男性更年期障害を見逃されやすい疾患
その不調、本当に「うつ病」だけでしょうか?|男性更年期障害(LOH症候群)で見逃されやすい病気とは
「年齢のせい」「ストレスのせい」と言われていませんか?
40〜60代になると、
- 疲れが抜けない
- やる気が出ない
- 気分が落ち込む
- 筋力が落ちた
- 性欲が低下した
- 関節が痛い
といった不調を感じる方が増えてきます。
これらの症状は、うつ病や適応障害、整形外科疾患などでもみられるため、それぞれの診療科で治療を受けている方も少なくありません。
もちろん、それらの病気が原因であることもあります。
しかし一方で、男性更年期障害(LOH症候群:加齢男性性腺機能低下症)が背景にあるにもかかわらず、気づかれないまま経過しているケースもあります。
今回は、男性更年期障害と間違われやすい病気や共通する症状、治療の違いについて解説します。
男性更年期障害とは?
男性更年期障害(LOH症候群)は、テストステロンの低下と、それに伴うさまざまな症状によって生活の質(QOL)が低下した状態です。
テストステロンは男性ホルモンとして知られていますが、
- 筋肉
- 骨
- 脂肪代謝
- 意欲
- 集中力
- 性機能
- 気分
など、全身の機能に関わっています。
そのため、テストステロンが低下すると症状は非常に多彩になります。
① うつ病・適応障害
男性更年期障害で最も見逃されやすいのが、精神疾患との区別です。
共通する症状
- 気分の落ち込み
- やる気が出ない
- 疲労感
- 集中力低下
- 不眠
- イライラ
- 仕事への意欲低下
これだけを見ると、うつ病や適応障害と区別することは簡単ではありません。
男性更年期を疑うヒント
一方で、
- 性欲低下
- 朝立ちの減少
- 勃起力低下
- 筋力低下
- 体脂肪増加
などが同時にみられる場合には、男性更年期障害も考える必要があります。
治療の違い
うつ病では抗うつ薬や精神療法が中心となります。
一方、男性更年期障害では生活習慣の改善に加え、適応があればテストステロン補充療法(TRT)などが検討されます。
もちろん、うつ病と男性更年期障害が同時に存在することも珍しくありません。
どちらか一方と決めつけず、総合的な評価が重要です。
② めまい・自律神経失調症
「検査では異常がない」と言われためまいの中にも、男性更年期障害が背景にあることがあります。
共通する症状
- めまい
- ふらつき
- 動悸
- 発汗
- 倦怠感
- 集中力低下
男性更年期障害では自律神経症状を伴うこともあり、「自律神経失調症」と診断されるケースもあります。
ただし、めまいには耳の病気や脳血管障害など重大な病気が隠れていることもあるため、まずは適切な診断を受けることが重要です。
③ 関節痛・整形外科疾患
「年齢だから仕方ない」と思われがちですが、
男性更年期障害では、
- 肩
- 膝
- 腰
- 股関節
などの痛みや違和感を訴える方もいます。
もちろん、変形性関節症やリウマチなど整形外科的疾患を除外する必要があります。
しかし画像検査では説明しきれない痛みや、全身のこわばり、筋力低下を伴う場合には、男性ホルモン低下が関与している可能性もあります。
④ サルコペニア・フレイル
テストステロンは筋肉量の維持に重要なホルモンです。
そのため男性更年期障害では、
- 筋肉量低下
- 筋力低下
- 歩行速度低下
- 疲れやすい
といった症状がみられることがあります。
一方で、サルコペニアの原因はテストステロン低下だけではありません。
- 加齢
- 栄養不足
- 運動不足
- 慢性疾患
など、さまざまな要因が関係します。
そのため治療の基本は、
- レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)
- 十分なタンパク質摂取
- 基礎疾患の治療
ですが、テストステロン低下が確認された場合には、その評価・治療も重要になります。
⑤ 慢性疲労・「年齢のせい」
実際には最も多いのが、このケースかもしれません。
「年齢だから疲れる」
「仕事が忙しいから」
「最近体力が落ちた」
と考えて数年間そのまま過ごしている方も少なくありません。
しかし、
- 性欲低下
- 朝立ちの減少
- 筋力低下
- 内臓脂肪増加
- 集中力低下
などが同時にある場合は、一度男性ホルモンも確認する価値があります。
男性更年期障害だけを疑うのも危険
一方で、
「疲れているから男性更年期だ」
と自己判断することもおすすめできません。
同じような症状は、
- 甲状腺疾患
- 貧血
- 糖尿病
- 睡眠時無呼吸症候群
- うつ病
- 悪性腫瘍
- 慢性感染症
などでも起こります。
そのため、症状だけで診断することはできません。
男性更年期障害は、症状と血液検査の両方を合わせて評価する病気です。
一度は遊離テストステロンを調べてみませんか?
日本では、男性更年期障害の評価に遊離テストステロンが重視されています。
特に、
- 40歳以上
- 疲労感が続く
- 性欲が低下した
- 朝立ちが減った
- 筋力が落ちた
- 仕事への意欲が低下した
- 肥満がある
- うつ病として治療中だが改善が乏しい
といった方では、一度血液検査で遊離テストステロンを確認することをおすすめします。
▶男性更年期障害の症状や保険診療での検査・治療はこちら
もちろん、数値だけで診断が決まるわけではありません。
症状や生活習慣、ほかの病気の有無も含めて総合的に判断することが重要です。
男性更年期障害は治療できる病気です
男性更年期障害の治療は、テストステロン補充療法だけではありません。
患者さん一人ひとりの状態に応じて、
- 運動療法
- 減量
- 睡眠改善
- ストレス対策
- 栄養管理
- 必要に応じた薬物療法
などを組み合わせて行います。
原因がテストステロン低下だけではないことも多いため、全身の健康状態を評価することが大切です。
男性更年期障害の症状や保険診療については、男性更年期障害の総合ページをご覧ください。
まとめ
男性更年期障害は、
- うつ病
- 適応障害
- めまい
- 自律神経失調症
- 関節痛
- サルコペニア
- 慢性疲労
など、さまざまな病気と症状が重なるため、見逃されることがあります。
一方で、「何でも男性更年期」と考えるのも適切ではありません。
大切なのは、症状の原因を一つずつ確認し、その中にテストステロン低下が関係していないかを評価することです。
「年齢だから仕方ない」とあきらめる前に、一度遊離テストステロンを含めた検査を受けてみてはいかがでしょうか。
原因が分かることで、これまで改善しなかった不調に新しい治療の選択肢が見つかるかもしれません。