テストステロンを上げる方法について
男性更年期障害の方や、アスリートの方などテストステロンを上昇させることに興味がある方がとても多いです。
スクワットのような無酸素運動、7時間以上の睡眠、不飽和脂肪酸を含めた食事など定番のものがありますが、今回は変わり種の精巣の冷却についてまとめます。
男性更年期やアスリートなど、「テストステロンを上げて元気になりたい」と考える方には馴染み深いテーマですが、陰嚢を冷やす“金冷法”についてはまだエビデンスが限られています。
大手町の内科クリニックのコラムです。
金冷法などと言って、いわゆる金玉を冷やす方法は昔から注目されています。
1. 陰嚢温度と精子形成能の関係 2. 温度別・細胞タイプ別精巣機能への影響 3. 精子形成とテストステロン分泌の違い 4. ヒトでの冷却実用性・臨床データ 5. まとめ 6. 臨床へのアプローチ
の順に記載します。
1. 陰嚢温度と精子形成能の関係
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高温による不妊リスク:
高温環境(例:長時間運転、ノートPC乗せ、サウナなど)では、陰嚢温度が体温より2~4℃上昇し、精子の質が低下します PMCPMC。 -
陰嚢位置の重要性:
体内より数度低く精子を作る環境を維持するため、陰嚢は体外にぶら下がっており、体毛除去(陰嚢剃毛)が冷却に有利との報告もあり PubMed。
2. 温度別・細胞タイプ別精巣機能への影響
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In vitro のヒトライディッヒ細胞・セルトリ細胞実験:
33℃と37℃の温度では、撹乱が見られなかった一方、胚細胞の分化段階では直接障害を受けたという報告があります(京都大資料) -
動物モデル(ラット)における30℃程度の冷却実験:
精巣を冷却すると、約1時間後からアポトーシスが急増し、3~10週間後には精祖細胞が大きく減少するという研究結果が報告されています。また、セルトリ細胞機能も変化し、血中FSH増・inhibin B減少傾向が見られました PubMed。
3. 精子形成とテストステロン分泌の違い
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冷却で胚細胞・精子形成能は明らかに低下(上記動物データおよび高温リスクからの推察)。
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一方、セルトリ細胞やライディッヒ細胞(テストステロン関与を含む)は、冷却そのものでは短期では直接的な障害は確認されていません PubMed+2PubMed+2BioMed Central+2。
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臨床的には、遊離テストステロン(総テストステロン)の上昇は確認されておらず、むしろホルモン変化は限定的との報告です PMCPubMed。
4. ヒトでの冷却実用性・臨床データ
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臨床試験・パッチや装置の使用状況:
スコトム冷却パッチや冷却装置使用研究では、使用者の順守率が低い(快適性・働きにくさ・続けにくさが理由) PMC。 -
精子パラメータへの効果:
冷却装置使用後、精子運動性・生存率がやや改善、DNAフラグメンテーション低下も観察されましたが、総テストステロン値には変化なし Oxford Academic+9PMC+9Wiley Online Library+9。 -
システマティックレビュー:
冷却により精子パラメータが「良い方向に向かう傾向あり」とされますが、質の高いランダム化試験が不足しており結論には至っていません PubMedPMC。
5. まとめ
6. 臨床へのアプローチ
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男性不妊治療(精子改善目的):
陰嚢温度を34℃程度に緩やかに冷却するアプローチは、「補助策」として有用性がある可能性があります。ただし、過度冷却は逆効果の恐れあり。 -
遊離テストステロンを増やしたい場合:
現時点では冷却によるホルモン上昇のエビデンスはなく、目的達成のためには**睡眠・無酸素運動・栄養(不飽和脂肪酸など)**を優先すべきです。 -
熱リスク対策:
長時間運転時、ノートパソコン長時間使用時、サウナ・長風呂などでは、冷却の併用や環境調整が推奨されます。
まとめ
陰嚢冷却は“精子形成支援”として一定の可能性を示す一方で、遊離テストステロンの上昇には効果が薄く、臨床的に推奨される根拠はまだ十分ではありません。快適性や継続性といった実用面の課題もあります。テストステロン目的であれば、まずはライフスタイル改善(睡眠・運動・栄養)が優先です。