大豆・納豆・味噌は長生きにつながる?|死亡率との関係を医師が解説
納豆・味噌・豆腐・豆乳などの大豆食品は「体に良い」と言われますが、実際に寿命や死亡率とどう関係するのでしょうか。2020年に日本から発表された約9万人規模の研究をはじめ、近年のエビデンスからは「大豆食品の種類によって健康との関連が異なる可能性」が見えてきています。ここでは、わかっていること・わかっていないことを整理します。
「大豆は健康に良い」は本当?
日本人にとって身近な大豆食品は、大きく2つに分けられます。近年の研究では、この2グループで死亡率との関連が異なる可能性が示されています。
発酵大豆食品
納豆・味噌
死亡率の低下と関連する可能性が報告されています。
非発酵大豆食品
豆腐・豆乳・煮豆
死亡率との有意な関連は認められていません(=害があるという意味ではありません)。
2020年に日本から発表された大規模研究をきっかけに研究が積み重ねられ、現在わかっていることを順に見ていきます。
約9万人を15年追跡した日本の研究(BMJ 2020)
医学誌 BMJ に掲載された研究では、日本人約93,000人を約15年間追跡し、大豆食品の摂取量と死亡率との関係を調べました。結果は次のとおりです。
| 食品カテゴリー | 死亡率との関連 |
|---|---|
| 大豆食品全体(総摂取量) | 総死亡率の有意な低下は認められず |
| 発酵大豆食品(納豆・味噌) | 総死亡率が約10%低い傾向 |
| 納豆 | 心血管疾患による死亡リスクが低い傾向 |
「大豆食品をとにかくたくさん食べれば良い」というより、何を食べるか(発酵しているか)が関係している可能性を示した研究です。
特に納豆と心血管疾患の関連が注目されています
発酵大豆食品の中でも、納豆をよく食べる人で心血管疾患による死亡リスクが低いという結果が示されました。納豆には次のような成分が含まれます。
ナットウキナーゼ
ポリアミン(発酵で増加)
イソフラボン
食物繊維
これらが血管や骨の健康に関与している可能性が考えられていますが、どの成分が実際に効果をもたらしているのかは、まだ明らかになっていません。
豆腐が悪いわけではありません
この研究で豆腐などの非発酵大豆食品は死亡率との有意な関連が認められませんでしたが、これは「効果が証明されなかった」だけで、「害がある」と示されたわけではありません。
豆腐は良質なたんぱく質を多く含み、飽和脂肪酸が少ない優れた食品です。動物性の脂質を大豆たんぱくに置き換える食べ方は、コレステロール管理の面でも役立ちます(脂質異常症のページもご覧ください)。健康的な食事の一部として十分におすすめできます。
なぜ発酵で違いが出るのでしょう?
発酵によって、大豆にはさまざまな変化が起こります。
- イソフラボンの吸収性が高まる(配糖体からアグリコンへ)
- 発酵菌が作る代謝産物が増える
- ビタミンK₂が増加する
- ナットウキナーゼなどの酵素が生じる
これらが血管や代謝に良い影響を与えている可能性がありますが、現時点では「発酵そのもの」が死亡率低下の原因であるとは証明されていません。
「健康な人ほど納豆を食べている」可能性
この研究は前向きコホート研究です。信頼性の高い研究デザインですが、薬の臨床試験のように「納豆を食べたから長生きした」と証明することはできません。納豆をよく食べる人には、次のような傾向があるかもしれません。
- 野菜の摂取量も多い
- 喫煙率が低い
- 運動習慣がある
研究ではこうした要因を統計学的に補正していますが、すべての影響を完全に取り除くことはできません。著者らも「関連は認められたが、因果関係とは断定できない」と慎重に結論づけています。
最近の研究でも発酵食品は注目されています
2025年 システマティックレビュー
複数の前向きコホート研究をまとめた解析。発酵食品は全死亡率・心血管疾患死亡率をわずかに低下させる可能性が示されました。
2025年 高齢男性15年コホート
納豆摂取量が多い群で全死亡率が低い可能性が報告されました。
日本の納豆に関する研究は比較的一貫した結果が得られていますが、対象地域が日本に限られるため、そのまま世界中に当てはめるには慎重な解釈が必要です。
「大豆で男性ホルモンが減る」は本当?
「イソフラボンは女性ホルモンに似ているから、男性が食べるとテストステロンが下がるのでは?」という心配は少なくありません。特に男性更年期障害(LOH症候群)でテストステロン補充療法(TRT)を受けている方・検討中の方からよくいただく質問です。
しかし現在のエビデンスでは、この心配を支持する結果は得られていません。2021年のメタアナリシス(41試験・約1,700人の男性)では、大豆食品やイソフラボンを摂取しても、次のいずれにも有意な変化は認められませんでした。
| ホルモン指標 | 大豆・イソフラボン摂取による変化 |
|---|---|
| 総テストステロン | 有意な変化なし |
| 遊離テストステロン | 有意な変化なし |
| エストラジオール(E2) | 有意な変化なし |
| SHBG | 有意な変化なし |
2025年には、健康な男性のみを対象とした用量反応メタアナリシスでも、通常の食事やサプリメントの範囲ではテストステロン・遊離テストステロンに影響しないと報告されています。テストステロンに関わる生活習慣はテストステロンを上げる方法で解説しています。
イソフラボンは「植物性エストロゲン」だが女性ホルモンではない
イソフラボンは「植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)」と呼ばれるため女性ホルモンそのものと思われがちですが、これは誤解です。
- イソフラボンはエストロゲン受容体に弱く結合する天然成分で、体内のエストラジオール(E2)と全く同じ働きをするわけではない
- 近年はSERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)のように、組織によって作用が異なる物質として理解されている
- 2025年のシステマティックレビューでも、イソフラボンは女性においても実際のエストロゲン作用を示さなかったと報告されている
「植物性エストロゲン=女性ホルモン」と単純に考えることはできません。ホルモン値の見方は男性ホルモン・TRT関連検査の基準値一覧もご参照ください。
TRT中でも大豆を避ける必要はありません
現在のエビデンスでは、通常の食事として納豆・豆腐・味噌を食べることでTRTの効果が弱くなるという報告はありません。むしろ大豆食品は、健康維持に役立つ栄養素を豊富に含みます。
食物繊維
不飽和脂肪酸
発酵食品(納豆・味噌)
TRTを受けている方も、通常の食事として大豆食品を制限する必要はないと考えられています。TRT中に胸の張りや違和感がある場合は、大豆とは別の要因(女性化乳房など)を確認します。男性更年期障害やTRTの詳細は男性更年期障害(LOH症候群)のページで解説しています。
健康は「一つの食品」で決まりません
納豆は優れた食品ですが、納豆だけ食べれば長生きできるわけではありません。健康寿命を延ばすには、次のような要素を組み合わせることが最も重要です。
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- 禁煙
- 適正体重の維持
- 野菜・魚・たんぱく質を含むバランスの良い食事
納豆や味噌は、そうした健康的な食生活を支える食品の一つと考えるのが良いでしょう。
まとめ
- 大豆食品全体が死亡率を下げることは証明されていない
- 納豆・味噌などの発酵大豆食品は、全死亡率・心血管疾患死亡率の低下と関連すると日本の大規模研究で報告されている
- ただし観察研究であり、「食べれば長生きする」と証明されたわけではない
- 豆腐など非発酵の大豆食品も、良質なたんぱく質源として十分におすすめできる
- 大豆・イソフラボンは男性のテストステロンを下げず、TRT中も制限は不要
納豆や味噌は栄養価の高い食品です。毎日の食事に無理なく取り入れることは、健康的な生活習慣の一つとして十分におすすめできます。生活習慣や検査についてご相談がある方は一般内科へお気軽にお問い合わせください。
参考文献
- Katagiri R, Sawada N, Goto A, et al. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study. BMJ. 2020;368:m34.(PMID: 31996350)
- Fujita Y, Kouda K, Tamaki J, et al. A 15-year cohort study of self-reported fermented soybean (natto) intake and all-cause mortality in elderly men. Clin Nutr ESPEN. 2025.(PMID: 40516860)
- Paveljšek D, Pertziger E, Fardet A, et al. A systematic review of prospective evidence linking non-alcoholic fermented food consumption with lower mortality risk. Front Nutr. 2025.
- Matalas A, Panagiotakos D, Fardet A, et al. Fermented foods consumption, all-cause, and cause-specific mortality: a meta-analysis of prospective cohort studies. Front Nutr. 2026.
- Reed KE, Camargo J, Hamilton-Reeves J, Kurzer M, Messina M. Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: An expanded and updated meta-analysis of clinical studies. Reprod Toxicol. 2021;100:60-67.(PMID: 33383165)
- Rajaie SH, Mohseni-Takalloo S, Sadeghi O, Hashempur MH. The impact of soy products and isoflavones on male reproductive hormones: a systematic review and dose-response meta-analysis of randomized controlled trials. Food Frontiers. 2025;6(6):3166-3179.
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