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アナボリックステロイドの使い分けや副作用対策

ボディビル競技におけるアナボリックステロイドの使い分けとトレンド

球技や格闘技、ボディビルにおけるアナボリックステロイド(AAS)の使用は、筋肉増強、脂肪削減、競技パフォーマンス向上を目的として一部の競技者によって行われています。

テストステロン、ボルデノン、トレンボロンなどのAASは、それぞれ特性や効果が異なり、目的やサイクルに応じて使い分けられます。

以下に、使い分け、メニュー、最近のトレンド、ケア剤について詳細に解説します。

ただし、アナボリックステロイドの使用は重大な健康リスクを伴い、日本ではドーピング目的での使用は禁止されており、医療目的以外での使用は違法です。

本回答は情報提供を目的としており、ステロイドの使用を推奨するものではありません。

保険診療でのテストステロン補充療法(TRT)はこちらをご覧ください。


1. アナボリックステロイドの種類と使い分け

テストステロン

特性
テストステロンはAASの基盤となる薬剤で、筋肥大と筋力向上に高い効果を発揮します。アナボリック(筋肉合成)作用とアンドロゲニック(男性化)作用のバランスが良く(100:100)、初心者から上級者まで広く使用されます。エナンテート、シピオネート、プロピオネートなどのエステル型があり、作用時間、投与頻度が異なります。

用途

  • バルクアップ:筋肉量を増やすサイクルで主に使用。週250~1000mgが一般的(初心者は低用量から)。

  • ベース薬剤:他のステロイドとのスタック(併用)の基礎としてほぼ必須。

  • カッティング:脂肪削減時にも筋肉維持のために低~中用量で使用。

メリット

  • 安全性が高く、副作用が管理しやすい。

  • 価格も比較的安価。

副作用

  • エストロゲンへの変換による女性化乳房、水分貯留、脱毛、高血圧など。

使い分けポイント

  • 長期間作用するエナンテートやシピオネートはバルクアップに、短期間作用のプロピオネートはカッティングやコンテスト直前に適している。

ボルデノン(エクイポイズ)

特性
テストステロンに似た構造を持ち、アナボリック作用が強く(100:50)、アンドロゲニック作用が低い。獣医学で使用されるが、ボディビルでも人気。食欲増進効果が特徴。

用途

  • バルクアップ:食欲増進により摂取カロリーを増やし、筋肉量増加をサポート。週400~800mg。

  • カッティング:筋肉の硬さや血管浮き出しを促進。

メリット

  • 副作用が少なく、初心者にも使いやすい。

  • テストステロンとの相性が良い。

副作用

  • エストロゲン変換による女性化乳房、腎臓負担、赤血球増加による血液粘度上昇。

使い分けポイント

  • トレンボロンの強い副作用が気になる場合の代替として選択。

  • 長期間(12~16週)のサイクルに適。

トレンボロン(アセテート、エナンテート)

特性
最も強力なAASの一つで、アナボリック・アンドロゲニック比が500:500(テストステロンの5倍)。筋肥大、脂肪燃焼、筋肉の硬さを劇的に向上させる。エストロゲンに変換されないため、水分貯留が少ない。

用途

  • カッティング:コンテスト準備で筋量と硬さを最大化。週150~300mg。

  • バルクアップ:短期間で劇的な筋肉増量を狙う上級者向け。

メリット

  • 脂肪燃焼と筋肉維持を同時に実現。

  • コルチゾール(筋分解ホルモン)を抑制。

副作用

  • 腎臓・肝臓負担、プロラクチン上昇による性機能障害、攻撃性増加、不眠、発汗、精神不安定。

使い分けポイント

  • 上級者向け。短期間(6~8週)のサイクルで使用し、副作用管理が必須。

  • コンテスト直前の「仕上げ」に最適。

その他のステロイド

  • ダイアナボル(メタンジエノン):経口剤で、バルクアップのキックスタートに使用。肝毒性が強い。

  • オキシメトロン(アナドロール):筋肥大と筋力増強に優れるが、肝毒性とエストロゲン様作用が強い。

  • スタノゾロール(ウィンストロール):カッティング向け。筋肉の硬さとドライな仕上がりを強調。

使い分けの原則

目的に応じた選択

  • バルクアップ:テストステロン+ボルデノンまたはダイアナボル

  • カッティング:テストステロン+トレンボロンまたはスタノゾロール

  • コンテスト準備:トレンボロン+スタノゾロール+低用量テストステロン

サイクル期間

  • 初心者:6~8週(テストステロンのみ)

  • 中級者:8~12週(テストステロン+ボルデノンまたはトレンボロン)

  • 上級者:12~16週(複数スタック)

スタック戦略

  • テストステロンはほぼ全てのサイクルに含める。

  • AR経由型(テストステロン、ボルデノン)と非AR経由型(トレンボロン、ナンドロロン)の併用は相乗効果が期待できる。

個人差の考慮

  • 体質や副作用耐性に応じて用量や薬剤を調整。

2. サイクルとメニューの例

初心者向けバルクアップサイクル(8週)

薬剤

  • テストステロン・エナンテート:週500mg(月・木に250mgずつ注射)

  • (オプション)ダイアナボル:1~4週、毎日20~30mg(経口)

ケア剤

  • アリミデックス(アナストロゾール):0.5mgを週2回(エストロゲン抑制)

  • 肝臓保護:シリマリン(ミルクシスル)毎日200mg

PCT(ポストサイクルセラピー)

  • サイクル終了後2週目から:クロミッド50mg/日+ノルバデックス20mg/日を4週間

トレーニング

  • 週5~6回、主要筋群(胸、背中、脚、肩、腕)を分割

  • 高重量・6~12レップ、セット間休息1~2分

栄養

  • 体重1kgあたり:タンパク質2~2.5g、炭水化物4~6g、脂質0.8~1g

  • 例:体重80kg → タンパク質160~200g、炭水化物320~480g、脂質64~80g


中級者向けカッティングサイクル(10週)

薬剤

  • テストステロン・プロピオネート:週400mg(月・水・金に133mg注射)

  • トレンボロン・アセテート:週200mg(月・水・金に67mg注射)

  • (オプション)ウィンストロール:5~10週、毎日25mg(経口)

ケア剤

  • アロマシン(エキセメスタン):12.5mgを隔日(エストロゲン抑制)

  • カベルゴリン:0.25mgを週2回(プロラクチン抑制)

  • シリマリン:毎日200mg

PCT

  • サイクル終了後3日目から:

    • クロミッド:100mg/日(2週)→ 50mg/日(2週)

    • ノルバデックス:40mg/日(2週)→ 20mg/日(2週)

トレーニング

  • 週5回、筋群分割+高強度インターバルトレーニング(HIIT)週2回

  • 中重量・10~15レップ、セット間休息30~60秒

栄養

  • タンパク質2.5g/kg、炭水化物2~3g/kg、脂質0.8g/kg

  • カロリーは維持~10%減


上級者向けコンテスト準備サイクル(12週)

薬剤

  • テストステロン・プロピオネート:週300mg

  • トレンボロン・アセテート:週300mg

  • マステロン(ドロスタノロン):週300mg(筋肉の硬さ強調)

  • 9~12週:アナバー(オキサンドロロン)毎日40mg

ケア剤

  • レトロゾール:0.5mgを隔日(強力なエストロゲン抑制)

  • カベルゴリン:0.5mgを週2回

  • EPA(イコサペンタエン酸):毎日2g(高脂血症予防)

PCT

  • クロミッド+ノルバデックス+HCG(性腺刺激ホルモン)で自己分泌能を回復

トレーニング

  • 週6回、筋群2回/週+HIIT週3回

  • 高レップ(15~20)+ポージング練習

栄養

  • タンパク質3g/kg、炭水化物1~2g/kg(段階的削減)、脂質0.5g/kg

  • カーボローディングをコンテスト直前に実施

3. 最近のトレンド

低用量・短サイクル

健康リスクへの意識の高まりから、従来の高用量(週1g超)よりも、低用量(週200~500mg)のサイクルが注目されています。

トレンボロンも週100~150mgで十分な効果を得るケースが増加しています。

また、サイクル期間も6~8週に短縮し、休薬期間を長く取る傾向が見られます。

セレクティブアンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)

SARM(例:オスタリン、リガンドロール)は、AASに比べて副作用が少ないとされ、筋肥大や脂肪削減に使用されています。

AASの代替として人気が上昇中ですが、長期的な安全性は未確立です。

ペプチドと成長ホルモン

成長ホルモン(GH)やインスリン様成長因子(IGF-1)、ペプチド(GHRP-6、CJC-1295)は、AASと併用して筋肥大や回復を促進します。コンテスト準備での使用が増加しています。

データ駆動型アプローチ

血液検査(テストステロン値、肝機能、脂質プロファイルなど)を定期的に行い、投与量やケア剤を調整する「科学的」なステロイド使用がトレンドとなっています。

医師やコーチがモニタリングを支援するケースが増えています。

女性競技者のAAS使用

女性ボディビルダー(フィジーク、ビキニ部門)では、オキサンドロロンやプリモボランなどアンドロゲニック作用の低いAASを低用量(5~10mg/日)で使用するケースが増えています。

ただし、声の低音化や毛深さなどの男性化リスクが課題です。


4. ケア剤と副作用管理

ケア剤の種類と目的

エストロゲン抑制

  • アリミデックス(アナストロゾール):0.5mg/隔日。テストステロンやボルデノンのエストロゲン変換を抑制

  • アロマシン(エキセメスタン):12.5mg/隔日。不可逆的アロマターゼ阻害剤

  • ノルバデックス(タモキシフェン):PCTで20~40mg/日。女性化乳房の予防

プロラクチン抑制

  • カベルゴリン:0.25~0.5mg/週2回。トレンボロンやナンドロロンのプロラクチン上昇を抑制

肝臓保護 経口AASの肝毒性軽減

  • シリマリン(ミルクシスル):200~400mg/日。

  • ウルソ:100~600mg/日。

脂質・心血管保護

  • イコサペンタエン酸(EPA):2g/日。高脂血症予防

  • スタチン(医師管理下):LDL管理

脱毛予防

  • フィンペシア(フィナステリド):1mg/日。DHT変換抑制

  • デュタステリド:0.5mg/日。より強力な5α還元酵素阻害剤

性機能・ホルモン回復

  • HCG:PCT中に250~500IU/隔日。睾丸機能の維持・回復

  • クロミッド:50~100mg/日。内因性テストステロン刺激


副作用と管理

女性化乳房
アロマターゼ阻害剤やSERMで予防・抑制。進行時は手術が必要。

肝障害
経口ステロイドを避ける。シリマリンやウルソなどで肝機能を保護。定期的な血液検査が必要。

心血管リスク
HDL低下・LDL上昇に注意。有酸素運動とEPA/スタチンで予防。

精神症状
トレンボロン使用時の不眠・不安・攻撃性は、用量調整やカベルゴリンで緩和。

ホルモンクラッシュ(使用後の抑うつ・無気力)
PCTの徹底が必要。クロミッド+ノルバデックスにHCGを組み合わせる。


PCT(ポストサイクルセラピー)の重要性

AAS使用後はテストステロンの自己分泌が低下しており、その回復を促す必要があります。

標準的なPCT

  • クロミッド:50mg/日(4~6週)

  • ノルバデックス:20mg/日(4~6週)

  • HCG:サイクル終了直後から、250~500IU/隔日(必要に応じて)

休薬期間の目安

  • サイクル8週 → PCT4週+休薬4週

  • サイクル12週 → PCT4週+休薬6週

5. 健康リスクと法的問題

健康リスク

心血管系

  • 心筋肥大、高血圧、動脈硬化、心筋梗塞リスクの増加

  • HDL(善玉コレステロール)低下、LDL(悪玉)上昇

肝臓

  • 経口ステロイド(特にアルキル化タイプ)による肝障害

  • 長期使用で肝腫瘍や肝不全の可能性

ホルモン系

  • テストステロン産生抑制、精子数減少、睾丸萎縮

  • 女性では声の低音化、月経異常、毛深さなどの男性化

精神系

  • うつ症状、攻撃性増加、依存性の形成

  • 特にトレンボロン使用時に不安・睡眠障害・焦燥感などが報告

その他のリスク

  • ニキビ・脱毛・皮脂分泌増加

  • 睡眠時無呼吸症候群の悪化

  • 免疫機能の抑制や感染症リスクの増加


法的・倫理的問題

日本における法的制限

  • 医療目的以外でのAAS使用は「医薬品医療機器等法」に違反

  • 医師の許可のない個人輸入や譲渡も処罰対象になる可能性あり(特に販売・譲渡)

  • 輸入品は偽造や不純物混入のリスクが高い

競技団体の規定

  • JBBF、IFBB、NPC、WADAなどではAASは禁止物質として規定

  • 検査で陽性となれば、資格停止や大会出場不可、名誉失墜のリスクあり

  • ドーピングによりキャリアが断絶するケースも多数報告


6. 代替案と安全なアプローチ

サプリメントによる代替

  • プロテイン・EAA・BCAA:筋肉合成と回復促進

  • クレアチン:筋力・瞬発力向上(科学的根拠多数)

  • 亜鉛・ビタミンD:テストステロンの自然分泌をサポート

  • L-カルニチン:脂肪酸代謝を促進し、減量中のパフォーマンス維持

  • テストステロンブースター:WADAの制限なくテストステロンの増加や利用率を向上するサプリメント

トレーニングの工夫

  • 高強度レジスタンス(HIT):週4〜6回、8~12RM中心でプログレッシブオーバーロード

  • ボリュームと頻度の最適化:筋群あたり週10セット以上を目安に調整

  • 休養と回復の徹底:オーバートレーニング防止と成長ホルモン分泌促進のため、睡眠時間を確保

栄養戦略

  • タンパク質:体重1kgあたり2.0g以上を基本に、必要に応じて2.5gまで増量

  • 炭水化物:トレーニング日の前後で重点的に摂取

  • 脂質:ホルモン生成のために適量(0.8~1.0g/kg)

医療的アプローチ(TRT)

  • 40代以降やテストステロン低下が顕著な場合、医師の監督下でのテストステロン補充療法(TRT)も選択肢

  • 専門クリニックでは、血液検査を通じて安全に管理される


7. 結論

ボディビル競技におけるアナボリックステロイド使用は、目的別に薬剤を戦略的に組み合わせることで、劇的な肉体変化をもたらします。特にテストステロン、ボルデノン、トレンボロンを中心としたサイクルは効果が高く、最近では短期・低用量・複合ケア剤使用がトレンドです。

しかしながら、その副作用や健康リスクは極めて大きく、肝臓・心血管・精神・性機能への影響、ホルモンの恒常性破壊など、深刻な影響をもたらす可能性があります。さらに、日本では医療目的以外での使用は違法であり、ドーピング検査のある競技では失格や制裁の対象になります。

したがって、筋肥大やパフォーマンス向上を目指す際は、まずはトレーニング・栄養・サプリメント・生活習慣の最適化を第一に考えるべきです。それでも改善が見られない場合は、医療機関での診断と治療を通じて、合法かつ安全な手段(TRTなど)を検討することが最良の選択です。

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