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BCGワクチンと新型コロナウイルス感染症

BCGワクチンを全例接種している国は、新型コロナウイルス(COVID19・SARS COV2)感染症の感染者数や感染者の致死率が低いといった話題が出ています。

色々なところで話に出ていますので目にした方も多いと思います。

現時点では確定的なことは言えませんが、オフターゲット効果など出ている情報を簡単にまとめます。

コロナウイルスに関するまとめはこちら

内科・リーレクリニック大手町のコラムです。

 

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  1. BCG(ビーシージー)ワクチンとは

  2. オフターゲット効果とは

  3. コロナウイルスとの関連(予防効果)

  4. まとめ

の順に記載します。

 

1.BCGワクチンとは結核のワクチンです。

ハンコ注射のトゲトゲが痛そうですが、とても細い針で普通の予防接種より痛みはありません。

乳幼児期の結核の死亡率が高いために、日本では生後3ヶ月から1歳未満の間に全例接種となっています。

(1974年から2005年はツベルクリン反応陰性の子のみ接種です)

結核の患者数が減少傾向の国では廃止されています。

特に欧米では廃止の国が増えており、反ワクチンや自然派ママといった人たちの間で不要だと槍玉に挙げられがちなワクチンです。

 

例えばスペインでは1981年に全例接種が廃止されています。

 

このBCGワクチンには、結核の予防だけでない効果があると以前から注目されていました。

 

これが、

2.オフターゲット効果と呼ばれています。

How the tuberculosis vaccine may protect against other diseases

ここでも、BCGワクチンが膀胱がんの治療に用いられていること、喘息や寄生虫などに有効といった話が紹介されています。

 
 

Association of BCG Vaccination in Childhood With Subsequent Cancer Diagnoses

こちらは肺がんへの予防効果の報告です。

小児期にBCGワクチンを受けた人の肺がん罹患率は18.2例/10万人年、プラセボ群では45.4例で、有意に肺がんが低下したそうです。

なぜ結核菌への反応がそういった効果があるのかは不明とのことです。

BCGの膀胱内注入は膀胱がん(表在性の上皮内癌)の標準治療にもなっています。

余談ですが、”標準治療”はエビデンスのある現時点で最良の治療方針の事です。

「標準?並みじゃなくて特上にしてくれよ!」と高価な自費診療(=保険適応になるエビデンスを持っていない)を選ぶと残念な事になります。

お金持ちの著名人あるあるですけど気をつけましょう。

 

こちらではその機序について検討されています。

BCG Vaccination Protects against Experimental Viral Infection in Humans through the Induction of Cytokines Associated with Trained Immunity.

 

生体内で、BCGワクチンにより単球(白血球の種類)がエピジェネティックな再プログラミングを起こし、IL-1βが感作された免疫応答のメディエーターとして重要な役割を果たしウイルス感染に対する機能的なリプログラミングされ予防されることが示唆される、とあります。

めちゃくちゃ分かりづらいですね。

ネット上でいろんな記事がこのconclusionを引用していますが、中にはgoogle翻訳?みたいな意味不明な和訳を載せているものもあります。

一言でいうと、

結核のワクチンだけど、白血球を刺激して無関係なウイルス感染ともしっかり戦えるようになるよ

というニュアンスです。

 

3.コロナウイルスとの関連(予防効果のある仮説)

そんなBCGワクチンですが、コロナウイルス感染症との関連が指摘されています。

前述の1981年に全例接種が廃止されたスペインではコロナウイルス感染症の感染者数が死者数が多いのですが隣のポルトガル(BCG実施国)では感染者数が少ないです。

この二国に限らず、BCGワクチンの実施国ではコロナウイルス感染症の影響が少ないことから、BCGワクチンがコロナウイルス感染者数に予防的に働くことが考えられています。

このグラフのSouth KoreaとChina(1976まで実施)はBCG未実施グループと同じように感染者数増えてプラトーに達したように見えるのですが。。。

とはいえ明らかにJapan,Singapore,Hung Kongは感染者数の増加スピードが違います。

なにか要因がありそうです。

 

既にBCGの効果を検証する臨床試験が始まっています。

オーストラリアでは医療スタッフを対象に、BCGワクチン接種とコロナウイルス感染症の重症化率を調べる試験が始まったそうです。

オランダでも医療スタッフを対象に臨床試験が始まっているそうです。


4.まとめ

現時点ではBCGワクチンがコロナウイルス感染症に有効という根拠はありません。

ワクチン学会からも見解が出ています。

日本ワクチン学会

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する BCG ワクチンの効果に関する見解【2020.4.3 Ver.2】

  1. 「新型コロナウイルスによる感染症に対してBCGワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。
  2. BCGワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。
  3. 本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCGワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

 

あくまでBCGワクチン接種率とコロナウイルス感染症の感染率や致死率に相関がありそうというお話です。

相関関係もきちんと検討されたわけではりませんし、もちろん因果関係は証明されていません。

 

段階としては、

  1. 現象(コロナウイルスの感染の広まり)を観察してなにか傾向に気づく
  2. 観察研究により関連を検討する
  3. その傾向が介入試験でも同様か調べる
  4. 大規模調査で効果の検討と稀な副作用が無いか調べる

という一般的な流れの1のところにいると考えて下さい。

イマココ!ってやつです。

  1. 現象(コロナウイルスの感染の広まり)を観察してなにか傾向に気づく    イマココ!!
  2. 観察研究により関連を検討する
  3. その傾向が介入試験でも同様か調べる
  4. 大規模調査で効果の検討と稀な副作用が無いか調べる

 

ぱっと思いつくコロナウイルスの感染者数や致死率に影響する要因として、

感染者数 検査の実施率、母集団(国家)の年齢構成、コミュニケーションの形、手洗いなどの実施率、温度や湿度、隔離の度合い、喫煙
致死率  検査の実施率、母集団(国家)の年齢構成、酸素投与や人工呼吸器の対応できる規模、医療アクセス、合併症の有無、喫煙

などがあげられます。

BCG実施国でコロナウイルスの感染率や致死率が低い場合に次に検討することとしては、

BCGの株ごとの確認、制度として全例実施の国での実際の接種率の確認、実施国内での接種者と非接種者の比較などが良さそうです。

そもそも日本でのコロナの罹患率がまだかなり低い(4月6日時点で3654名のPCR陽性/1.2億人で0.002%)ので差がでなそうですが。

 

 

現時点ではBCGワクチンがどれだけ関連があるかはまだ不明ですが、効果が証明されるととても心強いですね。

アビガンにも期待されていますが、とにかく有効な治療法があると、重症例の救命率だけでなく多くの人の精神面への影響に良いと思います。

 

ちなみに成人が接種する場合のデメリットとしては、経皮接種のキズ、ケロイドになりやすいなどでしょうか。

社会的リスクとしては、ワクチンの製造量との兼ね合いで乳幼児のワクチン接種率が損なわれる場合に乳幼児の結核による死亡が懸念されます。

買い占め、在庫切れなどがない事を祈っています。

*既にBCGを乳幼児以外に接種することを控えるよう通達があり卸業者さんから規制がありました

これで本来の対象の乳幼児向けワクチンが大人に使われることはないので安心ですね。

 

公衆衛生の一環として臨床試験を組んだり、有効に税金を使ってほしいと思っています。

色々思うところはあってもここでは政治的な事は書かないのですが、流石に5000万世帯に1枚200円のマスクを2枚づつ郵送する予算や発送する人件費があるのなら有意義なことに使ってもらいたいと、少額ながら一納税者として思っています。

マスクの予防効果など、もう少し学術的な視点から検討して有効な対策を行って欲しいです。

内科・リーレクリニック大手町のコラムです。
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