紫外線はテストステロンを上げる?|ビタミンDとの関係をエビデンスで解説
「日光を浴びると男性ホルモンが増える」は本当?
近年、SNSやYouTubeなどで、
- 「日光浴でテストステロンが上がる」
- 「紫外線を浴びると男らしくなる」
- 「ビタミンDを増やせば男性ホルモンが上がる」
といった情報を目にすることがあります。
確かに紫外線、ビタミンD、テストステロンには関連があります。
しかし、その関係は単純ではありません。
今回は現在の研究結果をもとに、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを解説します。
ビタミンDは「ビタミン」ではなくホルモンに近い働きをする
ビタミンDは食事から摂取できるだけでなく、皮膚が紫外線(UVB)を浴びることで体内でも作られます。
その後、
- 肝臓
- 腎臓
で活性化され、カルシウム代謝だけでなく、
- 免疫機能
- 筋肉
- 骨
- 生殖機能
など、多くの組織に作用します。
そのため近年では「ホルモンに近い働きをする物質」と考えられています。
精巣にもビタミンD受容体がある
興味深いことに、ビタミンD受容体(Vitamin D Receptor:VDR)は、
- 精巣
- ライディッヒ細胞
- 精子
などにも存在しています。
つまり理論上は、ビタミンDが男性ホルモン産生や精子形成に関与する可能性があります。
この発見をきっかけに、世界中でビタミンDと男性ホルモンの研究が進められるようになりました。
ビタミンDが低い人ほどテストステロンも低い?
多くの観察研究では、
血中ビタミンD濃度(25-OHビタミンD)が低い男性ほど、テストステロンも低い傾向が報告されています。
しかし、ここで重要なのは、
「関連がある」ことと「因果関係がある」ことは同じではない
という点です。
例えば、
- 肥満
- 運動不足
- 屋外活動が少ない
人では、ビタミンDもテストステロンも低くなりやすいため、単純にビタミンD不足だけが原因とは言えません。
ビタミンDを飲めばテストステロンは上がる?
ここが最もよくある質問です。
結論から言うと、
健康な男性全員でテストステロンが上がることを示した十分なエビデンスはありません。
初期にはビタミンD補充によってテストステロンが上昇したという小規模研究もありました。
しかし、その後に行われた複数のランダム化比較試験やメタアナリシスでは、
ビタミンD補充によるテストステロンの有意な上昇は一貫して確認されていません。
つまり、
「ビタミンDはテストステロンを増やすサプリ」
とは現時点では言えません。
ビタミンD不足を改善する意味はある
テストステロンが劇的に上昇しないとしても、
ビタミンD不足を放置してよいという意味ではありません。
ビタミンD不足は、
- 骨粗しょう症
- 筋力低下
- 転倒リスク
- 免疫機能
などとの関連が明らかになっています。
また、一部の研究では、
- 精子運動率
- 妊孕性
との関連も報告されています。
男性の健康全体を考えるうえで、適切なビタミンD濃度を維持することは重要です。
紫外線を浴びればテストステロンは上がる?
近年、紫外線が皮膚を介してホルモン分泌へ影響する可能性も研究されています。
動物実験では、
紫外線照射によって生殖ホルモンが変化したという報告があります。
また、人を対象とした小規模研究でも、紫外線曝露後に性欲や一部ホルモンの変化を認めた報告があります。
しかし、
現時点では、
「日光浴でテストステロンが上昇する」と結論づけられるほどのエビデンスはありません。
今後さらに研究が必要な分野です。
紫外線は浴びすぎにも注意
紫外線にはメリットだけではなく、
- シミ
- 光老化
- 皮膚がん
などのリスクもあります。
そのため、
「テストステロンを上げたいから長時間日焼けをする」
ということはおすすめできません。
適度な日光浴と紫外線対策を両立することが大切です。
ビタミンD不足が心配な方は
ビタミンD不足は、
- 屋内勤務
- 日焼け対策を徹底している
- 高齢者
- 肥満
- 冬季
などで起こりやすいことが知られています。
血液検査(25-OHビタミンD)によって体内のビタミンD状態を確認できます。
不足している場合には、食事やサプリメントによる補充を検討します。
男性更年期ではビタミンDも確認する価値がある
男性更年期症状では、
- テストステロン
- 甲状腺機能
- 貧血
- 亜鉛
などを確認することがあります。
ビタミンD不足も、
- 筋力低下
- 疲労感
- 転倒リスク
などに関係するため、症状によっては併せて評価すると役立つ場合があります。
特に高齢者や屋内で過ごす時間が長い方では、ビタミンD不足が隠れていることも少なくありません。ビタミンD不足と抑うつ気分の関係についてはメンタルヘルスとテストステロン・亜鉛・ビタミンD・マグネシウムで解説しています。
まとめ
紫外線、ビタミンD、テストステロンには一定の関連があります。
しかし現在のエビデンスでは、
- ビタミンDが低い人ほどテストステロンも低い傾向はある
- ただし、ビタミンDを補充すれば誰でもテストステロンが上がるわけではない
- 紫外線でテストステロンが上昇するという十分な証拠もまだない
というのが科学的に最も妥当な結論です。
一方で、ビタミンDは骨や筋肉、免疫機能、男性の健康全体に関わる重要な栄養素です。
疲労感や筋力低下、男性更年期症状が気になる方は、テストステロンだけでなくビタミンDの状態も確認してみることをおすすめします。
男性更年期障害の症状や保険診療については、男性更年期障害の総合ページをご覧ください。
テストステロン全般についてはテストステロン総合ガイドで、基準値・原因・維持する方法・TRT・保険・PCTまでまとめて解説しています。
参考文献
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