大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック
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筋量と腎機能

筋トレ・クレアチン・高蛋白質食でクレアチニンが高くなる?筋肉量が多い人の腎機能評価

はじめに:筋トレをしている人は、腎機能検査の結果をどう解釈すべきか

筋肉量を増やすために筋力トレーニングを行い、プロテインやクレアチンを摂取している方は少なくありません。一方、健康診断で血清クレアチニン(Cre)が高い、eGFRが低い、尿素窒素(BUN)が高いと指摘され、「腎臓が悪くなっているのではないか」と心配する方もいます。

実際、筋肉量が多い方やクレアチンを摂取している方では、一般的な腎機能検査の数値が、実際の腎機能を正確に反映しない場合があります。

このような場合に参考になるのが、シスタチンC(CysC)を用いた腎機能評価です。

ただし、Creが高いからといって必ずしも問題がないわけではありません。反対に、CysCが正常だから腎臓に問題がないと断定することもできません。検査値の特徴を理解し、必要に応じて複数の指標を組み合わせて評価することが大切です。

1.クレアチニン(Cre)による腎機能評価の限界

クレアチニンは、主に筋肉中のクレアチンの代謝によって生じ、腎臓から排泄される物質です。血液中のCre濃度は腎機能が低下すると上昇するため、日常診療で広く使われています。

日本では、血清Cre値に年齢や性別を組み合わせた計算式から、推算糸球体濾過量(eGFRcreat)を算出します。eGFRは腎臓の糸球体が血液を濾過する能力を推定する指標です。

しかし、Cre値は腎機能だけで決まるわけではありません。筋肉量や食事、サプリメントなどの影響も受けます。

例えば、次のような方では注意が必要です。

  • ボディビルや筋力トレーニングを継続し、筋肉量が多い方

  • クレアチンのサプリメントを摂取している方

  • 検査前に肉類を多く摂取した方

  • 激しいトレーニングを行っている方

このような背景があると、腎機能が正常でもCreが比較的高くなり、eGFRcreatが実際より低く推算されることがあります。

つまり、筋肉量が多い人では、Creの数値だけで腎機能を判断すると、腎機能を過小評価する可能性があるのです。

2.クレアチンのサプリメントでCreが上がることはある?

クレアチンは、筋肉内でエネルギーを利用する仕組みに関与する物質です。筋力トレーニングや高強度運動のパフォーマンス向上を目的に、クレアチンモノハイドレートなどのサプリメントが使用されています。

摂取したクレアチンの一部はクレアチニンへ変換されるため、サプリメントの使用によって血清Creが上昇する場合があります。

2025年に公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、クレアチン補充に伴う血清Creの軽度上昇が報告されました。一方、解析対象の研究では、腎機能への影響を評価したGFRに有意な低下は確認されませんでした。

この結果は、クレアチン摂取後にCreが上がっても、それだけで腎障害を意味するわけではないことを示しています。ただし、研究対象や摂取期間には限界があり、あらゆる用量・期間・健康状態で腎臓への影響がないと証明されたわけではありません。

クレアチンを摂取している場合は、採血時に医師へ伝えましょう。 Creの変化がサプリメントによるものか、腎機能の低下によるものかを判断するうえで重要な情報になります。

3.シスタチンC(CysC)を使うと、より正確に評価できる?

シスタチンCは、全身の有核細胞で産生され、糸球体で濾過された後、主に尿細管で再吸収・代謝される蛋白質です。血液中のCysC濃度を用いて、推算糸球体濾過量(eGFRcys)を計算できます。

Creと異なり、CysCは筋肉量の影響を比較的受けにくいという特徴があります。そのため、筋肉量が多い方やボディビルダーなどでは、CreによるeGFRよりも腎機能を適切に反映する場合があります。

KDIGO 2024 CKD診療ガイドラインでも、筋肉量の増加が主な問題である場合には、CysCによる評価が適切なことがあるとされています。また、CreによるeGFRの正確性が低く、腎機能の評価が治療方針に影響する場合には、CreとCysCを組み合わせたeGFR(eGFRcr-cys)の使用が推奨されています。

ただし、CysCにも限界があります。炎症、甲状腺機能異常、ステロイド薬の使用、肥満など、腎機能以外の要因によって値が変動することがあります。

したがって、CysCがCreより常に優れているわけではありません。どちらの指標が適切かは、患者さんの背景によって異なります。

CreとCysCの違い

項目 クレアチニン(Cre) シスタチンC(CysC)
筋肉量の影響 受けやすい 比較的受けにくい
クレアチン摂取の影響 受けることがある 比較的受けにくい
食事の影響 肉類などの摂取で変動することがある Creより受けにくい
その他の影響 筋肉量、食事、薬剤など 炎症、甲状腺機能、ステロイド薬など
主な役割 一般的な腎機能評価の第一選択 Creによる評価を補う

4.CreとCysCの結果が食い違った場合は?

例えば、筋肉量が多い方でCreが高く、eGFRcreatが低い一方、CysCによるeGFRは比較的保たれている場合があります。

このようなときは、筋肉量などの影響によってCreによる腎機能評価が実際より低く推算されている可能性があります。

一方、両方の指標でeGFRが低い場合は、実際の腎機能低下が存在する可能性をより慎重に検討する必要があります。

ただし、検査値の不一致だけで結論を出すことはできません。必要に応じて、次の項目も確認します。

  • 過去のCre・eGFRの推移

  • 尿蛋白・尿アルブミン

  • 尿潜血などの尿検査

  • 血圧、糖尿病などの合併症

  • 脱水や急性疾患の有無

  • 使用中の薬剤やサプリメント

腎機能の評価では、単一の検査値だけでなく、経時的な変化や尿検査などを組み合わせることが重要です。

5.BUNが高い場合も、必ずしも腎機能低下とは限らない

尿素窒素(BUN)は、蛋白質の代謝によって生じる尿素に含まれる窒素を測定したものです。腎機能が低下すると上昇することがありますが、腎機能以外の影響も大きい検査項目です。

例えば、次のような要因でBUNが上昇することがあります。

  • 高蛋白質食や蛋白質摂取量の増加

  • 脱水

  • 発熱や異化亢進

  • 消化管出血

  • 一部の薬剤や病態

そのため、筋トレをしていて高蛋白質食を実践している方では、BUNが高いという理由だけで腎機能低下と判断することはできません。

一方、脱水や腎機能低下が原因でBUNが上昇する場合もあります。Cre、eGFR、尿検査、症状などを含めて総合的に判断する必要があります。

6.筋トレや高蛋白質食は腎臓に悪いのか?

ここは、筋トレ愛好家にとって特に気になるところでしょう。

筋力トレーニングそのもの

健康な人が適切な負荷で筋力トレーニングを行うこと自体を、腎臓に悪い習慣と考える必要はありません。

ただし、極端な高強度運動、脱水、暑熱環境での運動、体調不良時の無理なトレーニングなどは、急性腎障害や横紋筋融解症のリスクにつながることがあります。

特に、激しい運動の後に強い筋肉痛や筋肉の腫れ、著しい脱力、褐色尿などが生じた場合は、単なるトレーニング後の反応と考えず、速やかに医療機関を受診してください。

高蛋白質食・プロテイン

蛋白質は筋肉の合成や修復に必要な栄養素です。健康な成人が筋力トレーニングの目的で蛋白質を摂取することと、腎臓病のある人が高蛋白質食を続けることは、分けて考える必要があります。

健康な人において、高蛋白質食が長期的に腎機能へ与える影響については、摂取量や期間、対象者によってエビデンスに限界があります。少なくとも、蛋白質を多く摂取しているという事実だけで腎障害があると判断することはできません。

一方、慢性腎臓病(CKD)がある人では、過剰な蛋白質摂取を避けることが推奨されています。KDIGO 2024では、CKD G3~G5の成人に対して、蛋白質摂取量をおおむね0.8 g/kg体重/日とすることを提案し、腎機能低下の進行リスクがある人では1.3 g/kg体重/日を超える高蛋白質摂取を避けるよう勧めています。

これは、すべての筋トレ愛好家に一律に適用する数字ではありません。腎機能、尿蛋白、糖尿病などの合併症、運動量、栄養状態に応じて判断する必要があります。

クレアチン

クレアチンは運動パフォーマンス向上に利用されており、研究では摂取に伴うCre上昇が認められる一方、腎機能を直接評価した研究では明らかなGFR低下が確認されない場合があります。

ただし、既存の腎疾患がある人や、腎機能に影響する薬剤を使用している人については、自己判断で摂取を続けず、医師に相談することが望まれます。

7.筋肉量が多い人は、どのような検査を受ければよい?

筋肉量が多い方、クレアチンを摂取している方、激しいトレーニングを継続している方で、健康診断のCreやeGFRに異常を指摘された場合は、次のような手順で評価を進めることが考えられます。

  1. Cre・eGFRの再確認
    過去の検査結果と比較し、変化の程度や経過を確認します。

  2. シスタチンCの測定
    筋肉量やクレアチン摂取の影響が疑われる場合に、CysCによるeGFRを確認します。

  3. 必要に応じてeGFRcr-cysを評価
    CreとCysCを組み合わせた推算式は、両者の異なる影響を補い、腎機能評価の精度を高めるのに役立つ場合があります。

  4. 尿検査を行う
    尿蛋白・尿アルブミンや尿潜血などを確認します。血液検査だけでは分からない腎障害を検出できることがあります。

  5. 必要に応じて追加検査を検討
    結果に不一致があり、薬剤投与量や治療方針など重要な判断に影響する場合には、より正確なGFR測定などが検討されます。

なお、検査前に激しい運動を行った場合や、脱水、発熱などがある場合は、結果の解釈に影響することがあります。検査前の運動・食事・サプリメントについても、医師に伝えておくとよいでしょう。

まとめ

筋肉量が多い人、クレアチンを摂取している人、激しいトレーニングを行っている人では、CreによるeGFRが実際の腎機能を過小評価することがあります。また、高蛋白質食や脱水などによってBUNが上昇することもあります。

このような場合、シスタチンCによるeGFRや、CreとCysCを組み合わせた評価が役立つ可能性があります。

ただし、Creが高いことを「筋肉のせい」と決めつけるのも、CysCが正常だから腎臓は問題ないと判断するのも適切ではありません。 尿検査や過去の検査値、生活習慣、合併症などを含めた総合的な評価が重要です。

健康診断で腎機能の異常を指摘された方や、筋トレ・高蛋白質食・クレアチン摂取を続けながら腎機能が気になっている方は、検査結果を自己判断せず、医療機関で相談しましょう。


References

  1. Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International. 2024.
    https://kdigo.org/guidelines/ckd-evaluation-and-management/

  2. KDIGO. Executive summary of the KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney International.
    https://doi.org/10.1016/j.kint.2023.10.016

  3. 日本腎臓学会. 腎臓検診でわかること:eGFRと腎機能評価.
    https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms02.php

  4. Effect of creatine supplementation on kidney function: a systematic review and meta-analysis. BMC Nephrology. 2025.
    https://doi.org/10.1186/s12882-025-04558-6

  5. de Souza e Silva A, et al. Effects of Creatine Supplementation on Renal Function: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Renal Nutrition. 2019;29(6):480–489.
    https://doi.org/10.1053/j.jrn.2019.05.004

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