大手町の内科・男性更年期障害(テストステロン治療)専門クリニック
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TRTの至適投与量とその方法

TRT(テストステロン補充療法)の最適な投与量とは?|投与頻度・注射方法・外用薬までエビデンスで解説

TRTは「多ければ良い」治療ではありません

テストステロン補充療法(TRT)を検討される方から、

  • 「どのくらいの量を使うのですか?」

  • 「毎週注射した方が良いですか?」

  • 「皮下注射と筋肉注射はどちらが良いですか?」

といった質問をいただくことがあります。

実はTRTは、できるだけ高いテストステロン値を目指す治療ではありません。

現在のガイドラインでは、健康な男性の生理的な範囲(正常域)を維持することが目標とされています。

今回は、日本の保険診療と海外のTRTを比較しながら、現在のエビデンスをまとめます。TRTの適応となる▶ 男性更年期障害(LOH症候群)の症状・検査・治療についてはこちらをご覧ください。

TRTの投与量と効果・安全性は逆U字の関係。少なすぎると症状が改善せず、多すぎると多血症・にきび・精巣機能抑制・妊孕性低下のリスクが高まる。目標は健康な男性の正常域(中間程度)を維持すること。投与法は筋注・皮下注・ゲルなどがある。
TRTは「多ければ元気になる」治療ではありません。目標は正常域の維持で、少なすぎても多すぎてもデメリットがあります。採血で最適化していきます。

TRTの目標は「正常値を維持すること」

テストステロンには、

  • 性欲

  • 勃起機能

  • 筋肉量

  • 骨密度

  • 活力

  • 気分

などを維持する重要な役割があります。

一方で、必要以上に高い濃度を目指しても、効果が比例して高まることは証明されていません。

そのため海外ガイドラインでは、治療中の血中テストステロンを正常範囲の中間程度に維持することが推奨されています。


TRTではどのくらいの量が使われる?

世界的には、

週あたり50〜250mg程度

(製剤によって換算は異なります)

がTRTとして広く用いられています。

もちろん年齢や体格、代謝速度、症状によって適切な量は異なります。

重要なのは、投与量ではなく血中濃度と症状の改善を見ながら調整することです。


日本の保険診療ではどうなっている?

日本で保険適応となっているTRTは、テストステロンエナント酸エステル筋肉注射です。

一般的には

125mgを2週間ごと

あるいは

250mgを2~4週間ごと

に筋肉注射を行います。

保険診療の対象条件や費用については男性更年期障害は保険適用になる?で詳しく解説しています。


実は「もっと少量・高頻度」の方が生理的?

テストステロンエナント酸は、注射後数日で血中濃度がピークとなり、その後ゆっくり低下します。

そのため2〜4週間隔では

  • 注射直後は高め

  • 次回注射前は低め

という変動が起こります。

このため近年では、

60〜125mgを1〜2週間ごと

に投与する方が、より生理的な血中濃度に近づく可能性があると考えられています。


筋肉注射と皮下注射の違い

近年、海外では皮下注射(Subcutaneous TRT)も広く行われています。

筋肉注射では、筋肉内から比較的速く吸収されるため、注射後のピークが高くなりやすい傾向があります。

一方、皮下注射では脂肪組織からゆっくり吸収されるため、血中濃度のピークがやや緩やかになり、その後の低下も比較的なだらかになることが報告されています。

また、

  • 痛みが少ない

  • 自己注射しやすい

などの利点もあります。

現在までの研究では、適切な投与方法であれば、皮下注射でも筋肉注射と同等に目標テストステロン濃度を維持できることが示されています。

ただし、日本ではTRTとしての保険適応は筋肉注射であり、皮下注射は自費診療での運用となります。両者の違いはテストステロン注射は筋肉注射と皮下注射どちらが良い?でさらに詳しく比較しています。


外用剤(ゲル・クリーム)

欧米では、現在最も多く使用されているのがテストステロンゲルです。

毎日塗布することで、血中濃度の変動が少なく、より生理的なテストステロン値を維持しやすいことが特徴です。

一方で、

  • 毎日塗る必要がある

  • 投与量が安定しない
  • 家族への付着に注意が必要

  • 日本では保険適応外

という点があります。


内服薬はどうでしょうか?

海外では、テストステロンウンデカン酸の内服薬が使用されている国もあります。

一方、日本では現在、TRTとして保険適用で用いられる経口テストステロン製剤はありません。

また、過去に使用されていた17αアルキル化テストステロン製剤は肝機能障害などの副作用が問題となり、現在では長期TRTとして推奨されていません。


どの方法が一番おすすめ?

現時点では、「すべての人に最適な方法」はありません。

それぞれに特徴があります。

方法 特徴
筋肉注射 日本で保険適応。実績が豊富。
皮下注射 血中濃度が比較的安定しやすく、痛みも少ない可能性。
外用剤 毎日投与だが生理的。海外では第一選択の一つ。
内服剤 海外では使用されるが、日本では選択肢が限られる。

重要なのは、患者さんの生活スタイルや希望、症状に合わせて選択することです。


TRTは「量」ではなく「最適化」が重要

TRTでは、「たくさん打つほど元気になる」わけではありません。

投与量が多すぎると、

  • 赤血球増加

  • にきび

  • 精巣機能抑制

  • 妊孕性低下

などのリスクが高まります。

一方、少なすぎると症状が改善しません。

そのため、定期的な採血を行い、

  • テストステロン値

  • PSA

  • ヘマトクリット

  • 肝機能

などを確認しながら、一人ひとりに合った投与量や投与間隔を調整することが最も重要です。PSAとテストステロン投与についてや、ヘマトクリット上昇(多血症)への対応をまとめたテストステロンと多血症、瀉血についてもあわせてご確認ください。


まとめ

現在のTRTでは、正常なテストステロン濃度を維持することが治療目標です。

世界的には週50〜250mg程度の投与が広く行われていますが、投与量よりも症状・血液検査・副作用を確認しながら最適化することが大切です。

日本では、保険診療では2週間ごとに125mg筋肉注射が標準的な治療です。

一方で、近年ではより生理的な血中濃度を目指し、皮下注射や少量・高頻度投与、ゲル製剤なども選択されるようになっています。

TRTは画一的な治療ではなく、患者さん一人ひとりに合わせて調整していく「オーダーメイド治療」です。

気になる症状がある方は、自己判断ではなく、定期的な採血と診察を受けながら、ご自身に合った治療方法を医師と相談していきましょう。


参考文献

  1. 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き. 医学図書出版, 2022.

  2. Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018.(PMID: 29562364)

  3. Male hypogonadism: recommendations from the Fifth International Consultation on Sexual Medicine (ICSM 2024). Sex Med Rev. 2025.(PMID: 40862363)

  4. Ide H, et al. Late-onset hypogonadism: current methods of clinical diagnosis and treatment in Japan. Asian J Androl. 2025;27(4):447-453.

  5. 日本メンズヘルス医学会. テストステロン治療認定医・一般向け情報.

電話 03-5224-6672 LINEで予約