男性ホルモン・TRT関連検査の基準値一覧|テストステロン・E2・PSA・LH・FSH・PRLを医師が解説
要点
- 男性ホルモンの評価では、総テストステロン・遊離テストステロンを中心に、必要に応じてSHBG・LH・FSH・E2・PRL・PSAを測ります。
- 2022年改訂の国内ガイドラインでは、国際的な考え方と同様に総テストステロンを診断の基本とし、SHBGの影響が疑われるときなどに遊離テストステロンを補助的に評価します。
- テストステロンは早朝に高く午後に低下し、体調でも変動するため、早朝・空腹での測定と、低値なら別日の再検査が基本です。
このページでわかること
結論として、男性ホルモン関連の検査は「1項目・1回の数値」ではなく、複数の項目と症状、経過をあわせて解釈します。このページでは各項目の基準値と読み方をまとめます。
男性更年期(LOH症候群)の診断や、テストステロン補充療法(TRT)の経過観察では、血液検査が重要です。
しかし、
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- エストラジオール(E2)
- PSA
- LH
- FSH
- プロラクチン(PRL)
など、多くの項目があり、それぞれ意味が異なります。
このページでは、それぞれの検査値の基準値や見方、TRT中の考え方について解説します。詳しい治療の流れは男性更年期障害(LOH症候群)の症状・検査・治療をご覧ください。
総テストステロン(Total Testosterone)
主な役割
体内に存在するテストステロン全体を表します。遊離型だけでなくSHBGやアルブミンに結合している分も含みます。
一般的な基準値
約300〜1000 ng/dL(施設によって異なる)
Endocrine Societyでは264 ng/dL未満を低値と判断する参考値としています。
日本人男性参考値
日本泌尿器科学会の基準作成研究:2.01〜7.50 ng/mL(201〜750 ng/dL)
TRTでの目標
多くのガイドラインでは、若年成人の正常域中央付近を目標としています。詳しくはテストステロンとはのページもご覧ください。
遊離テストステロン(Free Testosterone)
実際に作用する活性型です。2022年改訂の国内ガイドラインでは、SHBGの影響が疑われるときなどに用いる補助的な指標として位置づけられています。詳しくは遊離テストステロン/E2比とはもあわせてご覧ください。
年齢別平均値
日本人年齢別基準値
| 年代 | 基準値(pg/mL) |
|---|---|
| 20代 | 8.5–27.9 |
| 30代 | 7.6–23.1 |
| 40代 | 7.7–21.6 |
| 50代 | 6.9–18.4 |
| 60代 | 5.4–16.7 |
| 70代 | 4.5–13.8 |
TRT導入の参考
- YAM80%:12.4 pg/mL
- YAM70%:10.9 pg/mL
が日本では参考値として提示されています。
年齢による変化
20代をピークとして徐々に低下します。一方、総テストステロンは年齢による低下が遊離テストステロンほど大きくありません。SHBG上昇の影響で遊離型がより低下します。
人種差について
欧米人と日本人では測定法や集団の違いがあります。そのため、日本人では国内の基準値を参考にすることが推奨されています。
総テストステロンと遊離テストステロンの違い
テストステロンには、血液中でタンパク質と結合しているものと、結合していない遊離型があります。総テストステロンは血液中に存在するテストステロン全体を反映する指標で、遊離テストステロンはその一部にあたります。両者は同じものを測定しているわけではなく、それぞれ異なる情報を持っています。2022年に改訂された国内のLOH症候群診療の手引きでは、総テストステロンを診断の基本とし、遊離テストステロンは補助的な検査として位置づけられています。SHBGの変動が疑われる場合など、遊離テストステロンが診断の参考として特に有用な場面もあります。
| 項目 | 総テストステロン | 遊離テストステロン |
|---|---|---|
| 意味 | 結合型+遊離型を合わせた総量 | 実際に細胞へ作用する活性型(全体の1〜2%) |
| 主な位置づけ | 現在の国内外ガイドラインで診断の基本となる指標 | 補助的な検査。SHBG異常が疑われる場合などに診断の参考となる |
| 低値の目安 | 約264〜300ng/dL未満(文献により異なる) | 7.5pg/mL未満(日本泌尿器科学会) |
| 加齢の影響 | 比較的緩やか | 20代をピークに明確に低下 |
| 左右する因子 | 大きな変動は少ない(日内変動あり) | SHBG(肥満で低下・加齢や甲状腺機能亢進で上昇) |
| 採血のタイミング | いずれも日内変動があり、午前中(できれば7〜11時)の採血が推奨されます | |
なぜ両方測定するのか
総テストステロンと遊離テストステロンは、それぞれ異なる情報を提供します。特にテストステロンはSHBGなどの結合蛋白の影響を受けるため、総テストステロンだけでは評価が難しいケースがあります。そのため当院では、初診時には両者を確認し、症状や他のホルモン検査とあわせて総合的に評価しています。ただし、総テストステロンや遊離テストステロンの数値だけで男性更年期と診断するわけではなく、症状・身体所見・LH/FSHなどの結果を含めて総合的に判断します。
当院の検査方針
- 総テストステロン:現在の当院における基本的な評価項目
- 遊離テストステロン:初診時に追加で測定し、診断の参考として使用
- LH・FSH:テストステロン低下の原因を考えるために評価
- 必要に応じて、プロラクチン、甲状腺機能、PSA、血算、肝腎機能などを評価
総テストステロンと遊離テストステロンは保険診療上の同時に算定できません。当院では初診時の診断をより丁寧に行うため、総テストステロンについて追加料金をいただかず測定しています。
LH
役割
精巣へテストステロン産生を指令するホルモンです。
高値:原発性性腺機能低下
低値:下垂体性/視床下部性
TRT中は低下します。
FSH
精子形成に関与します。妊孕性評価でも重要です。TRT中は低下します。妊活中の方は妊娠希望・男性不妊外来もご覧ください。
SHBG
テストステロンを結合するタンパク質です。
高くなる:高齢、甲状腺機能亢進、肝疾患
低くなる傾向:肥満
エストラジオール(E2)
基準値
施設差がありますが10〜40 pg/mL程度
TRT中
テストステロンからアロマターゼによって産生されます。
高値では女性化乳房、浮腫、乳房痛などがみられることがあります。一方、低すぎても骨密度低下、性機能低下につながる可能性があります。
数値のみではなく症状を踏まえて評価します。
プロラクチン(PRL)
基準値
施設基準に従います。
高値:高プロラクチン血症、下垂体腫瘍、薬剤などを考えます。
テストステロンが著しく低値の場合には測定が推奨されます。
プロゲステロン(P2)
男性でも少量分泌されています。通常のTRTでは routine に測定されることは多くありません。特殊な症例で参考となる検査です。
PSA
TRT前には測定します。その後も年齢やリスクに応じて経過観察を行います。
ヘマトクリット(Hct)
TRTで最も重要な副作用チェックです。赤血球増加症の確認に用います。54%以上では減量や休薬などを検討することが一般的です。
TRT中に定期的に確認する検査
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- PSA
- Hb
- Hct
- 赤血球数
- AST
- ALT
- 脂質
- E2(必要時)
- PRL(必要時)
よくある質問
Q. 総テストステロンと遊離テストステロンはどちらが重要ですか?
A. どちらも重要です。2022年改訂の国内ガイドラインでは、国際的な考え方と同様に総テストステロンを診断の基本とし、SHBGの影響が疑われる場合などに遊離テストステロンを補助的に評価することが推奨されています。
Q. 数値が正常なら男性更年期ではありませんか?
A. 必ずしもそうではありません。症状と採血結果を総合的に評価することが重要です。
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参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)診療の手引き」日本泌尿器科学会 LOH症候群診療ガイドライン(PDF)
- Bhasin S, Brito JP, Cunningham GR, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018.(PMID: 29562364)
※上記の基準値は代表的な文献・ガイドラインに基づく参考値であり、測定施設や測定方法により異なる場合があります。実際の評価は血液検査の結果とあわせて医師にご相談ください。