コーヒーを飲むとテストステロンは上がる?男性ホルモンとの意外な関係
「コーヒーを飲むとテストステロンが上がる」という話を聞いたことがあるかもしれません。
コーヒーに含まれるカフェインには、眠気を覚ます、集中力を高める、運動パフォーマンスを向上させるなど、さまざまな作用があります。
では、男性ホルモンであるテストステロンについてはどうでしょうか。
結論からいうと、コーヒーやカフェインを飲めば、普段のテストステロン値が明らかに上昇する、とまでは言えません。
一方で、運動前のカフェイン摂取によって、一時的にテストステロンの反応が変化する可能性を示した研究もあります。
今回は、コーヒーとテストステロンについて、現在わかっていることを整理します。
コーヒーを飲むとテストステロンは上がる?
まず知っておきたいのは、研究結果が一致していないということです。
アメリカのNHANESという大規模な健康調査を利用した研究では、カフェイン摂取量とテストステロンの間に明確な直線的な関連は認められませんでした。
一方、別のNHANES解析では、カフェイン摂取量が多い男性ほどテストステロンが低いという関連が報告されています。
つまり、
「コーヒーを飲むほどテストステロンが上がる」
という単純な関係は確認されていません。
そもそも、こうした研究の多くは一時点でのコーヒー摂取量と血液中のテストステロンを比較した観察研究です。
コーヒーを飲む人と飲まない人では、運動習慣、睡眠、体重、喫煙、飲酒、食生活などにも違いがあるため、「コーヒーがテストステロンを上げた」と因果関係を証明することはできません。
実際、NHANESを用いた研究でも、カフェインとテストステロンとの関連について結果は一貫していません。
「カフェインでテストステロンが上がる」と言われる理由
それでも、カフェインとテストステロンの研究が注目される理由があります。
それは、運動前にカフェインを摂取すると、運動後のテストステロン反応が変化する可能性があるためです。
例えば、24人のプロラグビー選手を対象とした二重盲検クロスオーバー試験では、カフェインを摂取してからレジスタンストレーニングを行うと、運動中のテストステロン濃度が用量依存的に上昇しました。
ただし、高用量の800mgではコルチゾールも大きく上昇し、テストステロン/コルチゾール比はむしろ低下しています。
つまり、
「カフェインを大量に摂ればテストステロンが上がる」
という話ではありません。
また、別の研究では、レジスタンストレーニングを行う男性にコーヒーとカフェインを組み合わせて摂取しても、カフェインを追加したことによって運動後のテストステロン反応がさらに高まることは確認されませんでした。
したがって、運動直後の一時的なホルモン変化と、長期的にテストステロンが高くなることは分けて考える必要があります。
コーヒーそのものには効果がある?
ここも重要なポイントです。
コーヒーにはカフェイン以外にも、ポリフェノールなど多くの成分が含まれています。
そのため、
「コーヒー=カフェイン」
と考えることはできません。
実際、カフェイン入りコーヒー、デカフェコーヒー、水を比較したランダム化比較試験では、8週間後の男性のテストステロンについて、治療群間に一貫した有意差は認められませんでした。
一方、4週間時点では、カフェイン入りコーヒーを飲んだ男性で総テストステロンが上昇するなど、いくつかのホルモン変化が観察されています。
ただし、この研究は42人と小規模であり、研究者自身も結果には注意が必要としています。
つまり、
「コーヒーを飲めばテストステロンが上がる」と断定できるほどのエビデンスはありません。
コーヒーを飲む男性はテストステロンが高い?
興味深いことに、別の大規模な観察研究では、コーヒーを1日4杯以上飲む男性は、コーヒーを飲まない男性と比較して総テストステロンが約5%高いという関連が報告されています。
ただし、この研究ではカフェイン入りコーヒーだけでなく、デカフェコーヒーでも同様の傾向がみられました。
このことからも、
「カフェインがテストステロンを直接上げる」
と単純に説明することはできません。
コーヒーを飲む人に共通する生活習慣や、体脂肪、食事、身体活動など、別の要因が関係している可能性があります。
では、テストステロンを上げたい人はコーヒーを飲むべき?
現時点では、
「テストステロンを上げる目的でコーヒーを飲む」ことを推奨する根拠は十分ではありません。
ただし、これは「コーヒーを飲んではいけない」という意味でもありません。
コーヒーは健康な食生活の一部になり得る飲み物であり、カフェインによって眠気や疲労感を軽減し、運動前のパフォーマンスを高める作用もあります。
特に運動習慣のある男性では、テストステロンを直接上げることよりも、
-
運動を継続しやすくする
-
集中力を高める
-
運動パフォーマンスを高める
-
体重・体脂肪を適正に維持する
といった間接的なメリットのほうが重要かもしれません。
コーヒーそのものについても、複数の研究をまとめたレビューでは、心血管疾患、2型糖尿病などさまざまな健康アウトカムとの関連が検討されており、適量のコーヒーは健康的な食生活の一部になり得るとされています。
ただし「コーヒーで睡眠が悪くなる」なら話は別
テストステロンを考える場合、コーヒーのメリットだけを見るのは適切ではありません。
カフェインには覚醒作用があるため、夕方以降に摂取すると睡眠に影響する人がいます。
そして、テストステロンを考えるうえでは、コーヒーそのものよりも、睡眠を犠牲にしてまでカフェインを摂取することのほうが問題になる可能性があります。
睡眠不足がテストステロンに与える影響については睡眠とテストステロンで詳しく解説しています。
例えば、
「午後10時まで仕事をするために夕方コーヒーを飲む」
↓
「眠れない」
↓
「翌朝起きられない」
↓
「また日中にコーヒーを飲む」
というサイクルになっているのであれば、テストステロン対策としては逆効果になり得ます。
コーヒーを飲むこと自体よりも、睡眠を含めた生活全体を見ることが重要です。
テストステロンを意識するなら「コーヒー」より優先したいこと
テストステロンを維持するための生活習慣として、コーヒーを特別視する必要はありません。
むしろ重要なのは、
-
肥満・内臓脂肪を改善する
-
十分な睡眠を確保する
-
適度な筋力トレーニング・有酸素運動を継続する
-
過度なダイエットやエネルギー不足を避ける
-
過剰な飲酒を避ける
-
必要な栄養素を不足させない
といった基本的な生活習慣です。具体的には肥満とテストステロン、筋トレとテストステロン、テストステロンと亜鉛の関係もご覧ください。
特に肥満男性では、体重減少によってテストステロンが改善することを示す研究が数多くあります。
一方で、健康な男性が特定の食品や飲み物を摂取するだけで、テストステロンを大きく上昇させられるという根拠は限定的です。
当院からのメッセージ
コーヒーとテストステロンについては、
「コーヒーを飲むとテストステロンが上がる」
と単純に考えるのは適切ではありません。
研究によって結果が異なり、運動前のカフェイン摂取によって一時的なテストステロン反応が変化する可能性はあるものの、コーヒーを日常的に飲むことで、長期的にテストステロンが高くなることが証明されているわけではありません。
テストステロンを意識するのであれば、コーヒーを「男性ホルモンを上げる食品」と考えるより、
睡眠・体重・運動・飲酒・食事など、生活習慣全体を整えること
を優先することをおすすめします。
また、疲れやすい、性欲が低下した、朝立ちが減った、筋力が落ちた、気分が落ち込むなどの症状が続いている場合には、コーヒーやサプリメントで対応するのではなく、一度男性更年期外来でテストステロンを含めた血液検査を受けることも選択肢になります。当院の保険診療・自費診療については男性更年期障害の保険適用についてもご確認ください。
テストステロン全般についてはテストステロン総合ガイドで、基準値・原因・維持する方法・TRT・保険・PCTまでまとめて解説しています。
参考文献
-
Lopez DS, Advani S, Qiu X, et al. Caffeine intake is not associated with serum testosterone levels in adult men: cross-sectional findings from the NHANES 1999-2004 and 2011-2012. Aging Male. 2019;22(1):45-54. doi:10.1080/13685538.2018.1465912.(PMID: 29692226)
-
Frey T, Platz EA, Kanarek N, Bradwin G, Dobs AS, Rohrmann S. Consumption of caffeinated beverages and serum concentrations of sex steroid hormones in US men. Cancer Causes Control. 2018;29(1):157-166.(PMID: 29177989)
-
Wedick NM, Mantzoros CS, Ding EL, et al. The effects of caffeinated and decaffeinated coffee on sex hormone-binding globulin and endogenous sex hormone levels: a randomized controlled trial. Nutr J. 2012;11:86.(PMID: 23078574)
-
Beaven CM, Hopkins WG, Hansen KT, Wood MR, Cronin JB, Lowe TE. Dose effect of caffeine on testosterone and cortisol responses to resistance exercise. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2008;18(2):131-141.(PMID: 18458357)
-
Landry TM, Saunders MJ, Akers JD, Womack CJ. Caffeine added to coffee does not alter the acute testosterone response to exercise in resistance trained males. J Sports Med Phys Fitness. 2019;59(9):1435-1441.(PMID: 31610637)
-
Grosso G, Godos J, Galvano F, Giovannucci EL. Coffee, Caffeine, and Health Outcomes: An Umbrella Review. Annu Rev Nutr. 2017;37:131-156.(PMID: 28826374)