高タンパク食・ロイシン・EAAでテストステロンは上がる?|筋肉・健康寿命との関係をエビデンスで解説
「タンパク質をたくさん摂るとテストステロンは増える?」
筋トレを始めると、
- プロテイン
- ロイシン
- 必須アミノ酸(EAA)
などを勧められることが多くなります。
一方で、「高タンパク食はテストステロンを増やす」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
結論から言うと、タンパク質そのものがテストステロンを直接増やすことを示した強いエビデンスはありません。
しかし筋肉量の維持や運動効果の向上、肥満予防を通じて、結果的にテストステロンを維持しやすい身体づくりに役立つことは、多くの研究で支持されています。
タンパク質は筋肉の「材料」
筋肉は日々、合成と分解を繰り返しています。
筋トレで刺激を加えても、十分なタンパク質がなければ筋肉は効率よく増えません。
特に中高年では加齢によって筋タンパク質合成の反応が鈍くなる「アナボリックレジスタンス」が起こるため、若い頃よりも十分なタンパク質摂取が重要になります。
筋トレと男性ホルモンの関係は筋トレとテストステロンで解説しています。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)では、筋力トレーニングを行う人では
1.4〜2.0 g/kg/日程度
のタンパク質摂取が推奨されています。
高タンパク食はテストステロンを上げる?
現在のエビデンスでは、適切な高タンパク食がテストステロンを持続的に上昇させるという証拠は限定的です。
一方極端な低タンパク食では、筋肉量や身体機能が低下しやすくなります。
また減量中でも十分なタンパク質を摂取すると、筋肉を維持しながら脂肪を減らしやすくなります。
肥満の改善はインスリン抵抗性や慢性炎症の改善につながり、男性ホルモンにとっても良い環境を作ります。
つまり高タンパク食は「直接テストステロンを増やす」のではなく、テストステロンが働きやすい身体を作ると考えるのが適切です。
ロイシンは筋肉を作るスイッチ
ロイシンは、必須アミノ酸の一つであり筋タンパク質合成を促進する
mTOR経路
を活性化する重要なアミノ酸です。
筋トレ後にロイシンを十分に摂取すると、筋タンパク質合成が効率よく進むことが知られています。
特に
- ホエイプロテイン
- 乳製品
- 赤身肉
- 魚
にはロイシンが豊富に含まれています。
1回の食事で約2〜3gのロイシンを摂取すると、筋タンパク質合成が最大限刺激されやすいと考えられています。
EAA(必須アミノ酸)はBCAAより重要
以前は、BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)が人気でした。
しかし近年では、筋肉を作るには9種類すべての必須アミノ酸(EAA)が必要という考え方が主流です。
ロイシンだけが十分にあっても、他の必須アミノ酸が不足していれば筋肉は十分に合成されません。
そのため、現在ではEAAまたは良質なタンパク質(ホエイプロテインなど)を摂取する方が理論的にも実践的にも優れていると考えられています。
筋肉量が増えることはテストステロンにもプラス
筋肉は単なる運動器ではありません。
筋肉からは
- Myonectin
- Irisin
- IL-6(運動時)
など、さまざまなマイオカインが分泌されます。
これらは
- インスリン感受性改善
- 慢性炎症抑制
- 脂肪減少
などに関与しています。
さらに、筋肉量が維持されることで運動量も増え、内臓脂肪が減少し結果として遊離テストステロンを維持しやすくなる可能性があります。
高齢者ではサルコペニア予防にも重要
40代以降では、毎年少しずつ筋肉量が減少していきます。
この状態が進行すると、サルコペニアとなり、
- 転倒
- 骨折
- 要介護
のリスクが高まります。
十分なタンパク質とレジスタンストレーニングを組み合わせることは、現在最もエビデンスのあるサルコペニア予防法です。
サルコペニア・骨粗鬆症の予防は骨粗鬆症やサルコペニア予防の筋トレとテストステロンもご覧ください。
男性更年期障害(LOH症候群)の方では、TRTによって筋タンパク質合成が促進される可能性があり、そこへ適切なタンパク質摂取を組み合わせることで、より効果的な筋肉づくりが期待できます。
食事から摂るのがおすすめ
タンパク質はできるだけ食事から摂ることが理想です。
おすすめの食品は、
- 鶏胸肉
- 赤身牛肉
- 魚
- 卵
- ギリシャヨーグルト
- 納豆
- 豆腐
などです。
十分な量を食事だけで摂るのが難しい場合には、ホエイプロテインを補助的に利用するとよいでしょう。
なお、プロテインは「特別な薬」ではなく、牛乳や大豆由来のタンパク質を効率よく摂取するための食品です。
大豆たんぱくと健康の関係は大豆・納豆・味噌は長生きにつながる?、クレアチンについてはクレアチンの効果とテストステロンもご覧ください。
当院からのメッセージ
タンパク質やロイシン、EAAは、テストステロンを直接増やす魔法の栄養素ではありません。
しかし、
- 筋肉量の維持
- 筋トレ効果の向上
- サルコペニア予防
- 肥満改善
- 健康寿命の延伸
という点では非常に重要です。
そして筋肉量が維持され、運動習慣が身につき、脂肪が減ることは結果として男性ホルモンにとっても良い環境につながります。
テストステロンを高める近道は、「何か一つのサプリメント」ではなく、筋トレ・十分なタンパク質・良質な睡眠を組み合わせた生活習慣です。
生活習慣全般はテストステロンを上げる方法、症状が気になる方は男性更年期障害(LOH症候群)をご覧ください。
参考文献
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- Morton RW, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52(6):376-384.(PMID: 28698222)
- Wolfe RR. Branched-chain amino acids and muscle protein synthesis in humans: myth or reality? J Int Soc Sports Nutr. 2017.
- Churchward-Venne TA, et al. Leucine supplementation of a low-protein mixed macronutrient beverage enhances myofibrillar protein synthesis in young men. Am J Clin Nutr. 2014.
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- Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis (EWGSOP2). Age Ageing. 2019;48(1):16-31.(PMID: 30312372)
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- 日本サルコペニア・フレイル学会 編. サルコペニア診療ガイドライン2017年版(一部改訂).