることが問題です。

ちなみに、食パンや菓子パン、ケーキなどには大量のバターが使われています。

脂質異常症のある方への説明として、主食はパンより米(できれば玄米)や蕎麦を勧めているのはパンに含まれるバターのためです。


ここまでは健康寿命ではなくコレステロール値で健康への影響をみていました。

こういった方法をサロゲートマーカー・代用マーカーといい医学ではよく使われる手法です。

本当に健康寿命が終わるまで≒死ぬまで調査すると時間がかかりすぎて、有用な知見を提供するまでに時間がかかりすぎるのを避けるために使われます。

とはいえ、直接死亡率を見ていないので信用しづらい!という方もいると思います。

ですので、次は死亡率を見た研究を紹介します。

実際、飽和脂肪酸の摂取量が多く心血管イベントの多かったフィンランドにおいてバターをマーガリンに変え、牛乳を低脂肪乳に変えるという取り組みをしたところ心筋梗塞死亡率が下がったという有名な研究があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2807690

国単位で取り組んで死亡率が下がったなんてすごい話ですね。

さらに、最近はトランス型脂肪酸が非常に少ない(0.2-0.3%)マーガリンも出ています。


まとめ

ということで、データからもマーガリンの方が健康への悪い影響が小さいということでした。

実際に、フィンランドでは国策として取り組んでバターをマーガリンに置き換えて心筋梗塞が減り、健康寿命が伸びたという報告もあります。

でも、バターは味にコクがあって美味しいですよね。
僕はパンを食べる時にはバター、マーガリン、オリーブオイルを気分で使い分けています。

オリーブオイルは美味しい上に健康にもよくオススメです。

ちなみに、クロワッサンはバターを大量に使ってます。
でも本当、美味しいですよね。

パリッと噛んだあとに、甘みのあるバターが口の中いっぱいに広がる魅惑に勝てません。。。

程々にバランスよく楽しむのが大切だと思います。

コレステロール, 心筋梗塞, 脂肪酸

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