どんな脂を選ぶべき?|飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・オメガ3脂肪酸とテストステロンの関係
テストステロンを作るには「脂質」が必要です
テストステロンは、コレステロールを原料として合成されるステロイドホルモンです。
そのため、「脂質を減らし過ぎるとテストステロンが下がる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
一方で「脂質なら何でも良い」というわけではありません。
脂質には、
- 飽和脂肪酸
- 一価不飽和脂肪酸(MUFA)
- 多価不飽和脂肪酸(PUFA:オメガ3・オメガ6など)
がありそれぞれ健康への影響が異なります。
今回は最新のエビデンスをもとに、男性ホルモンや健康寿命との関係を解説します。
テストステロンの材料はコレステロール
テストステロンは、副腎や精巣のライディッヒ細胞で、コレステロールから作られます。
そのため、極端な低脂肪食では、テストステロンが低下する可能性があります。
実際、システマティックレビューでは、
脂質摂取量が極端に少ない食事は、テストステロンをわずかに低下させる可能性が示されています。
しかしこれは「脂質不足」が問題なのであって、飽和脂肪酸をたくさん摂れば良いという意味ではありません。
飽和脂肪酸|摂り過ぎには注意
飽和脂肪酸は、
- 牛脂
- 豚脂
- バター
- ラード
- 生クリーム
- 加工肉
などに多く含まれます。
以前は、飽和脂肪酸を多く摂るほどテストステロンが高いという報告もありました。
しかし近年の研究では、その差は小さく、健康へのデメリットの方が大きいことが分かっています。
飽和脂肪酸を過剰に摂取すると、
- LDLコレステロール上昇
- 動脈硬化
- 心血管疾患リスク増加
につながります。
健康寿命を考えると、飽和脂肪酸を意図的に増やしてテストステロンを上げようとすることはおすすめできません。
血中コレステロールや中性脂肪が高めの方は、脂質異常症のページもご覧ください。
一価不飽和脂肪酸(MUFA)|最もおすすめ
一価不飽和脂肪酸は、
- オリーブオイル
- アボカド
- ナッツ類
- 一部の魚
などに多く含まれます。
地中海食では、脂質の中心がこのMUFAです。
観察研究ではMUFA摂取量が多い男性ほど、テストステロンが高い傾向が報告されています。
さらにMUFAには
- LDL低下
- HDL維持
- インスリン感受性改善
- 慢性炎症低下
など健康寿命にも有利な作用があります。
テストステロンと心血管の健康を両立するなら、MUFAを中心にするのが最も合理的でしょう。
青魚の脂(EPA・DHA)と男性ホルモンの関係は、不飽和脂肪酸とテストステロンでも解説しています。
オメガ3脂肪酸|直接テストステロンを上げる証拠は限定的
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、
- 青魚
- サーモン
- イワシ
- サバ
- マグロ
- 魚油サプリメント
などに豊富です。
「魚油でテストステロンが上がる」
という期待もありますが、現時点ではヒトで明確なテストステロン上昇効果は証明されていません。
一方でオメガ3には、
- 抗炎症作用
- 中性脂肪低下
- 心血管イベント抑制(高リスク群)
- 回復促進の可能性
など健康面で多くのメリットがあります。
また一部の研究では、精子運動率や精子膜の質を改善する可能性も報告されています。
オメガ3は間接的にテストステロンを支えるかもしれない
慢性炎症や肥満では、テストステロンが低下しやすくなります。
オメガ3によって、炎症やインスリン抵抗性が改善すれば、男性ホルモンが働きやすい環境を整える可能性があります。
つまり直接テストステロンを増やすというより、体全体の代謝改善を通じた間接的なメリットが期待されます。
オメガ6は悪者?
オメガ6脂肪酸は、植物油などに多く含まれています。
以前は、
「オメガ6は炎症を起こす」
と言われることもありました。
しかし通常の食事量では、オメガ6そのものが健康に悪いというエビデンスは強くありません。
重要なのは、オメガ3とのバランスです。
魚をほとんど食べず加工食品ばかりになると、オメガ6に偏りやすくなります。
筋トレをしている人は脂質を減らし過ぎない
減量中には、脂質を極端に減らす方がいます。
一時期はケトジェニックが流行りましたが、やはり今は王道のローファットが人気です。
しかし脂質は
- テストステロン合成
- 細胞膜
- 神経
- 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収
に必要です。
特に総摂取エネルギーの15%未満まで脂質を減らすような極端な食事では、テストステロン低下が報告されています。
筋肉を維持しながら減量するためにも、適度な脂質は必要です。
当院がおすすめする脂質の摂り方
テストステロンと健康寿命の両方を考えるなら、おすすめは、
- オリーブオイルを調理に使う
- 青魚を週2〜3回食べる
- ナッツを間食に取り入れる
- アボカドを活用する
- 赤身肉も適量摂る
- バターや加工肉は摂り過ぎない
というバランスです。
「脂質を増やす」のではなく、「脂質の質を改善する」ことが重要です。
当院からのメッセージ
テストステロンはコレステロールから作られるため、脂質は男性ホルモンに欠かせない栄養素です。
しかし現在のエビデンスでは、飽和脂肪酸をたくさん摂ればテストステロンが上がる、という考え方は支持されていません。
一方で、
- 一価不飽和脂肪酸(オリーブオイル・ナッツ・アボカド)
- オメガ3脂肪酸(青魚・EPA・DHA)
は、心血管疾患リスクを下げ、肥満や慢性炎症を改善し、結果として男性ホルモンが働きやすい身体づくりにつながる可能性があります。
健康寿命を延ばしながらテストステロンを維持するためには、「脂質を恐れる」のではなく、「良い脂質を適量摂る」ことが大切です。
食事以外の生活習慣はテストステロンを上げる方法を、テストステロン低下による症状が気になる方は男性更年期障害(LOH症候群)もあわせてご覧ください。
参考文献
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- 日本動脈硬化学会 編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.