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5α還元酵素阻害薬のテストステロンへの影響について

AGAの治療薬はテストステロンに影響があると懸念されています。

それに関する研究をまとめました。

1. フィナステリド

フィナステリドは5α-リダクターゼII型阻害薬であり、テストステロンからより強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)への変換を阻害します。

主に男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大症の治療に用いられます。

大量にアナボリックステロイドを投与中には、ケア剤として用いられます。

  • 血中遊離テストステロンへの影響:

    • フィナステリドはDHTの生成を阻害するため、血中の総テストステロン濃度はわずかに上昇する傾向にあります。これは、テストステロンがDHTに変換されなくなるため、血中にテストステロンが残る量が増えるためです。遊離テストステロンについても同様に、わずかな上昇または変化なしという報告が多いです。
    • DHTはテストステロンよりも強力なアンドロゲンであるため、DHTの低下による影響が懸念されることがありますが、テストステロン自体は維持されるため、全身的なアンドロゲン作用が大きく減弱するわけではありません。
  • 筋量、筋力への影響:

    • 複数の研究で、フィナステリドの服用が筋量や筋力に大きな影響を与えないことが示されています。
    • 例えば、高齢の低テストステロン男性を対象とした研究では、テストステロン補充療法単独、またはテストステロンとフィナステリドの併用が、除脂肪体重、握力、身体パフォーマンスを改善することが示されています。この研究は、テストステロンの筋に対する同化作用にDHTが必須ではないことを示唆しています。
    • 理論的には、フィナステリドによるテストステロンのわずかな上昇が筋成長に寄与する可能性も考えられますが、実際にはその影響は限定的であり、筋肉量に劇的な変化をもたらすことはないとされています。

まとめ(フィナステリド): フィナステリドは血中遊離テストステロンをわずかに上昇させるか変化させない傾向があり、筋量や筋力に対しては臨床的に有意な悪影響を与えないというエビデンスが示されています。


2. デュタステリド

デュタステリドは5α-リダクターゼI型およびII型の両方を阻害する薬剤であり、フィナステリドよりも強力にDHTの生成を抑制します。こちらも主にAGAや前立腺肥大症の治療に用いられます。

  • 血中遊離テストステロンへの影響:

    • デュタステリドは5α-リダクターゼのI型とII型の両方を阻害するため、フィナステリドよりも強力にDHTを抑制します。その結果、血中の総テストステロンおよび遊離テストステロン濃度は、フィナステリドよりも明確に上昇する傾向があります。これは、テストステロンがDHTに変換される経路がより広範囲にブロックされるためです。
  • 筋量、筋力への影響:

    • デュタステリドによるDHTの強力な抑制は、筋量や筋力への影響について懸念されることがあります。しかし、研究結果はフィナステリドと同様に、筋量や筋力に顕著な悪影響を与えないことを示唆しています。
    • ある研究では、テストステロン補充とデュタステリドの併用が、テストステロン単独の場合と比較して、除脂肪体重の増加や筋力の改善に差がないことが報告されています。この結果は、DHTの抑制がテストステロンの同化作用にとって必須ではないことを示唆しています。
    • ただし、デュタステリドはDHTの抑制が強いため、DHTが関与する他のアンドロゲン作用(例えば性欲など)には影響を与える可能性があります。

まとめ(デュタステリド): デュタステリドは血中総テストステロンおよび遊離テストステロン濃度を上昇させる傾向がありますが、筋量や筋力への臨床的に有意な悪影響は報告されていません。


全体的な考察

  • 血中遊離テストステロンへの影響:

    • フィナステリドおよびデュタステリドは、DHTへの変換を阻害することで、血中テストステロン(総テストステロンおよび遊離テストステロン)を上昇させる傾向にあります。デュタステリドの方がその作用はより強力です。
  • 筋量、筋力への影響:

    • フィナステリドおよびデュタステリドは、テストステロンのDHTへの変換を阻害しますが、テストステロン自体の同化作用は維持されるため、筋量や筋力に悪影響を与えることはないとされています。むしろ、テストステロン値がわずかに上昇することで、理論的には有利に働く可能性もありますが、臨床的に顕著な筋力増強効果は期待されていません。

これらの薬剤は、それぞれの作用機序に基づき、特定の疾患の治療に用いられます。

テストステロンや筋量、筋力への影響は、薬剤選択や治療計画の際に考慮すべき要素の一つですが、個々の薬剤の主要な治療目的とは異なります。

ご自身の状態や治療については、必ず医師にご相談ください。

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