いわゆる肝臓のケア剤の成分・作用機序・特徴・肝臓以外の効果・主な使い分けを整理します。
肝臓の悪くない方が、疲労回復目的に使う場合には自費での診療となります。
1. リバオール®(一般名:チオクト酸、α-リポ酸)
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分類:補酵素型ビタミン様物質(抗酸化剤)
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主な作用機序:酸化ストレス軽減、エネルギー代謝補助(クエン酸回路の補酵素)
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肝臓への効果:肝細胞の酸化障害を抑え、慢性肝疾患での疲労感改善
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肝臓以外への効果:
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糖代謝改善(糖尿病性ニューロパチーに保険適応あり)
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抗酸化作用による末梢血流改善
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皮膚のくすみ改善目的のサプリ利用も多い
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特徴・使い分け:
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疲労感や代謝低下が主体の肝疾患に選択
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抗酸化・糖代謝改善を狙う場合にも併用しやすい
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2. ウルソ®(一般名:ウルソデオキシコール酸)
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分類:胆汁酸製剤
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主な作用機序:
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胆汁分泌促進
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胆汁酸組成改善(疎水性毒性胆汁酸を減らす)
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肝細胞保護
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肝臓への効果:
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慢性肝疾患(特に胆汁うっ滞型)で肝機能改善
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原発性胆汁性胆管炎(PBC)や薬物性肝障害で有効
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肝臓以外への効果:
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胆石溶解(コレステロール胆石)
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消化不良・食後のもたれ改善
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特徴・使い分け:
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胆汁うっ滞が関与する肝障害や胆道疾患に第一選択
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長期内服で比較的安全性高い
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3. タウリン
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分類:アミノ酸誘導体
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主な作用機序:
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胆汁酸抱合促進
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細胞膜安定化
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浸透圧調節
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肝臓への効果:
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胆汁分泌促進による肝機能改善
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アルコール性肝障害や脂肪肝での補助
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肝臓以外への効果:
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強心作用(カルシウム流入調節)
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抗酸化・網膜保護(目の健康)
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疲労回復(エナジードリンク成分として有名)
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特徴・使い分け:
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軽度~中等度の肝機能低下+全身疲労に
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安価で食品由来なので安全性高い
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4. ネオファーゲン®(一般名:グリチルリチン酸二カリウム)
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分類:甘草成分由来の肝庇護薬(注射製剤)
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主な作用機序:
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肝細胞膜安定化
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炎症抑制(副腎皮質ホルモン様作用)
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ALT/ASTの急速低下作用
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肝臓への効果:
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急性肝炎・薬物性肝障害・慢性肝炎の逸脱酵素改善
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特に注射で即効性あり
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肝臓以外への効果:
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抗アレルギー作用(湿疹・蕁麻疹)
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抗炎症作用(口内炎・咽頭炎)
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特徴・使い分け:
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急性増悪やALT急上昇時の短期集中治療に
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長期大量投与は偽アルドステロン症に注意(低K血症・浮腫)
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5. グリチロン®(一般名:グリチルリチン酸+グリシン+システイン)
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分類:甘草成分+アミノ酸配合の経口肝庇護薬
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主な作用機序:
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肝細胞保護(グリチルリチン酸)
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抗酸化・解毒促進(グリシン、システイン)
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肝臓への効果:
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慢性肝疾患での肝機能安定化
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薬物性肝障害の補助療法
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肝臓以外への効果:
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皮膚の炎症・アレルギー抑制
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疲労回復補助
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特徴・使い分け:
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慢性肝炎や薬物性肝障害の長期経口管理に
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ネオファーゲンの注射治療後の経口移行にも使いやすい
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まとめ表(簡易比較)
薬剤名 | 主成分 | 主な肝作用 | その他の作用 | 主な使い分け |
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リバオール | α-リポ酸 | 酸化障害抑制・代謝改善 | 糖代謝改善、末梢循環改善、美容 | 疲労感主体の肝疾患、糖代謝悪化例 |
ウルソ | ウルソデオキシコール酸 | 胆汁うっ滞改善、肝細胞保護 | 胆石溶解、消化改善 | 胆道疾患、PBC、うっ滞型肝障害 |
タウリン | アミノ酸誘導体 | 胆汁酸抱合促進 | 強心、抗酸化、疲労回復 | 軽度肝障害+全身疲労 |
ネオファーゲン | グリチルリチン酸二カリウム | 炎症抑制、逸脱酵素低下 | 抗アレルギー、抗炎症 | 急性肝炎・急性増悪時(注射) |
グリチロン | グリチルリチン酸+アミノ酸 | 肝細胞保護、抗酸化 | 皮膚炎症抑制、疲労回復 | 慢性肝疾患の長期経口管理 |