男性更年期障害は保険適用になる?|保険適用の条件・保険診療と自費診療の違い
結論:男性更年期障害(LOH症候群)は、条件を満たせば保険適用になります。
- 症状があるだけでは保険適用になりません。血液検査や診察を総合して判断します。
- 疲労感・性欲低下・勃起機能の低下・筋力低下・抑うつ気分などの症状があり、血液検査で男性ホルモン(テストステロン)の低下が確認され、他の病気が除外された場合に、保険診療の対象となることがあります。
- 筋力増強・競技力向上・アンチエイジング・美容のみが目的の場合、またはホルモン値が正常で症状が乏しい場合は、保険適用の対象外です。
- 3割負担の場合、初診・血液検査は約5,000円、保険でのテストステロン注射は1回2,000円以内が目安です。紹介状は不要です。
保険適用セルフチェック
次の項目にいくつ当てはまるか、確認してみてください。
あてはまるものにチェック
当てはまる項目がある方は、保険適用の対象となるかどうかを、診察・血液検査で総合的に判断します。チェックが多いほど男性更年期障害の可能性が上がるわけではなく、あくまで「相談してみる目安」としてご利用ください。まずはAMSスコアによるセルフチェックで症状の程度を確認することもできます。
保険適用になる人(具体例)
次のような症状があり、診察・血液検査で男性ホルモン低下症(LOH症候群)が疑われる場合は、保険診療の対象となることがあります。
- 疲労感・倦怠感が続く
- 性欲(リビドー)の低下
- 勃起機能の低下(ED)、朝立ちの減少
- 筋力低下・筋肉量の減少
- 抑うつ気分、意欲・集中力の低下
- ほてり・発汗、睡眠の質の低下
これらの症状に加え、AMSスコアで症状の程度を評価し、血液検査で遊離テストステロンなどの男性ホルモンが低いことが確認され、うつ病・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群などの他の原因が除外されたときに、医師がLOH症候群と診断します。
最終的な保険適用の可否は、症状・AMSスコア・血液検査の結果・年齢・他の病気の有無を総合して判断します。「症状がこれだけあれば必ず保険」「この数値なら必ず保険」という単純な線引きではありません。
保険適用にならないケース
×保険適用の対象外となる主なケース
- 筋力増強・ボディメイク目的:筋肉を増やすこと自体が目的の場合
- スポーツ・競技のパフォーマンス向上目的
- アンチエイジング・若返り目的
- 美容目的
- ホルモン値が基準内:症状があっても血液検査で男性ホルモンの低下が確認できないとき
- 症状が乏しい:検査だけを希望し、治療を要する症状がないとき(=健康診断的な受診)
- 症状の主な原因が他の病気:うつ病・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群などが主因と考えられるときは、その病気の治療が優先されます
これは、健康保険が「病気の診断・治療」を対象とする制度であり、医学的な必要性を伴わない目的は給付の対象外とされているためです。該当する場合でも、自費テストステロン補充療法(TRT)で対応が可能です。
男性更年期障害(LOH症候群)とは
男性更年期障害(LOH症候群:加齢男性性腺機能低下症候群)は、加齢やストレス、肥満などによって男性ホルモン(テストステロン)が低下し、身体・精神・性機能にさまざまな症状が現れる病気です。適切な診断と治療により改善が期待できます。全体像は男性更年期障害(LOH症候群)とはのページで解説しています。
男性更年期と似た症状を起こす病気
疲労感・意欲低下・集中力低下・性機能の低下などは、男性更年期障害だけでなく、次のような病気でも起こります。当院ではこれらが隠れていないかを確認したうえで診断します。
- うつ病・適応障害
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺機能低下症などの甲状腺疾患
- 糖尿病・血糖コントロール不良
- 貧血(鉄欠乏など)
- 慢性的な疲労・睡眠不足・過労
- 薬剤の影響(一部の降圧薬・向精神薬・ステロイドなど)
関連して男性更年期障害を見逃されやすい疾患、男性更年期障害と鬱、EDもご覧ください。
保険診療で受診した場合の流れ
「受診すると実際どうなるのか」を、順を追ってご説明します。
ご予約またはご来院いただき、問診票に記入していただきます。紹介状は不要です。医師が、症状の内容・いつからか・経過、生活習慣(睡眠・飲酒・運動)、既往歴、内服薬などを詳しくお伺いします。AMS質問票で症状の程度を数値化します。
血圧・体格(肥満の程度)、貧血や甲状腺の所見、必要に応じて前立腺・精巣の診察など、症状の背景を確認します。
遊離テストステロンなどの男性ホルモン、貧血(血算)、肝機能・腎機能、PSA(前立腺)、必要に応じて甲状腺機能・血糖・亜鉛などを測定します。初診当日に採血できます。結果は約1週間後の再診でご説明します。
テストステロンが低めに出た場合や、数値と症状が一致しない場合は、別の日に早朝・空腹で再検査して確認します(理由は次のセクションで説明します)。
症状・AMSスコア・血液検査・他の病気の有無を総合し、LOH症候群かどうか、保険適用の対象になるかを医師が判断してご説明します。治療の選択肢(生活習慣の改善/漢方/テストステロン補充療法)とそれぞれの見込みをお伝えします。
保険適用となり治療を希望される場合は、テストステロン注射を開始します(通常2〜4週間ごと)。軽症の場合や生活習慣の影響が大きい場合は、まず生活習慣の改善と経過観察を行い、必要に応じて治療を検討します。いずれの場合も定期的な血液検査で安全性と効果を確認します。
保険適用でも再検査が必要になる理由
テストステロンは、病気でなくても次の理由で値が変わります。1回の測定だけで判断しないのは、保険診療でも同じです。
- 日内変動がある:早朝に最も高く、午後から夕方に自然に低下します
- 体調で変化する:発熱・感染症・強いストレス・睡眠不足・過度の飲酒・急激なダイエットなどで一時的に下がります
- ガイドラインでも早朝採血・再検査が推奨されている:Endocrine Society・EAU(欧州泌尿器科学会)・EAA(欧州アンドロロジー学会)のいずれも、早朝・空腹時の測定と、低値の場合の別日再検査を推奨しています
そのため、初回で境界値・低値が出たときは、生活背景を見直したうえで早朝にもう一度測定し、結果が一貫していることを確認してから診断・治療に進みます。検査の詳細は男性更年期の検査についてをご覧ください。
保険適用で受けられる検査・治療
検査
初診時に診察と血液検査を行います。主に遊離テストステロン(男性ホルモン)、PSA(前立腺特異抗原)、貧血(血算)、肝機能・腎機能、亜鉛などのミネラル、必要に応じて甲状腺機能などを測定します。
治療(テストステロン補充療法)
LOH症候群と診断された場合、日本で保険承認されているテストステロンエナント酸エステルの筋肉注射を行います。通常2〜4週間ごとに注射し、症状と血液検査(多血症・肝機能・PSA・E2など)を確認しながら継続します。当院では現在も保険適用製剤を確保しています。
漢方薬・生活習慣の改善
症状や体質によっては漢方薬を用いることもあります。睡眠・肥満・運動・飲酒などの生活習慣の見直しも、保険診療の中でご説明します。
保険で使える治療・使えない治療
| 治療 | 保険適用 |
|---|---|
| テストステロン注射(筋肉注射) | ○(LOH症候群と診断された場合) |
| テストステロンゲル・クリーム(外用) | ×(日本ではLOH症候群の保険適用製剤として未承認) |
| hCG・クロミフェンなど(妊孕性の維持目的) | ×(自費) |
| テストステロン系サプリメント | × |
| パフォーマンス向上・美容目的のTRT | × |
注射方法の違いはテストステロン注射は筋肉注射と皮下注射どちらが良い?をご覧ください。
保険診療と自費診療の違い(比較表)
保険診療では、保険制度上、検査項目や治療内容に一定の制約があります。一方、自費診療では、症状や目的に応じてより幅広い検査・評価・治療を組み合わせることができます。どちらが優れているということではなく、目的とご希望に応じてお選びいただけます。
| 項目 | 保険診療 | 自費診療 |
|---|---|---|
| 対象 | 症状があり、LOH症候群と医師が診断した方 | 保険基準を満たさない方、競技・美容など保険外の目的の方、より詳しく調べたい方 |
| 診察・カウンセリング | 保険診療の範囲 | 目的に応じて時間をかけた相談がしやすい |
| 検査項目 | 症状評価に必要な範囲に限定 | SHBG・LH・FSH・PRL・E2・代謝関連などを追加できる |
| ホルモン評価 | 総・遊離テストステロンはどちらか一方 | 総・遊離テストステロンを同日に評価できる |
| PSA | 初回測定が基本。以後は必要時のみ | 希望に応じて測定できる |
| E2・PRL | 必要と判断された場合に測定 | 希望に応じて測定できる |
| 再検査の間隔 | 算定ルールの範囲内 | 短い間隔でも確認できる |
| 治療の選択肢 | テストステロン注射・漢方・生活指導 | 注射に加えクリーム等の外用、hCG併用なども選べる |
| 薬剤・投与量 | 保険承認の注射製剤、保険の範囲内の量・頻度 | 投与量・頻度の制限がない |
| フォローアップ | 2〜4週間ごと+定期採血 | 目的に応じて柔軟に設定 |
| 費用 | 保険負担(3割など) | 全額自己負担 |
※上記は保険診療の一般的な運用に関する情報であり、加入している保険や個々のケースにより異なる場合があります。正確な適用可否・算定は受診時に医師・医療機関へご確認ください。
まず保険診療で調べ、より幅広く一度に調べたい場合に自費で項目を追加することもできます。詳しくは自費テストステロン補充療法(TRT)についてもご覧ください。
治療費用の目安
| 内容 | 3割負担の目安 |
|---|---|
| 初診・血液検査 | 約5,000円 |
| テストステロン注射(保険) | 2,000円以内(負担割合・受診時間帯等により変動) |
| 定期採血(多血症・E2・肝機能等のチェック) | 4,000円前後(追加項目で変動) |
| 自費診療(参考) | テストステロン250mgにつき1回6,000円、hCG 5000IUにつき8,000円 |
当院で診療しているからこそ大切にしていること
- 「保険適用にすること」自体を目的に診療は行っていません。まず、症状の原因を丁寧に評価します。
- 睡眠不足、肥満、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病、薬剤の影響など、テストステロン以外の原因も含めて診察します。
- テストステロンの数値だけで画一的に治療を決めることはありません。境界値のとき、数値と症状が一致しないときは、再検査や生活面の見直しを行ってから方針を決めます。
- 患者さんの年齢、今後の妊娠の希望、仕事や生活の背景まで考慮して治療法(保険TRT/自費TRT/hCG併用/生活習慣改善)をご提案します。
保険適用でも生活習慣の改善が重要です
テストステロンの低下には、生活習慣や基礎疾患が大きく関わります。次のような取り組みで、テストステロン値や症状が改善することがあり、ガイドラインでも基礎疾患の治療と生活習慣の見直しが基本とされています。
体重を減らす
内臓脂肪はテストステロンを女性ホルモンへ変換しやすくします。5〜10%の減量でもホルモン値・症状の改善が報告されています(肥満と男性更年期障害の関係)。
運動する
筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせが有効です(テストステロンを上げる方法)。
睡眠を整える/SASを治療する
テストステロンは睡眠中に多く分泌されます。いびき・日中の眠気がある方は睡眠時無呼吸症候群の検査・CPAP治療を検討します。
糖尿病・肥満を管理する
血糖・体重のコントロールは、テストステロン環境の改善にもつながります。
これらは保険診療の中でも行える取り組みです。生活習慣の改善と、必要に応じたテストステロン補充療法を組み合わせることで、より良い結果が期待できます。
当院でよくあるご相談
男性更年期外来では、医師として次のようなご相談をよくお受けします(個別の患者さんの体験ではなく、一般的に多い相談内容です)。
- 仕事は何とかこなせるが、休日は疲れて動けない
- 朝すっきり起きられず、日中も体がだるい
- 健康診断では「異常なし」と言われるが、不調が続いている
- 精神科・心療内科を受診したが、思うように改善しない
- 「年齢のせい」と思ってあきらめていた
- 性欲やEDが気になるが、どこに相談してよいか分からない
よくある質問
Q. 何歳から保険適用になりますか?
A. 年齢の下限は定められていませんが、30歳以降が一つの目安です。年齢だけでなく、症状と血液検査の結果をもとに医師が判断します。
Q. 会社の健康診断だけで診断できますか?
A. できません。一般的な健康診断には男性ホルモンの項目が含まれず、測定方法や基準値も施設により異なります。診断には、症状の評価(AMSスコア)と、当院での血液検査(遊離テストステロンなど)、他の病気の除外が必要です。
Q. 保険で検査だけ受けられますか?
A. 保険診療は、症状があり医学的に治療が必要な方が対象です。症状がなく検査だけをご希望の場合は自費診療となります。症状がある方は、診察のうえで必要な検査を保険で行います。
Q. 薬(注射)だけ希望できますか?
A. 診察・血液検査・安全性の確認(PSA・多血症など)を行わずに注射だけを行うことはできません。テストステロン補充療法には、開始前の評価と定期的なモニタリングが必要です。
Q. 毎回PSAを測定しますか?
A. 保険診療では初回測定が基本で、異常がなければ毎回は測定しません。前立腺がんの確定診断がない場合は、3か月に1回・3回を上限に算定する運用が一般的です。TRT中は安全性確認のため定期的にモニタリングします。
Q. 保険診療から自費診療へ変更できますか?
A. 可能です。より幅広い検査や、投与量・頻度の柔軟性をご希望になった場合など、目的に応じて切り替えられます。
Q. 自費診療から保険診療へ変更できますか?
A. 症状と血液検査の結果からLOH症候群と診断され、保険適用の条件を満たす場合は、保険診療へ移行できます。
Q. 紹介状は必要ですか?
A. 不要です。直接ご予約・ご来院いただけます。他院の紹介状や検査結果をお持ちの場合はご持参ください(参考として拝見しますが、当院での再検査をお願いすることがあります)。
Q. 初診当日に治療できますか?
A. 初診当日は診察と血液検査を行い、治療開始は検査結果を確認する約1週間後の再診からとなります。安全に治療を始めるために、事前の評価が必要です。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. 男性更年期障害は内科や泌尿器科で診療されています。当院では保険診療による男性更年期外来を行っています。
Q. 会社帰りでも受診できますか?
A. はい。平日の午後診療は18:15まで受け付けています。大手町駅C2b出口直結・徒歩1分です。
Q. 妊活中でも受診できますか?
A. 受診いただけます。テストステロン補充療法は精子形成を抑制するため、妊娠をご希望の方には、精巣機能を保つhCGなどを用いた治療をご案内します。
Q. ED治療薬も一緒に処方できますか?
A. ED治療薬(バイアグラ・シアリス等)は自費診療です。男性更年期の保険診療と並行して、自費でED薬を処方することは可能です。
Q. 保険適用にならなかった場合はどうなりますか?
A. 競技目的・美容目的など保険適用外のケースでは、自費診療でのテストステロン補充療法(TRT)をご案内します。投与量・頻度の制限がなく、目的に応じた治療計画をご提案します。
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- 紹介状不要・初診当日に採血可能
- 3割負担の場合、初診・血液検査は約5,000円が目安
- 他の病気の除外も含めて総合的に診断
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会 編. LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)診療の手引き(2022). 日本泌尿器科学会(PDF)
- Bhasin S, Brito JP, Cunningham GR, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715-1744.(PMID: 29562364)
- Corona G, Goulis DG, Huhtaniemi I, et al. European Academy of Andrology (EAA) guidelines on investigation, treatment and monitoring of functional hypogonadism in males. Andrology. 2020;8(5):970-987.(PMID: 32026626)
- Salonia A, Bettocchi C, Boeri L, et al. European Association of Urology Guidelines on Male Sexual and Reproductive Health: 2025 Update on Male Hypogonadism, Erectile Dysfunction, Premature Ejaculation, and Peyronie’s Disease. Eur Urol. 2025.(PMID: 40340108)
- 日本内分泌学会. 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群). 日本内分泌学会 解説ページ
- 厚生労働省. 診療報酬の算定方法(保険診療の算定に関する一般的な情報).
このページについて
- 監修医:院長 片山泰輔(日本内科学会総合内科専門医/日本腎臓学会腎臓内科専門医)
- 所属:リーレクリニック大手町
- 更新日:2026年9月8日
- 参考ガイドライン:日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群診療の手引き」(2022)/Endocrine Society(2018)/EAA(2020)/EAU(2025)
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